はじめに

世界で水道水が飲める国は?

  • 水は私たちが生活していくうえで欠かすことができないものです。
    日本では家庭の蛇口から出てきた水道水を当たり前のように飲むことができますが、世界の国々ではどうでしょうか。
    水道水を安全に飲める国は日本を含めた9カ国となっており、世界の中でもわずかしかありません。

    ※出典:国土交通省「令和7年版 日本の水資源の状況 第7章 水資源に関する国際的な取組」

  • 世界で水道水が飲める国

水道水を飲めない国が多い理由は?

なぜほとんどの国々では水道水を飲むことができないのでしょうか。 それには次の2つの理由が考えられます。

  • 乾燥地帯で水源の確保が難しい
    川や湖が干ばつするほど乾燥している地域もあり、水道水の水源を確保できない
  • 国土が広いため、インフラ整備ができない
    アメリカや中国のような国土の広い国では、国全体に水道を整備するためには莫大なコストが必要となる

日本の水道水が安全な理由

日本は雨も多いため川や湖などの水源が確保でき、国土も狭いため水道などのインフラ整備が比較的簡単に行うことができます。しかし、それだけではなく日本では、水をきれいにするための「浄水処理」ときれいにした水を検査する「水質検査」を行うことで、より安全においしい水を私たちの家庭に届けています。

浄水処理について

  • 日本では、川や湖の水を安全に飲めるように浄水場で浄水処理を行っています。浄水処理には大きく分けて、①急速ろ過、②緩速ろ過、③膜ろ過、④消毒のみの4つ方法があります。

  • 浄水処理について

①急速ろ過

  • 水中の小さな濁りや細菌類などを薬品で凝集、沈殿させた後の上澄みをろ過池の砂層に通し、水をきれいにする方法です。比較的にごりの多い河川水や湖沼水の処理に適しており、最も広く用いられています。

  • 急速ろ過

②緩速ろ過

  • 緩やかな速度でろ過池の砂層に水を通し、砂層の表層部に繁殖している微生物(生物ろ過膜)の浄化作用で水をきれいにする方法です。ろ過池を通る水の速度が急速ろ過と比較して小さいことから、「急速ろ過」に対して「緩速ろ過」と呼ばれます。比較的水質が良好で、水質の変化が少ない水の処理に適しています。

  • 緩速ろ過

③膜ろ過

精密ろ過膜や限外ろ過膜という方法で、水中のにごりや微生物などを取り除く方法です。
※精密ろ過膜や限外ろ過膜はフィルターの粗さや層の数などが異なります。

④消毒のみ

水質が良好な地下水を水源とする場合は、塩素による消毒のみを行います。

このように川や湖、地下水などの水質に合わせて、浄水処理を行うことで私たちが飲むことができるような水道水が作られます。

水道水における水質検査

原水となる川や湖、地下水などの水質に合わせて浄水処理された水道水ですが、原水の水質変化や使用水量の変化によって、水道水の水質が変化することがあります。そのため、浄水処理された水が安全な水であることを定期的に検査することが大切です。日本では、水道法という法律で水道水の水質基準が定められています。

日本の水道法

水道法の目的を簡単に説明すると、「きれいな水を安く、たくさん届けられる水道を日本中に作り、国民の生活を改善すること」となります。この「きれいな水」とはどのようなものでしょうか。
水道法の中では、「水質基準」についても記載されています。「水質基準」として51種類もの検査項目があり、それらの検査項目がクリアされていることを定期的に水道事業者が検査しています。厳しい検査をクリアした安全な水道水がみなさんの家庭に運ばれているのです。

水質検査について

  • 川や湖などの水は浄水処理されて、私たちの家庭の蛇口から水道水として供給されます。
    水道法で定められている51種類の検査項目は、家庭に供給される直前に行われる大事な検査であることがわかります。

  • 水質検査について

     

「安全」だけでなく「安全でおいしい」水へ

また、日本ではミネラルウォーターの消費量の増大や家庭用浄水器の普及が進むなど、「安全」だけでなく、「安全でおいしい」水への関心が高まっています。
そういった中で「安全でおいしい」水を提供するために、水道法で定められている51種類の検査基準とは別に「おいしさに関する水質目標」を設定している都道府県もあります。

検査項目 概要
蒸留残留物 水が蒸発した後に残る物質で、成分は主にミネラル分。多く含まれると苦みや渋みなどを感じるが、適度に含まれると、こくのあるまろやかな味がする。
硬度 主なミネラル分である、カルシウム及びマグネシウムの含有量を表す。おいしい水の条件としては、硬度成分が適度に含まれることが必要である。硬度の低い水は「軟水」といい、味にくせがない。一方、硬度の高い水は「硬水」といい、しつこい味を感じるほか、人によって好き嫌いが分かれることが多い。
遊離炭酸 水に溶けている炭酸ガスのことで、水にさわやかさを与える一方、多すぎると刺激が強くなってまろやかさが失われる。
過マンガン酸
カリウム消費量
水に含まれる有機物量の指標。多く含まれると渋みを感じる。
臭気度 水についているにおいの強さを表す(においの種類は関係ない)。カビ臭や藻臭など、水に不快なにおいが付いていると、まずく感じる。
残留塩素 水道水中に残留している、消毒用の塩素のこと。衛生上、水道水は塩素が0.1mg/L以上残留していなければならないが、残留塩素の濃度が高すぎると、いわゆる「カルキ臭」の原因となる。
水温 冷たい水は、生理的においしいと感じる。また、水を冷やすとカルキ臭などのにおいが気にならなくなるため、水をおいしく飲むことができる。

参考:おいしい水研究会「おいしい水について」 水道協会雑誌第54巻第5号(1985) 

このような「浄水処理」と「水質検査」のおかげで、日本は世界でも数少ない水道水の飲める国となっています。ただ、これらを実現するためには高度な技術と莫大なコストが必要です。また、日本のような国土が小さな国ではインフラ整備を比較的に進めやすいですが、国土の大きい国では莫大な時間や費用もかかってしまいます。発展途上国では水道が普及していない国も多く存在します。
日本においても、水道水の元となる川や湖の水の汚染が進んでしまうと、現在の浄水処理で処理がしきれず「安全でおいしい水」を確保することが難しくなるかもしれません。「安全でおいしい水」が当たり前だと思わずに、水を大切にしていきましょう。

水道水管理におけるTOCについて

水道水の検査項目の1つに全有機体炭素(TOC)があります。ここでは、水道水管理におけるTOCの役割についてご紹介します。

TOCとは?

  • TOCとは、全有機炭素(Total Organic Carbon)の略称で、有機物量のひとつの指標として様々な分野で使用されています。
    水道分野では以前は有機物量指標として過マンガン酸カリウム消費量が使用されていました。しかし過マンガン酸カリウム消費量の測定には次のような問題がありました。

    • 有機物の種類によって値が変動する
    • 測定者によって測定値に差が生じる
    • 同一測定者が実施しても測定精度が安定しない


    そこで、ほとんどの有機物を100%近く酸化することができ、また測定者に依存しない機器分析であるTOC測定が注目され、2005年に過マンガン酸カリウム消費量に代えてTOCが導入されました。
    TOCは、機器分析で簡単かつ精確に測定できるだけでなく、数分程度の非常に短い時間で測定をすることができます。

TOC測定の目的

水道水の安全性確認

浄水処理で使用される消毒剤と有機物が反応すると、人にとって有害な物質が発生する可能性があると言われています。そのため、水道水の中のTOCは、水道水の安全性を確認するための重要な指標になります。
また、TOCは水道水の味にも影響すると言われており、水道水のおいしさの指標にも使用されています。

浄水処理の管理

  • 浄水場では、微生物や有機物を除去するために様々な工程があります。
    それぞれの工程でTOCを測定することで各工程が正しく機能していることを確認することができます(TOCの他にpH値や濁度も測定します)。
    また、TOCを測定することはこのような浄水処理機能の確認だけでなく、浄化処理の最適化にもつながります。各工程で測定したTOCの量に合わせて薬剤の量を調整することで、浄水処理にかかるコストの削減をすることができます。

  • 浄水処理の管理

全有機体炭素計(TOC-L)コンフィグレータ
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