GCMS-TQ™8050 NX - 特長
トリプル四重極型 ガスクロマトグラフ質量分析計
Enhanced Sensitivity
Enhanced Sensitivity - 従来できなかった極微量濃度の検出を可能に
Off-Axisイオン光学系の特長を最大限に引き出すために,3つのノイズ除去技術と増幅性能を高めた検出器を新たに採用しました。これらの最新技術により,フェムトグラムオーダーの極微量のイオンを確実に検出できます。その優れた分析感度と堅牢性がソリューションの価値を高め,新たなアプリケーションへの扉を開きます。
高効率検出器
GCMS-TQ8040 NXに比べてイオン数が少なくても,確実にピークとして検出することができます。そのため,フェムトグラムオーダーのようなイオンが少ない微量分析でも安定した分析が可能です。
Off-Axisイオン光学系
Off-Axisイオン光学系は,感度を低下させることなくHe準安定イオンなどのニュートラルノイズを取り除きます。
シールド付き検出器
二次電子増倍管部にシールドを搭載することによって,外部からの検出器に対するノイズを低減します。
オーバードライブレンズ
エレクトロンマルチプライヤーの前段に2枚のレンズ(オーバードライブレンズ)を設置することにより,HeやArなどから生じるランダムノイズを低減し,S/Nの向上を実現しました。レンズへの電圧により,レンズ付近のノイズ成分の低減と,マスフィルターを通過したイオンをフォーカスする効果によりS/Nレベルの向上を実現します(特許:US6737644)。
新設計の高効率検出器と3つのノイズ低減技術により,微量濃度の試料でも良好な安定性を示し,フェムトグラム以下のIDL※を実現しました。※ IDL:機器検出限界(Instrument Detection Limit)
GCMS-TQ8050 NXの微量分析での優れたデータ安定性は,高分解GC-MSに匹敵する感度をもたらします。従来,四重極型GC-MSでは微量定量が難しいとされてきたダイオキシンなどの分析でも,GCMS-TQ8050 NXは確実にピークをとらえ,パワフルな分析手段を提供します。
PFOSやPFOAなどの長鎖パーフルオロ化合物(PFCs)は,難分解性で生体内に残留しやすいことから使用が制限されつつあります。パーフルオロオクタンスルホンアミドやテロマーアルコールは,PFOSやPFOAに分解する可能性が指摘されており,環境中のモニタリング化合物として注目されており,微量濃度のモニタリングが要望されています。
N-Me-FOSEのマスクロマトグラム
(濃度 200 fg/µL)
N-Et-FOSEのマスクロマトグラム
(濃度 500 fg/µL)
ポリエステル製スポーツウェア中の
N-EtFOSE
(定量値 2.45 pg/µL)
Durable Hardware
GCMS-TQ8050 NXは,超高感度に加えて高い堅牢性も実現しています。汚染に強いイオン源や,従来機比5倍以上のライフタイムを有する新型検出器により,長期間安定した分析が可能です。GCMS-TQ8050 NXがもつ超高感度性能を活かして,注入量はこれまでより減らすことができます。インサートやカラムなどの消耗品のライフタイムも延ばすことができ,メンテナンス頻度とコストを削減します。
高感度・高安定イオン源
フィラメントとイオン源ボックスの間に距離を取り,フィラメント電位のイオン源内部への影響を低減しました。また,フィラメントから生じる輻射熱をシールドで遮り,イオン源ボックスの温度均一化を実現しています。イオン源内部の活性点が生じにくいため,高感度かつ長期間安定した分析が行えます。(特許:US7939810)
高性能四重極マスフィルター
プリロッドを備えた高精度なマスフィルターと特許技術の電場制御技術により,高精度の質量分離性能を引き出します。
また,プリロッドは四重極への汚染の影響を最小限に抑え,四重極をメンテナンスする必要はありません。
ロングライフ検出器
分析時の検出器の負担を限りなく低減したため,検出器の寿命を格段に伸ばすことが可能となりました。そのため,装置のメンテナンス頻度が低減され,待機時間を削減することができます。
GCMS-TQ8050 NXは極微量のイオンを高感度に検出することができるため,微量の試料でも高い定量精度を得ることができます。そのため,分析時に注入量を減らすことで,インサートやカラム,イオン源などへの分析負荷を軽くし,メンテナンス頻度をさらに少なくすることができます。
オイルフリーポンプ(オプション)
オイルフリーポンプはロータリーポンプの代替品として使用可能です。3年間メンテナンスが必要ありません。この真空補助ポンプは,排気ラインをオイルフリーの環境に保てるばかりでなく,オイルの交換,廃棄といった煩雑な作業が不要です。
Superior Performance
Superior Performance - さまざまな高感度分析を効率的に
排気性能を高めた新型ターボ分子ポンプの採用により,さらに優れたMSの真空状態を実現し,シングルGC-MSとしても高い感度を有しています。また,高効率コリジョンセル(UFsweeper)を継承し,質量分解能を高めても高感度で検出することが可能です。
新しく搭載したアクティブタイムマネジメントは,メンテナンスやシステム切り替えなどにかかる時間や複数ユーザーで利用される際に発生する待機時間を適切に管理し,稼働時間(アクティブタイム)を伸ばすことにより,さらなる効率的な運用を図れます。
卓越した再現性を実現する新型フローコントローラ
CPUを搭載した新しいフローコントローラ(AFC)は,キャリアガスの定線速度制御,定流量制御,定圧制御とあらゆる制御方式に対応し,すでに利用されている分析条件を正確にトレースすることができます。
また,スプリットラインのフィルタは工具レスで交換可能です。内部の汚れは目視で確認できるため,交換のタイミングを逃しません。
進化したGCオーブン
温調制御の向上により,さらなる精密なGCオーブンの温度制御が可能になりました。
保持時間再現性の精度を向上します。
また,オーブンの降温速度を3段階で設定できるようになり,カラム液相へのダメージを抑え,ライフタイムを最大化します。
Benzo[a]pyreneのマスクロマトグラム
(8回繰り返し測定の重ね描き)
多環芳香族炭化水素(PAHs)の繰り返し再現性
高効率コリジョンセル UFsweeper™
島津独自のUFsweeper技術を用いることで,コリジョンセル内に残留したイオンを効率よくsweepingし,高いCID効率とイオンの高速搬送を実現しています。クロストークを最小限に抑え,より微量な分析が可能になりました。
大容量差動排気システム
排気効率を高めた新型ターボ分子ポンプの採用により,真空系の安定性が向上しました。コリジョンガス(Ar)を導入するMRM分析でも真空度を高く保つことが可能となり,精度の高い微量分析が可能となりました。
高質量分解能による高分離での検出
生体試料や食品試料など,きょう雑物が多く含有されている試料中の極微量化合物を定量する際,MRMを利用しても十分な分離ができない場合があります。GCMS-TQ8050 NXは,質量分解能を高く設定しても高感度で検出することができるため,これまできょう雑物との分離が不十分だった化合物も明瞭に検出することができます。
シングルGC-MSモードによる高感度分析
GCMS-TQ8050 NXは,高感度イオン源およびオーバードライブレンズ付き高感度検出器の採用により,生成したイオンを効率よく選択し検出することが可能です。GC-MS/MSによるMRM測定だけでなくGC/MSとしてのスキャンおよびSIM測定においても高感度を実現しています。また,プリロッドにより四重極の汚染を防ぎ,マトリクスの多い試料の分析でも安定した感度,マススペクトルが得られます。
アトラジン 5pg/µL
左:GCMS-QP2020 NX 右:GCMS-TQ8050 NX
再現性はn=5での値
ブタミホスのスキャン分析結果
NISTライブラリのマススペクトル
待機時間を正確に把握するアクティブタイムマネジメント
装置の起動停止・試料注入口のメンテナンス・連続分析にかかる時間をリアルタイムで表示します。正確な待ち時間を把握することができ,装置の待機時間を最小限に抑えられます。
Twin Line MS システムによるカラム交換作業を簡略化
2本の異なるカラムの出口側をMSに同時にとりつけることで,MSの真空を停止することなく,異なるアプリケーションデータ採取が可能となります。
抵抗管などを利用しないため,吸着等の損失がなく,1本のカラムで使用していたメソッドや保持時間をそのまま利用できます。新型大容量差動排気システムを採用しているので,2本のカラムを接続しても感度が低下しません。
きょう雑物との分離や異性体同士の分離のため,種類の異なるカラムを交換せずに切り替えて測定することが可能です。
Reliable Operation
さまざまな分野に特化したSmart Databaseシリーズと感度を最適化する“Smart MRM”が極微量分析でのメソッドを正確に作成し,MRM測定での高感度分析を確実に実現します。また,多検体データの定量解析を支援する“LabSolutions Insight™”ソフトウェアは,微量濃度の多成分一斉分析におけるデータ解析のスループットを高め,充実した精度管理機能は,定量・精度管理結果を可視化することにより視覚的にわかりやすく判断することができます。
Smart MRM
「Smart MRM」とは,成分ごとに最適な測定時間を設定したメソッドを自動作成する機能です。多成分一斉分析メソッドを作成する場合,従来は測定パラメータの設定が複雑になり適切なメソッド作成が困難でしたが,この機能を用いれば対象成分の溶出時間帯だけデータを採取するメソッドを自動作成できます。また,MRMのみならずSIMのメソッド作成も可能です。
Smart Database
Smart Databaseには,あらかじめ最適なトランジション情報が登録されています。そのため,分析の条件検討の必要なく「Smart MRM」で最適なメソッドを作成することが可能です。Smart Databaseが信頼性の高い分析を強力にサポートします。
特に微量分析が必要な環境汚染物質の分析には“Smart Environmental Database”が非常に有用です。
Smart Environmental Databaseには,分析対象成分のMRM情報や安定同位体標識化合物(IS)情報が登録されているだけでなく,各化合物の分離に最適なカラムが設定されているため,化合物ごとに条件検討を要することなくスムーズな微量分析が可能です。
LabSolutions Insight
LabSolutions Insightは,多検体データの解析スループットを向上するための機能を搭載した,定量支援ソフトウェアです。
微量成分の多成分一斉分析におけるデータ解析の信頼性を向上させます。
→ LabSolutions Insightのご紹介