糖鎖分析

糖鎖修飾はタンパク質の翻訳後修飾のひとつです。糖鎖はエフェクター機能だけでなく,吸収・分布・代謝・排泄(ADME)および免疫原性にも影響を及ぼす可能性があることから,糖鎖の構成成分とその構造プロファイルの存在をモニタリングする必要があります。

糖鎖プロファイリングの迅速なスクリーニング

バイオ医薬品開発の初期段階にて糖鎖構造プロファイルの情報は,細胞株の選択に有効です。フコシル化などの好ましくない糖鎖種を高発現する細胞株は除外します。MALDI-TOF MS 法は,この目的を満たす簡便かつ迅速な分析を提供します。

ヒト血漿試料から調製した2-AA標識N型糖鎖のMALDI MS スペクトルは,糖鎖発現プロファイルとして解釈することが可能です。

シアル酸異性体

シアル酸結合様式の判別にはHPLCが多く用いられますが,結合異性の区別ができないという問題があります。結合異性体の判別が重要な理由は異性体毎に生体内機能が異なることがあるためです。
従来のシアル酸の結合異性体を判別するにはまず標品が必要でその合成に時間がかかりました。しかし島津製作所が開発したSALSA法はサンプルそのものに質量差を生じさせることができるので標品は不要です。SALSA法では反応を2段階に分け,異性体の片方(α2,6結合)をイソプロピルアミンでアミド化・もう片方(α2,3結合)をメチルアミンでアミド化しています。これによって本来同じ質量である異性体に28Daの質量差が生じるように修飾します。
このSALSA法専用試薬としてSialoCapper-ID KITがあります。

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製品紹介

モニタリング

バイオ医薬品開発の後期段階では,QA/QC において製品の標準糖鎖プロファイルを規定するために,糖鎖プロファイルを特性解析することが必要です。非ヒト型糖鎖α-1,3ガラクトースなどの構造異性体の分離や同定などの詳細な特性解析には,高分離能クロマトグラフィーが必要であり,高い再現性が重要となります。

 

 

アプリケーションニュースL483 は蛍光検出器RF-20Axsを用いた試験を報告しています。右図は2-AB 標識糖鎖標準品(それぞれ40 fmol)を用いて測定されたHILIC モードによる糖鎖分離の再現性示すために 6 回繰り返し分析した結果です。その下に保持時間再現性,ピーク面積再現性(n=6)を示します。これらから良好な再現性が得られていることがわかります。

2-AB 標識糖鎖標準品(それぞれ40 fmol)を用いて測定されたHILIC モードによる糖鎖分離の再現性 

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