LCMS-9050 - 特長
精密質量分析をより簡単に
LCMS-9050は、LCMS™シリーズから継承した島津独自の特許技術により、優れた質量精度を実現します。高精度温度コントロールシステムが外的要因による精密質量変化を抑制するため、質量較正を意識することなく精密質量を測定できます。
島津LCMSシリーズから継承された技術
LCMSシリーズから継承した島津独自の特許技術により、LCMS-9050は優れた性能を実現します。
イオン導入部からイオン分離部までは、主にLCMS-8000シリーズから継承した技術が搭載されています。明るいイオン光学系と高いイオン収束力で、イオンを効率よくTOF部へ導きます。
TOF部では、高精度温度コントロールシステムが外的要因による精密質量変化を抑制します。フライトチューブの最適な位置にヒータや温度センサを配置することで、精密かつ堅牢性の高い温度コントロールを実現しています。また、フライトチューブを制御する電源系も温度コントロールしており高い質量安定性を実現しています。
長時間安定した質量精度
高精度に管理された温度コントロールシステムが室温変化の影響を抑えるため、LCMS-9050は非常に安定した質量精度を示します。そのため、質量較正を意識することなく、容易に精密質量を測定できます。また、これまで頻繁な質量較正に費やしてきた時間と労力を削減することも可能です。
通常の実験室条件下で、抗生物質6成分（分子量 265～1203 Da）を連続分析し、理論値との質量誤差をプロットしました。3成分ずつ正イオンモードと負イオンモードで分析したところ、72時間一度も質量較正することなく、すべての成分が理論値から±2ppm以内という安定した質量精度を示しました。
らくらくチューニング（パフォーマンス・アシスタント）
LCMS-9050にはメインプローブとは別のサブプローブが標準搭載されています。イオン化ユニットに分析用と質量較正用の2つのプローブを備えているため、質量較正など装置のチューニング時にイオン化ユニットを交換する必要はありません。また、流路の汚染を気にすることなく分析とチューニングを行うことができます。複数のサンプル瓶を装置内部に格納できるため、複数の較正用サンプルにも対応可能です。
質量精度・分解能・感度などを自動で調整するオートチューニングは、ワークステーションLabSolutions™ LCMSに搭載されています。装置全体をチューニングするフルモードやTOF部の質量較正のみ行うモードなど、装置状態に応じてチューニングモードを選択できます。複雑な設定は必要なく3ステップで実行できるため、どなたでもベストな装置状態で分析を開始することが可能です。
高速極性切替をQ-TOFでも実現
優れた質量精度を基盤として新たな独自技術を融合させることで、世界トップクラスの安定した正負極性切替を実現しました。これまでのTOF分析の常識を打ち破る新技術により、まだ見ぬアプリケーションへの挑戦を可能にします。
島津の新技術：UFstabilization™
正イオンモードと負イオンモードを切り替えるとき、フライトチューブ電圧は目標値まで連続的に変化します。電圧が目標値に到達する前に分析すると質量誤差を生じるため、極性切替時には安定化待ち時間が必要です。従来装置では、安定化待ちに一定の時間を要するため、正イオン/負イオンの同時分析は困難でした。
LCMS-9050では、島津LCMSの歴史と技術を結集して独自に開発した高電圧電源と、高電圧電源の特性を徹底的に検証して開発した島津独自の極性切替アルゴリズム（UFstabilization；特許申請中）により、極性切替時に必要な安定化待ち時間を大幅に短縮し、高速極性切替を実現しました。正負高速極性切替でも安定した質量精度を示すため、正イオン/負イオンの同時分析が可能です。
安定かつ高い質量精度
単極性の分析と同様に、通常の実験室条件下で抗生物質標準品6成分（分子量 265～1203 Da）を1分析中で正負イオン同時分析しました。外標成分はサブインターフェースを用いて注入しました。外標成分を使い切るまで連続分析を実施し、全成分±3 ppm以内の質量精度を示しました。 正負イオン化切替モードを用いて長時間連続分析を行っても、安定した質量精度が維持されています。
新しいアプリケーションの世界
これまでのQ-TOFでは正イオン分析と負イオン分析の両方を実施する場合、それぞれ分けて計2回の測定が必要でしたが、LCMS-9050では1回の測定で完了することができます。 前処理したサンプルを同一条件下で、正負イオンを時間差なく検出することができるため、分析データの確度が向上します。また、少量サンプルでも1回の分析で正負イオンの情報を得ることができ、試薬の使用量削減にもつながります。出力されるデータファイルも一つにまとまるため、正イオン/負イオンの分析結果を簡単に比較することも可能です。
市販されているアトルバスタチンカルシウムを正負イオン同時分析しました。正イオン/負イオンの両方で、主成分アトルバスタチンや欧州薬局方（European Pharmacopoeia: EP）に記載されている不純物が、高い質量精度で検出されました。正イオン/負イオンモードの両方で測定することで、より確度の高い不純物の同定が可能になります。
多様なニーズに対応
多彩なオプション
LCMS-9050は様々なオプションと接続できるように設計されています。 標準装備のESIイオン化ユニットは、探針エレクトロスプレーイオン化ユニットDPiMS™と簡単に交換可能です。また、Q-TOFと全自動LCMS前処理装置CLAM™、ミクロ流量システムNexera Mikros™、超臨界流体抽出（SFE）/超臨界クロマトグラフィー（SFC）システムNexera™ UCなどを組み合わせることもできます。 基本の分析にオプションの機能をプラスすることで、質量分析の世界がさらに広がります。
PESIの簡便性 × LCMS-9050
PESIの特長は、前処理なしの迅速・簡便な分析です。
ユニットの換装はわずか15秒たらずです。探針を用いて微量のサンプルを採取して直接イオン化するため、LC分離条件の検討やサンプルの複雑な前処理は不要です。液体や固体を簡単な前処理だけで測定することができます。 データ取得は、正イオンと負イオンの両方を検出しても1分以内に完了します。
LCMS-9050と組み合わせることで、迅速・簡便にサンプル中の成分を同定することが可能になります。
SFCの網羅性 × LCMS-9050
SFC (Supercritical Fluid Chromatography) の特長は、低極性から高極性までの幅広い化合物を分離・分析することができる網羅性です。LCMS-9050と組み合わせて正イオンと負イオンを同時に分析することで、さらに幅広い物性の化合物を一斉に分析することが可能となり、一度の分析における網羅性が高まります。
また、SFE (Supercritical Fluid Extraction) での抽出サンプルは再利用できないため、通常のQ-TOF分析では正イオン測定と負イオン測定はで別々の抽出サンプルを使用することになります。LCMS-9050であれば正負イオンを同時測定できるため、同条件で抽出されたサンプルから正負イオン両方の情報が得られます。
LCMS, UFMS, Nexera, UF-Qarray, UF-Lens, UFsweeper, UFaccumulation, UFgrating, iRefTOF, UF-FlightTube, LabSolutions Insight Explore は、株式会社島津製作所またはその関係会社の日本およびその他の国における商標です。