TOCについて
全有機体炭素計(TOC)
TOC入門
全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)は水中に存在する有機物を構成する炭素の総量であり、「水の汚れ」を示す代表的な水質指標のひとつです。有機物の種類に関係なくその総量を測定する方法として、古くからBOD(生物化学的酸素要求量:Biochemical Oxygen Demand)、COD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)、過マンガン酸カリウム消費量試験といった指標が使われてきました。これらの分析方法は微生物や酸化剤によって一定の条件で分解されるものを測るため、有機物の種類によって検出率が異なる、測定に時間を要する、無機化合物の干渉を受けるなど、水質指標として用いるうえでの問題点が指摘されています。
TOC測定は試料中の共存物質からの妨害に強く、より正確に水中に存在する有機物総量を測定できることから、水道水や医薬品の水質評価、河川や土壌の調査・研究、工場の排水監視など幅広い分野で利用されています。
TOCの種類
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水中に存在する全ての炭素を全炭素(TC:Total Carbon)と呼び、これは有機体炭素(TOC)と無機体炭素(IC:Inorganic Carbon)に大別されます。有機体炭素はさらに不揮発性有機体炭素(NPOC:Non-Purgeable Organic Carbon)と揮発性有機体炭素(POC:Purgeable Organic Carbon)に分類されます。

TOC測定方法
測定の種類
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水中のTOCを求める方法には次の2種類があります。
TC-IC法:TC測定値とIC測定値の差から求める。(TOC = TC-IC)
NPOC法:前処理でICを除去した後、TC測定によって求める。(TOC = TC) 
IC測定
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TOC測定におけるICとは、水中の無機体炭素(CO2:溶存二酸化炭素、HCO3-:重炭酸イオン、CO32-:炭酸イオン)に含まれる炭素の合計です。右式のように、溶存二酸化炭素、重炭酸イオンおよび炭酸イオンは水のpHに依存した平衡状態を保っています。
pHが低くなると平衡は右式の左へ移動し、pH=3以下になるとほとんどすべてのICは溶存二酸化炭素となります。
IC測定にはこの現象を利用します。つまり、酸を添加してpHを3以下に調整した試料をCO2フリーの気体で通気することでICをすべて二酸化炭素として抽出し、その量を測定します。 
TC-IC法とNPOC法の使い方
TC-IC法とNPOC法は共にTOCを測定する方法ですが、試料性状によって使い分けて利用されています。
水道水や純水のようにTOC濃度が低い試料はTCに占めるICの割合が高いため、TC-IC法ではTC測定、IC測定それぞれの測定値のわずかな誤差やばらつきがTOC測定値に大きく影響し、測定精度の低下を招きます。したがってこのような試料にはTC-IC法が適さず、ほとんどの場合にNPOC法が用いられます。
一方、揮発性の有機化合物を多く含む試料や泡立ちやすい試料などの場合、NPOC法では試料の通気処理の際に揮発性有機化合物が試料から揮散してしまうことや、泡立つことで試料量を正確に計量できないことが生じてしまうためTC-IC法が利用されています。
TOC計の有機物酸化方法
有機物の酸化方法には、燃焼酸化方式と湿式酸化方式の2種類があります。
燃焼酸化方式
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燃焼酸化方式の最大の特長のひとつは、不溶解性有機物や高分子有機物のような難分解性有機物を高効率に酸化できる酸化力です。
650~1,200℃に加熱した触媒上に試料を注入し、試料中の有機物を全て「燃焼」させることで二酸化炭素に変換し、その量を測定します。
このため、難分解性の有機物や水に溶けない粒子性有機物も完全に酸化分解することができます。環境水や工場排水などにはこのような有機物が含まれることが多いため、酸化力に優れた燃焼酸化法が広く使われています。
燃焼酸化触媒による酸化というシンプルな酸化原理であり、煩雑な扱いや廃液処理を要する酸化試薬を使用しないことも特長のひとつです。 
湿式酸化方式
試料に酸化剤を添加することで試料中の有機物を化学的に酸化分解し、その結果生成する二酸化炭素量を測定する方式です。加熱や紫外線照射を利用して酸化反応を促進させる方法もありますが、いずれも化学反応による酸化のため燃焼酸化と比較して酸化分解力が弱く、懸濁性物質などの粒子性有機物や難分解性物質の回収率が低くなる傾向があります。
その反面、燃焼酸化方式に比べて穏やかな酸化反応を利用するため一度の測定で大量の試料を酸化することができ、その結果として低濃度測定性能が向上します。この特性から、湿式酸化方式は超純水中の極微量TOCの測定などに適しています。