食品添加物
食品添加物は、食品の製造、加工、保存、または輸送の過程で使用され、食品の品質や安全性を向上させるために添加されます。主な種類としては、保存料、酸化防止剤、着色料、香料、乳化剤があります。
食品添加物は、適切に使用される限り安全ですが、過剰摂取や不適切な使用は健康に影響を与える可能性があるため、規制が設けられています。日本では原則として、安全性と有用性が科学的に評価され、食品衛生法第12条に基づき厚生労働大臣の指定を受けた添加物(指定添加物)だけを使用することができます。また、指定添加物以外で添加物として使用できるのは、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物のみです。
食品の品質管理や安全性確保のため、未指定添加物が使用されていないか、基準が守られているか、溶媒が残留していないかなどを機器分析により確認する必要があります。

食品は空気中の酸素に触れることで酸化され、風味や栄養価が損なわれることがあります。酸化防止剤は、食品の酸化による品質低下を防ぐために使用されます。主に油脂や加工食品に用いられ、品質を維持し保存性を高める役割を果たします。
一部の酸化防止剤は過剰摂取や不適切な使用による健康被害が懸念されており、日本では国際基準を参考にして使用量や対象食品が細かく制限され、安全性が確保されています。
ここでは、簡便な前処理で食品中亜硫酸塩を分析した例などを紹介します。

甘味料には、自然界に存在する甘味成分を抽出して作られた天然甘味料と、化学的に合成された合成甘味料(または人工甘味料)があります。合成甘味料は、天然甘味料であるショ糖や果糖に比べて強い甘味を持つものが多く、少量で甘さを出せるため、低カロリー食品や飲料などに広く使用されています。
アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムなどの人工甘味料は、食品衛生法における指定添加物に該当し、一部の対象食品及び使用量については使用基準が定められているものがあります。一方、日本以外の一部の地域で使用されていますが国内では指定外添加物にあたるものもあります。そのため、特定の輸入食品については検査が必要です。
ここでは、HPLCやLC-MS/MSを用いた甘味料の多成分一斉分析の例を紹介します。

着色料は、食品に色を添えたり、色調を調整したりするために使用される食品添加物です。食品の色は、食欲をそそるだけでなく食品の品質や鮮度を判断する要素の一つでもあるため、着色料は古くから食品製造に利用されてきました。しかしながら、過剰摂取や不適切な使用については健康に被害をおよぼす可能性があることから、制限が設けられています。
日本国内では、食品衛生法に基づいて安全性が確認されたものが使用されていますが、海外の一部の地域では過剰摂取によって健康に影響を与える可能性の高いものを使用している場合があります。また、現在国内では食肉や野菜などに着色料を使用することは禁じられています。そのため、特定の食品について検査が必要となります。
ここでは、HPLCやLC-MS、MALDI、紫外可視分光光度計を用いた着色料の分析例を紹介します。

保存料は、食品の腐敗や変敗、食中毒の原因となる微生物の増殖を抑える役目を持ちます。保存料により食品の保存性が高まり、遠方への輸送が可能となり、腐敗などによる食品の廃棄の低減にも働きます。
ここでは、清涼飲料水や漬物汁中の保存料の分析例や、紫外可視分光光度計を用いた保存料の分析例を紹介します。

一般的に水と油のような混ざりにくいもの同士が均一な状態となることを乳化と呼びます。この働きをもつものが乳化剤となります。
ここでは、ヘッドスペース分析システムを用いたショ糖脂肪酸エステル中の残留溶媒の分析例を紹介します。