
GCMS-TQ™8050 NX
発がん性を有する物質のレギュレーションと分析
2018 年、中国で製造された原薬に発がん性物質 N-ニトロソジメチルアミン(以下、NDMA)や N-ニトロソジエチルアミン(以下、NDEA)が検出され、当該原薬を使用した製剤の回収が世界的に実施されました。その後、他の製剤や原薬からの検出事例が相次いで発表され、対象製剤の回収のみならず管理指針値に基づく製造管理及び品質管理の徹底が改めて求められる事案に発展しました。 発がん性を有する不純物の管理については、日米欧医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonizationof Technical Requirements for Pharmaceuticals for HumanUse:ICH)で国際的に調和された M7 ガイドライン「潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中 DNA 反応性(変異原性)不純物の評価及び管理」があり、この考え方を適用することができます。ICH で合意された医薬品中の不純物に関するガイドラインは、「品質に関するガイドライン(Quality)」のひとつとして Q3 カテゴリーにまとめられています。例えば、残留溶媒は Q3C として、元素不純物は Q3D としてガイドラインが策定され、各物質や元素に対して固有の許容限度値が設定されています。一方、発がん性物質など DNA 反応性を有する物質の管理については低濃度でも変異を引き起こすリスクがあるため、Q3 とは別のレベルでの管理が必要であり、「品質・安全性・有効性の複数領域に関わるガイドライン(Multidisciplinary)」という別のカテゴリーに策定されています。より微量な不純物を分析し管理することが要求されるため、分析法には高感度で選択性の高い分析法として、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフに検出器として質量分析を用いた GC/MS 法や LC/MS 法が一般的に用いられています。 本稿では、医薬品中不純物として発がん性を有する物質に関する規制についてその概要を説明すると同時に具体的な分析事例を紹介します。
2020.06.16
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