LCMS™-8060

高速液体クロマトグラフ質量分析計

Sensitivity

最適化したイオン導入部とそれに続く新技術UF-Qarray™により,イオンサンプリング効率とイオン収束力が格段に高まり,感度向上を実現しました。世界最高レベルの感度が革新的なアプリケーションを生み出します。
新UF-Qarrayは中央収束効果の高い高周波四重極電場を基本とするイオンガイドで,汚れに強いQarray™構造を踏襲しつつ,イオンを効果的に収束して,質量分析部へ運ぶように設計されています。イオンがイオンガイド電極から離れた中央部を通過するため,電極汚染の影響を抑制することができます。新UF-Qarrayは感度の向上と堅牢性の向上を両立させた画期的な技術であり,極低濃度でのデータの信頼性,正確性が飛躍的に高まります。

Sensitivity

農薬3成分についてLCMS-8060とLCMS-8050の比較を行いました。LCMS-8060のシグナル強度はLCMS-8050から3倍以上向上しました。一方でLCMS-8060のベースラインノイズレベルの上昇はLCMS-8050と有意差がない程度に抑えられています。これは,イオン導入効率の改善に付随するバックグラウンドノイズの上昇を,新UF-Qarrayのイオン収束力,イオン透過力向上によるイオン強度の増大が遥かに上回っていることを示しています。

農薬3成分(100 ng/mL)のMRMクロマトグラム
上段:LCMS-8060とLCMS-8050の比較
下段:ベースライン比較

LCMS-8060はMRMだけでなく,スキャンモードでも高い感度を維持しています。下図はヒト血清中のリン脂質(ホスファチジルコリン(PC)/スフィンゴミエリン(SM))のプリカーサーイオンスキャン分析の例です。試料は除タンパク後,メタノールで1000倍希釈しました。注入量は1 µL,スキャンスピード3000 u/sec で測定を行いました。8.5 - 12.5 minに注目してみると,LCMS-8060では偶数で現れるPCのプリカーサーイオンが明確にとらえられていることがわかります。

m/z184をモニターイオンとしたときのリン脂質(PC/SM)のプリカーサーイオンスキャン分析

m/z184をモニターイオンとしたときのリン脂質(PC/SM)のプリカーサーイオンスキャン分析

Speed

正負イオン化切替時間5msecの超高速正負イオン化切替測定(UFswitching™),最高スキャンスピード30,000 u/secの超高速スキャン(UFscanning™),最大555ch/secの超高速MRM測定(UF-MRM™)。LCMS-8050から引き継いだ高速性能はそのままに,クラス最高レベルの感度を加え,高精度な定量と定性の両立を可能にします。

400 msec loop timeで65MRMをモニターした際のloop timeに占めるdwell timeの比率

400 msec loop timeで65MRMをモニターした際のloop timeに占めるdwell timeの比率

正負イオン同時測定を実施する場合,極性切替に要する時間,すなわち正負イオン化切替時間(polarity switching time)がデータの精度に大きく影響します。

高速正負イオン化切替
LCMS-8060の正負イオン化切替時間はわずか5 msecで,LCMS-8050の高性能をそのまま引き継いでいます。

十分なイオンの取り込み
LCMS-8060はループタイム(loop time)の大部分をデータ取込時間(dwell time)として割くことができるため,多成分高速分析においても十分なイオン量を取り込むことができ、シグナル低下を生じることなく安定したデータが得られます。

下図は高速正負イオン化切替を用いて測定した水質農薬105成分一斉分析の例です。最もクロマトグラムが重なった領域では最大65成分同時分析しています。この分析例では,Dwell timeは2 msecと設定し,最長ループタイムは400 msec,データポイント数はピーク幅10 sec程度のピークに対して20点以上となります。この領域のLCMS-8050からの感度向上は全成分平均の3.66倍と同等で,さらに面積再現性(RSD)は5%未満を達成しています。

水質農薬105成分(各300 pg/mL)のMRMクロマトグラム

水質農薬105成分(各300 pg/mL)のMRMクロマトグラム

Solutions

Solutions

LCMSを用いたカテコールアミン3分画の一斉分析例を示します。カテコールアミン3分画は高感度分析の代表例で,ノルアドレナリン(ノルエピネフリン),アドレナリン(エピネフリン),ドーパミンの3成分の血漿中濃度を定量します。血漿マトリクスには内在性のカテコールアミンが含まれているため,実試料における定量下限の評価が難しくなっています。そこで,本来内部標準として一定量添加するノルアピネフリン,エピネフリンおよびドーパミンの重水素標識化合物(重水素体)を,あえて段階希釈し,マトリクス検量線を作成しました。また,標識化合物をHPLC移動相で段階希釈した標準サンプルと,市販ヒト血漿を固相抽出処理してから標識化合物を添加したサンプルとを,それぞれ測定しました。LCMS-8060を用いた分析により,超低濃度のカテコールアミンであってもマトリクスの影響を受けずにピーク検出可能であることが示唆されました。

カテコールアミン3分画のピーク検出例

カテコールアミン3分画のピーク検出例

化合物名 検量線 マトリクス検量線
検量線範囲
(pg/mL)
寄与率
(r2)
検量線範囲
(pg/mL)
寄与率
(r2)
ノルエピネフリン-d6
(158.1 > 111.1)
2.5 – 2000 0.9999 2.5 – 2000 0.9997
エピネフリン-d6
(190.1 > 172.1)
10 – 2000 0.9999 10 – 2000 0.9994
ドーパミン-d4
(158.1 > 95.1)
5 – 2000 0.9999 10 – 2000 0.9995
血漿試料にスパイクしたカテコールアミン3分画および重水素体(内部標準)のピーク検出例

血漿試料にスパイクしたカテコールアミン3分画および重水素体(内部標準)のピーク検出例

薬毒物の高感度・高速一斉スクリーニング

LCMS-8060には,閾値を超えると自動的にMS/MSを行うSynchronized Survey Scan™(SSS)機能があり,1回の分析でMRM測定における強度閾値を用いた自動プロダクトイオンスキャン測定が可能です。1回の分析で定量と定性の両立が可能となり,LCMS-8060のUF Technologiesにより,MRMと同時にスキャン測定を実施しても定量精度を損なうことなく,MS/MSスペクトルを得ることができます。

Synchronized Survey Scan機能を用いた分析メソッド

Synchronized Survey Scan™機能を用いた分析メソッド

SSS機能を用いて,全血にフルニトラゼパムを添加して処理したサンプルを測定した結果を示します。全血サンプルはQuEChERS法により処理したものを用いました。異なる3つの添加量(0.1 ng/mL,1 ng/mL,10 ng/mL)のサンプルを2つのスキャンスピード(3000 u/sec,30,000 u/sec)で測定し,LCMS-8060のSSS機能を評価しました。LCMS-8060の高いスキャン感度により,0.1 ng/mLのサンプルを30,000 u/secで測定しても良質なMS/MSスペクトルを得ることができ,89という高い類似度(フルスコア:100)を示しました。また,スキャンスピード30,000 u/secのほうが十分なデータポイント数が確保され,良好なピーク再現性を得ることができました。

MRMをトリガーとしたプロダクトイオンスキャン測定

速いスキャンスピードで良質なMS/MSスペクトル
(MRMをトリガーとしたプロダクトイオンスキャン測定)

感度の向上はあらゆる微量定量測定を進化させ明確な違いを測定者に提供します。LCMS-8060の感度面での進化は,前処理の簡略化とサンプル注入量の削減を実現し,生産性の高い高感度定量分析を可能にします。

血漿中のベラパミルの超高感度定量

近年,少量でも高い効果が得られる医薬品が開発されるようになり,薬物動態評価などのバイオアナリシスにおいて感度への要求が年々高まっています。LCMS-8060によるベラパミルの分析では,0.1 pg/mL ‒ 50 ng/mLにおいて非常に高精度な定量結果が得られました。さらに,100 agの面積値RSDは5.08 % (n = 10) という非常に良好な再現性が得られました。

ベラパミルのMRMクロマトグラム

ベラパミルのMRMクロマトグラム

設定濃度
(ng/mL)
算出濃度
(ng/mL)
面積 RSD
(%, n=3)
真度(%)
0.0001 0.000100 2.97 100.3
0.0005 0.000508 6.15 101.7
0.001 0.000942 5.32 94.3
0.005 0.00491 3.54 98.9
0.01 0.00949 2.94 95.0
0.05 0.0511 2.14 102.4
0.1 0.0996 1.18 99.8
0.5 0.522 0.63 104.5
1 1.01 0.26 100.8
5 5.28 0.43 105.6
10 10.0 0.60 100.0
50 48.8 0.33 97.8

血清中のステロイドホルモンの分析

アルドステロンは体内でカリウムイオンとナトリウムイオン濃度の調整をしているステロイドホルモンです。通常の血中濃度は30 ‒120 pg/mLで,正常値を外れると血圧値に異常を生じます。LCMS-8060では,アルドステロンの標準試料の分析で定量下限(LLOQ)0.2 pg/mLを達成し,また0.2pg/mL ‒2000 pg/mLという幅広い定量範囲が得られました。さらに,標準試料の分析で用いたメソッドをヒト血清の分析に応用し血清中に含まれるアルドステロンの定量を行うことができました。

LLOQレベルのマスクロマトグラム

LLOQレベルのマスクロマトグラム

血清中に含まれるAldosteroneのMRMクロマトグラム

血清中に含まれるアルドステロンのMRMクロマトグラム

アルドステロンの検量線

アルドステロンの検量線

アルドステロンの定量結果

レベル 設定濃度
(pg/mL)
算出濃度
(pg/mL)
面積 RSD
(%, n=5)
真度(%)
1 0.2 0.190 13.2 94.8
4 2 1.96 1.4 97.9
7 20 19.9 1.2 99.6
10 200 189 0.3 94.5
13 2000 1846 0.5 92.3
16 20000 18613 2.6 93.1

※ 定量結果は間引きしています。    

ヒト血清中の脂質メディエーター高感度一斉分析

ヒト血清から検出された成分数。繰り返し分析の再現性CV%(n=10)が20%以下の成分は,LCMS-8060システムで85成分,LCMS-8050システムで77成分でした。

ヒト血清から検出された成分数。
繰り返し分析の再現性CV%(n=10)が20%以下の成分は,LCMS-8060システムで85成分,LCMS-8050システムで77成分でした。

脂質メディエーターは生体内で微量に生産される生理活性脂質です。動脈硬化や糖尿病など生活習慣を起因とする各種疾患との因果関係が注目されており,高感度質量分析計による定量的プロファイリング手法の開発が求められています。
脂質メディエーターメソッドパッケージ ver.2を用い,市販のヒト血清試料中の脂質メディエーターの定量プロファイリングを行いました。アラキドン酸代謝物で最も高濃度であった 5-HETE は1 µMであり,最も低濃度であった12-HHTは0.5 nMでした。また酸化ストレスマーカーである8-iso-PGFは0.1 nMでした(下図)。このようにサブnMからµMまで幅広いダイナミックレンジの微量脂質代謝物プロファイリングが可能です。モニターした158成分のうち,高感度質量分析計LCMS-8060システムでは85成分を再現性良く検出しました(右図)。

ヒト血清から検出された,5-HETE,12-HHT,8-iso-PGF2αのネガティブモードMRMクロマトグラム

 

LCMS-8060の高感度と究極の高速性能はバイオマーカー探索・評価研究に大きく貢献します。
超高速分析でも有意なピークをしっかりとらえるLCMS-8060は重要な内因性代謝物を見逃すことなく容易に探索することを可能にします。

トリプシン消化ペプチドの高感度分析

セミミクロ流量における卓越した高感度性能がもたらすCRP由来トリプシン消化ペプチドの分析例

セミミクロ流量における卓越した高感度性能がもたらすCRP由来トリプシン消化ペプチドの分析例

バイオマーカータンパク質の定量分析を実現するためには,高感度な測定手法が不可欠です。LCMS-8060はペプチド分析においても卓越した定量性能を示します。C反応性タンパク質(C-reactive protein,CRP)のトリプシン消化ペプチドAFVFPKの高感度分析例を示しました。血漿中におけるCRP濃度は炎症により増加するため,様々な疾患リスクに対する定量的な評価方法としての重要性が注目されています。LCMS-8060を用いた分析例では,一般的な基準値(3 mg/L)の1/300以下においても安定した定量性を示しました。LCMS-8060は,優れた定量性能とUF-MRM™の高速性によりマーカータンパク質の定量分析に新たな可能性を提供します。

血漿のトリプシン消化物に添加した同位体標識ペプチドの定量性評価結果
添加濃度
(mg/L, in plasma)
算出濃度
(mg/L, in plasma)
面積RSD
(%, n=5)
真度
(%)
0.00805 0.00929 7.1 115
0.0161 0.0181 8.2 112
0.0322 0.0356 5.2 111
0.322 0.320 1.2 99
3.22 3.01 0.7 93
32.2 29.8 1.0 93
322 337 0.9 105

血漿のトリプシン消化物に添加した同位体標識ペプチドの定量性評価結果

過酷な連続分析でも高感度をキープ

下記データは,ヒト血漿中に添加したアルプラゾラムを連続分析して,面積値と面積比(内標:アルプラゾラム-d5)をプロットしたものです。各日400回ずつ,計6日間分析を行いました。通常の分析停止や,停電や長期休暇による装置停止を模して,毎分析後の分析停止や期間途中での真空停止を織り込みました。日内変動は面積値でRSD 5%前後,内部標準との面積比でRSD 3.5%前後となりました。日間変動は変動値2.74%となり,分析停止や真空停止の影響は全くありませんでした。ルーチンでの薬物血中濃度定量に代表される夾雑成分を含む試料の連続測定においても,抜群のデータ安定性を維持します。

ヒト血漿中に添加したアルプラゾラムの連続分析

ヒト血漿中に添加したアルプラゾラムの連続分析

アルプラゾラムのMRMクロマトグラム(血漿添加:左から注入1回目,1200回目,2400回目)

アルプラゾラムのMRMクロマトグラム(血漿添加:左から注入1回目,1200回目,2400回目)

ヒト血漿中に添加したアルプラゾラムの日内変動と日間変動

化合物 日内変動 (%RSD) 日間変動 (%RSD)
1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 前半3日間 後半3日間 6日間
アルプラゾラム 5.04 4.94 5.06 5.38 4.55 4.83 3.19 1.63 2.74
アルプラゾラム-d5(内標) 5.04 4.68 5.48 5.31 4.26 4.91 2.62 1.89 2.18
Area ratio
(アルプラゾラム / アルプラゾラム-d5)
3.48 3.11 3.48 3.44 3.71 3.54 1.79 0.26 1.40

ダウンタイムを短縮するメンテナンス性

「かんたんメンテナンス」を従来機から継承。DLも真空状態のまま交換できるので,分析のダウンタイムを最小限にとどめることが可能です。

DLの交換ステップ
DLの交換ステップ

2016年 日本産業機械工業会賞

第46回機械工業デザイン賞において,高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-8060,ソフトウエアLabSolutions LCMSが団体賞の日本産業機械工業会賞を受賞しました。審査では,次世代に繋がるイノベーションを実現して新しい価値を創出している,と高く評価されました。

*機械工業デザイン賞(日刊工業新聞社主催)は,無駄を省いて極限まで追及した生産財の製品の機能・性能・品質について”機能美”を評価して表彰する国内唯一の顕彰制度です。当社はこの顕彰制度において,分析計測機器や医用機器の製品が5年連続で受賞しています。

Top of This Page

お問い合わせ