島津グローバルファーマサミット レポート

世界のパートナーと共に製薬業界の未来を変革
7回目のグローバルファーマサミットを主催

製薬業界の未来とSHIMADZUの役割を見据え,2019年11月14日,Shimadzu Asia Pacificはシンガポールで,第一回の2007年以降、7回目となる「Shimadzu Global Pharma Summit」を主催しました。今回のテーマは『Transforming The Future Of Pharma』。世界20カ国から103名の製薬業界リーダー,ヘルスケア・医療従事者,研究者が参加。当社のアジア地域を中心とした製薬業界の発展へのコミットメントを改めて示すテクノロジー・フォーラムとなりました。

島津製作所の戦略ビジョン ―パートナーとの共有価値の創造

当社は,社会における価値と独創的で先進的な科学技術が生み出す価値が重なり合う「共有価値の創造」を推進しています。サミットの冒頭で,当社社長の上田輝久は「このサミットを通して,未来の製薬業界をリードする参加者と『科学と技術を通して共に世界に貢献』していくことを目指して,議論と交流を深めていきたい。世の中でAIによる変革が起きつつある中で,今回のサミットが行われる。島津製作所は,Analytical Intelligence という概念で業界の変革を支えていきたい」と抱負を語りました。

Analytical Intelligenceと製薬ラボの生産性を向上させる島津のソリューション

いま当社は「Analytical Intelligence」という新しい概念を提唱しています。Analytical Intelligence とは,システムやソフトウェアが熟練技術者と同じように操作を行い,状態・結果を自動で判断し,分析のフィードバックやトラブルの解決を行うことができるテクノロジーを持った新しい分析機器の概念です。同じ分析機器でも,その操作に関する知識や経験は人それぞれであり,そのギャップを埋めるのが Analytical Intelligence です。Analytical Intelligenceを用いることで,分析機器に対する知識や経験の差を補完し,製薬ラボの自動化・省力化とデータの信頼性を高めることが可能となります。

ANALYTICAL INTELLIGENCE

当社は,すでに多くの分析機器に Analytical Intelligence を統合し,ユーザーを支援しています。今回のサミットでは,Analytical Intelligence 機能を備えた「Nexera UHPLC シリーズ」を披露しました。

加えて,今回のサミットは,島津の製薬向けソリューションとして,データインテグリティ対応,抗体医薬のタンパク質(Intact Protein)や糖鎖(glycopeptide)を分析するTable-topのMALDI-8020やデジタルイオントラップ型質量分析計MALDIminiTM-1,サルタン系原薬中の不純物分析に用いられるGC-MS/MSなど,様々なワークフローへの分析ソリューションを紹介する機会となりました。

製薬業界コンソーシアムとのパートナーシップによる共同開発

当社はパートナーとともに,製薬業界の課題に対応するソリューションを提供し続けています。 UHPLC Nexera シリーズの発表に続き,2019年10月には高性能セミプレップ精製を可能にする次世代分取超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)システム「Nexera UC Prep」を発表しました。

Nexera UC Prep

Nexera UC Prep

Nexera UC Prep の開発で主要な役割を果たしたのが製薬・バイオ企業のコンソーシアム Enableing Technologies Consortium(ETC)。その共同創業者の1人 Christopher Welch 博士は,当社と共同プロジェクトを実施した背景を次のように説明しています。「2017年,ETC はSFCテクノロジーを開発するパートナーを探していました。コンソーシアムが求める技術・運用上のニーズに対して、島津製作所のエンジニア、ソフトウエア開発者は丁寧に対応し、その優れた技術力を示してくれました。これがきっかけとなり共同開発を行うことになり,製品が誕生しました。 Nexera UC Prep は,R&D現場の生の声を反映したプロダクトといえます」。

医薬品開発競争が激しい製薬業界では,開発される化合物の複雑さも増しています。今日では,合成医薬品の大半がキラリティを持つ化合物。米食品医薬品局(FDA)に承認された新有効成分含有医薬品(NME)におけるキラリティ化合物の割合は,2010〜2014年の間だけでも60%から73%に増加しています(*)。これに伴い,キラル化合物の分離ニーズも高まりを見せています。Nexera UP Prepは,目的化合物の分取作業短縮化,それによる溶媒利用の削減,また高い回収率による生産性向上において貢献すると期待されています。

製薬業界におけるグローバルトレンドの共有

今回のサミットは,『データ・サイエンスに関する技術』『ツールとしての分析技術』『治療薬に関する技術』という3つのテーマで構成され,製薬業界をリードするスピーカー達によるプレゼンテーションが展開され、グローバルな製薬市場における様々な取り組みが共有されました。

最初のセッションである『データ・サイエンスに関する技術』では,まずインド製薬企業Lupin社がマニュアルエラー防止とコンプライアンス遵守を目的とした人の手の介在を極力排したペーパーレスラボのシステム構築の取り組みを紹介。また台湾のInsilico Medicine社は抗体医薬から低分子医薬品のリード化合物探索までのAI技術の活用事例を紹介しました。同社のJimmy Yen-Chu Lin 博士は「私達がAIを活用する目的は,通常3〜4年かかる研究・発見・前臨床の期間を数カ月に短縮すること。 開発段階の貴重な時間とコストを抑えながら,薬の承認が可能になる」と強調しました。

『ツールとしての分析技術』では,前述のアメリカWelch Innovationの Chris Welch博士が創薬におけるSFCの応用について説明しました。SFCの特色として,HPLC分離に比べ時間と労力を短縮でき,同時に溶媒の削減も可能であることから,生産性と持続可能性の向上を同時に実現するグリーンテクノロジーであることが強調されました。

3つ目のセッション『治療薬に関する技術』では,中国 Bio-Thera Solutions社のLiu博士とインドSyngene Research Centerがそれぞれのバイオ医薬品に関する取り組みを発表。日本からは,神戸薬科大学の四方田教授がジェネリック医薬品の品質確認に関して,UV-1900を用いた溶出試験やCo-Senseシステムによる不純物分析の事例を紹介しました。

製薬業界の今と未来のために

サミットの最後に実施されたパネルディスカッションでは「製薬業界の未来を共に変革していくために」というテーマで議論が展開され,製造・品質管理,CRO,臨床研究,データサイエンス,ツール技術など多様な視点から知見が共有されました。ディスカッションにおいては,製薬業界の主要トレンドとして,デジタル変革による「効率性の改善」「生産性の向上」「システム統合」の3つが挙げられました。

分析計測事業部長の丸山秀三は「今年のサミットでは,製薬業界全体で生産性向上,効率改善を目指す新技術への関心が高まっていること,また実際に新技術による変化が起こっていることを実感した」と所感を述べた上で,「私達が目指すのは,Analytical Intelligence を通じて,ラボのダウンタイムの縮小と人的エラーの削減を可能にし,研究者を支援するソリューションを提供すること。それが業界全体に新しい価値を提供していく私たちの役割である」とサミットを締めくくりました。

島津製作所は,製薬業界においても新製品を提供するだけではなく,グローバルパートナーと共に新たな価値を創造し,包括的なヘルスケアソリューションを提供し続けます。すべての人にとって,より健康的で,より良いライフスタイルを実現する。この大きな目標を念頭に,世界全体をステージとし,製薬業界の課題に挑戦していきます。

引用:
(*) Z. Shen, et al., Significance and challenges of stereoselectivity assessing methods in drug metabolism, J.Pharm. Anal. (2016), http://dx.doi.org/10.1016/j.jpha.2015.12.004i

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