ニトロソアミン類混入リスクへの対策(GC-MS、LC-MS)

ニトロソアミン類とは


ニトロソアミン類とは、アミン窒素上の水素がニトロソ基に置換された構造を持つ化合物の総称です。一部のニトロソアミン類は発がん性物質であることが知られています。

ニトロソアミン類とは

医薬品へのニトロソアミン類混入リスク


2021年10月8日に厚生労働省から、医薬品へのニトロソアミン類混入リスクに関する自主点検の通知*1 *2が発行されました。近年、国内外においてサルタン系医薬品などから発がん性物質であるニトロソアミン類が検出され、関連する製品のリコールや販売中止を受けたものです。化学合成医薬品や生物製剤など非常に幅広い医薬品を対象、これまでニトロソアミン類が検出されていない医薬品に関しても点検する必要があります。

*1  医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について(厚生労働省 薬生薬審発 1008)
*2 「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」の実施期限延長について

 
 

ニトロソアミン、合成過程での生成・試薬や溶媒への混入・共用設備や梱包材からの混入・保存時、原因が多岐、製造販売業者だけでな、包装容器などの製造・供給業者などと連携して点検することが求められています。

 

医薬品中のニトロソアミン類の供給源(参照:USP PF Chapter 1469)

ニトロソアミン類はアミン類と亜硝酸塩が反応して生成することが知られています。テトラゾール環形成などの合成経路で用いるアジド化合物の失活を目的として添加する亜硝酸や、試薬や賦形剤に不純物として存在する亜硝酸塩がニトロソアミン生成のリスクとなることが報告されています。米国 FDAのガイダンス*1やEPのモノグラフ*2は不純物としての亜硝酸塩の分析についても言及しています。医薬品原材料中の亜硝酸および硝酸については、イオンクロマトグラフで分析することが可能です。

*1 FDA  Control of Nitrosamine Impurities in Human Drugs
*2 European Pharmaceutical Review

NDMAを生成する一般的な反応式(参照:FDA Control of Nitrosamine Impurities in Human Drugs)

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医薬品原材料中の亜硝酸イオンおよび 硝酸イオンの分析

このアプリケーションニュースでは、サプレッサー式イオンクロマトグラフを用いた、亜硝酸イオンおよび硝酸イオンの分析例をご紹介します。

厚生労働省のニトロソアミン類の混入リスク評価では、分析の対象となる既知のニトロソアミン類として、以下の表に示す9種類が挙げられています。FDAのガイダンスで示された6種のニトロソアミン類の他、欧州のEMAが許容摂取量を設定した*比較的最近報告されたニトロソアミン類も含んでいます。

*EMA/409815/2020 Rev.6

厚生労働省 ニトロソアミン類の混入リスク評価で示された既知のニトロソアミン類

トリプル四重極型質量分析計を用いた原薬中ニトロソアミン10成分の一斉分析

厚生労働省の通知にある9種のニトロソアミン類は、LC-MS/MS法で一斉分析ができます。
このアプリケーションニュースでは、LC-MS/MS法を用いた、ニトロソアミン類10成分の一斉分析例を紹介します。
米国食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)が規制しているニトロソアミン類9成分にヨーロッパ薬局方(Ph. Eur.)で規制されているNDPAを加えた10成分に対し、標準試料を用いた分析方法の妥当性確認、原薬中での添加回収試験を行いました。

自主点検における評価方法や分析方法についてはEMAやFDAを参照しており、これらのガイドラインに対応したGC-MS、LC-MS/MSによるニトロソアミン類の分析事例をご紹介します。

医薬品中不純物の分析
-発がん性を有する物質のレギュレーションと分析-

このアプリケーションノートでは、医薬品中の変異原性不純物の評価および管理のガイドラインであるICH M7の概要と共に、FDAなどを参照としたヘッドスペース GC-MS法、直接注入 GC-MS/MS法、LC-MS/MS法によるニトロソアミン類の分析を紹介しています。

ニトロソアミン原薬関連不純物(NDSRI)


ニトロソアミン原薬関連不純物(Nitrosamine drug substance related impurities、NDSRI)は、原薬中の2級または3級アミンがニトロソ化された化合物の総称です。
過日、下記のシタグリプチンを含有する医薬品からNDSRIであるNTTPが検出されたことが話題になりました。

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これまで、NDSRIなど新規のニトロソアミン類が確認された場合には、ICH M7(R2)を参考に一生涯曝露を想定した限度値(Acceptable Intable,AI)を設定するなど、科学的に妥当な方法で限度値を設定するために時間や費用がかかるといった問題がありました。2023年7月にEMA*1が、また2023年8月にFDA*2が、NDSRIの構造のみから簡単にAIを設定する方法(Carcinogenic Potency Categorization Approach、CPCA)を提示しました。日本においても、厚生労働省がCPCAを用いてAIを設定することを許容する旨の事務連絡*3を出しており、ますます分析需要が増えてくると考えられます。NDSRIの分析事例を以下にご紹介します。

*1 EMA Questions and answers
*2 Recommended Acceptable Intake Limits for Nitrosamine Drug Substance-Related Impurities | FDA
*3 「「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検 について」に関する質疑応答集(Q&A)について」の一部改正について 

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Determination of Nitrosamine Impurities and NDSRI in Anti-diabetic Drugs on Shimadzu LCMS-8060NX

このアプリケーションニュースでは、NDSRIであるNTTPを含む全10成分のニトロソアミン不純物のLC-MS/MSを用いた分析事例です。簡単な前処理での分析法の提案および標準試料を用いた分析方法の妥当性確認、2種の製剤中での添加回収試験を行いました。

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Determination of NTTP in Sitagliptin by LCMS-8045

このアプリケーションニュースでは、ミドルクラスのLC-MS/MS装置を用いた、NDSRIであるNTTP分析例を示します。
標準試料を用いた分析方法の妥当性確認、製剤中での添加回収試験を行いました。NTTPのルーチン分析にはぴったりな簡単な前処理での分析法をご提案します。

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