有機フッ素化合物(PFAS)

PFAS (Per- and Polyfluoroalkyl Substances) は、有機フッ素化合物の総称です。 化合物を構成する、フッ素(F)と炭素(C)間の結合の強さにより、水や油をはじく、熱に強い、薬品に強い、光を吸収しない等の特性を活かすことで、 撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤など、幅広い用途で用いられてきました。 一方で、このFとCの間の結合力の強さから、分解しづらいという性質を持ち、永遠の化学物質(Forever Chemicals)と呼ばれ、環境残留性や生体蓄積性が注目されています。 一部の毒性の認められた化合物では、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の対象物質に登録され、製造や使用が禁止・制限されてきました。 このような背景からPFASの分析が求められています。
PFASの分析には現在、主にLC-MS/MSが用いられていますが、化合物ごとに化学的特性が多様であることや、器具や分析環境中からのコンタミネーションの課題、微量の検出が求められるなど、様々な要因の検討が必要となります。分析条件の検討だけでなく、分析ノウハウが必要とされています。

飲料水(PFAS)

飲料水

私たちが使用する水道水や飲料水は、河川などの地表水が水源となり、くみ上げられた水が浄水されていることが多いです。そのため、水源が汚染されていた場合、水道水や飲料水も汚染される可能性があるため、厚生労働省では水質管理目標設定項目として水質検査を定めています。
PFOA、PFOSについては、国内では、水道水あるいは公共用水、地下水において、PFOA、PFOSの合計値として0.00005 mg/L (暫定値)と定められています。他の化合物種と比べても、低濃度域での分析が求められています。その他、国外の公定法においては、さらに低濃度域を基準としている場合もあり、PFAS分析には非常に高感度の分析機器が求められます。

水質・排水

水質・排水

PFASは便利な機能を有するため、様々な部品のコーティング剤などにも使用されています。製造ラインの過程にPFASが使用されている場合、工場から排出される水を管理せずに環境中に放出すると環境汚染の原因になるため、工場排水中にPFASが排出されていないか管理することが推奨されます。
国外における規制では、水道水や飲料水の他、工場排水などの非飲料水を対象とした試験法が開発されています。

土壌・大気

土壌・大気

PFASは土壌から農畜水産物などを介してヒトの体内にも蓄積し、健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。加えて、工場の排気ガスなどから大気中への拡散による、呼吸器系への継続的な暴露のリスクが懸念されています。水試料以外のマトリックスにおけるPFAS分析の重要性が高まっています。

材料・製品

材料・製品

産業界はPFASの特異な特性を利用し、食品包装、繊維製品、家庭用品などの製品に組み込んできました。しかし、その特性により、PFASが人や動物、環境に蓄積される可能性があります。
PFASの消費者や環境への暴露に関する懸念の高まりを受けて、様々な消費者製品や食品包装材料について多くの調査・研究が行われています。

さらなる分析に向けて

さらなる分析に向けて

PFAS物質はその定義上非常に多岐にわたり、各種公定法などで対象となる化合物数も今後増加することが考えられます。
対象化合物数が増えた際の課題のひとつに、クロマトグラムにおけるピーク波形処理があります。高い分析スループットと、結果の信頼性のため、高精度な波形処理プログラムが必要不可欠です。 また、潜在的なPFASや未知のPFASの存在を検証する重要性が高まってきています。PFASに対して有効なスクリーニング手法が求められています。