SPM-8100FM 水和・溶媒和構造の観察例と計測例

走査型プローブ顕微鏡 (Scanning Probe Microscope)

水和・溶媒和構造の観察例

水和・溶媒和とは

水和・溶媒和構造

固体と接する液体は層状に構造化することが知られており,それを溶媒和,水の場合は水和と呼びます。
バルク液体とは異なった特徴的な構造は,液相内での溶解,化学反応,電荷移動,濡れ,潤滑,熱伝導など固液界面が果たす役割を大きく支配していると考えられています。
しかし,水和・溶媒和構造は,非常に薄い層であるため,実験的に計測することは簡単ではありません。
とりわけ,表面の面内方向に不均一な構造はこれまで検知できませんでした。

従来のAFMとの違い

水和・溶媒和を計測する際の,カンチレバーが受ける力の変動は非常に小さいため,超高感度なFM方式により初めて計測することが可能となりました。Z-X断面の水和・溶媒和構造計測だけでなく,Z-XYの三次元構造解析も可能です。HR-SPMは表面観察だけではなく,固液界面の構造解析装置に進化します。

マイカ表面の層状の水和構造が三層目まで可視化されている(シャーレ型溶液セル(オプション)を使用)。


水和・溶媒和の計測方法

 

  1. 液中でHR-SPM を動作させ,カンチレバーを固体試料表面に設定値(Δ fmax )まで高精度に近づけます。
  2. その際にカンチレバー先端の探針が受ける力をフォースカーブ法により計測します。
  3. 固液界面のごく近傍において,試料に応じて特徴的な力(Δ f )の変動が得られます。
  4. 力の変動は水和・溶媒和に起因しており,層状に構造化した液体に関する知見が得られます。
  5. X 方向に連続取得(Z-X 計測)することにより,一断面での水和・溶媒和構造が可視化できます。
  6. さらに,Z-X 計測をY 方向に取得していくことで,三次元マッピングデータの取得が可能です。

 


解析ソフトウェア

三次元マッピングデータの解析専用のソフトウェアです。水和・溶媒和構造のデータの解析を強力にサポートします。
 ・マッピングデータの三次元表示
 ・マッピングデータから二次元画像データの抽出・表示
 ・二次元画像データ上で指定した一次元データの表示・解析

水和・溶媒和構造の計測例

グラファイトに接する1-デカノールの界面構造

グラファイト上に形成された1-デカノール分子膜を観察しました(左図)。デカノール2分子が一つの組となり帯状の分子膜が形成されている様子が観察されています。
吸着分子層に接したデカノール液体の断面構造を計測しました(右図)。液体のデカノールが層状に構造化していることや面内方向に不均一な分布が存在することが分かります。

 


p‒ニトロアニリン結晶に接する飽和水溶液3)

Z-X計測(左図)で凸部がベンゼン環,凹部が親水性官能基の位置にあたります。それぞれの位置でのフォースカーブ(Z -Δ f 曲線)から,親水基がある凹部では水分子の局在による強い水和が見られます。このデータから,下図のモデルのように,水分子は極性基と水素結合し,安定化していると考えられます。(シャーレ型溶液セル(オプション)を使用)

<引用文献>

 
1) K. Kimura, S. Ido, N. Oyabu, K. Kobayashi, Y. Hirata, T. Imai, H. Yamada, Visualizing water molecule distribution by atomic force Microscopy, Journal of Chemical Physics, 132, 19, 194705 (2010).
2) Kei Kobayashi, Noriaki Oyabu, Kenjiro Kimura, Shinichiro Ido, Kazuhiro Suzuki, Takashi Imai, Katsunori Tagami, Masaru Tsukada and Hirofumi Yamada, Visualization of hydration layers on muscovite mica in aqueous solution by frequency-modulation atomic force microscopy, Journal of Chemical Physics, 138, 184704 (2013).
3) Rina Nishioka, Takumi Hiasa, Kenjiro Kimura, and Hiroshi Onishi, Specific Hydration on p Nitroaniline Crystal Studied by Atomic Force Microscopy, J. Phys. Chem. C, 117, 2939-2943 (2013).

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