大気中微小粒子状物質(PM2.5)成分分析機器
最近、中国の大気汚染報道の中で、PM2.5という言葉が頻出しています。これは、浮遊粒子状物質のなかで、粒径2.5μm以下の小さな粒子のことで、肺の奥深くまで入りやすく健康への影響も大きいと考えられています。
日本では、平成21年9月に微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が設定されたことを受け定められ、平成22年3月31日に改正された「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染状況の常時監視に関する事務処理基準について」にてPM2.5の成分分析を、国のガイドラインに基づいて実施することとされています。また、平成23年7月29日付けで環境省より新たな「PM2.5の成分分析ガイドライン」が各都道府県知事・政令市長宛に通知されました(環水大大発第110729001号)。
ここでは、平成22年9月1日付環境省事務連絡にて示された、成分分析に用いる分析方法(基礎的情報)に基づいた各分析機器をご紹介します。
PM2.5の成分分析に用いる機器の例
平成22年9月1日付 環境省事務連絡「微小粒子状物質の成分分析に係る基礎的な情報について」より抜粋
| 測定成分 | 分析機器 | 前処理機器等 | 対応する弊社製品 |
|---|---|---|---|
| 多環芳香族炭化水素類(PAH) | ガスクロマトグラフ質量分析計 又は 高速液体クロマトグラフ(HPLC) |
・抽出 超音波抽出装置、 ソックスレー抽出装置 ・濃縮 窒素ガス濃縮装置、 ロータリーエバポレーター、 クデルナ・ダニッシュ濃縮装置 ・遠心分離 遠心分離装置 |
GCMS-QP2020 NX Nexeraシリーズ |
| レボグルコサン | ガスクロマトグラフ質量分析計 | 抽出,濃縮は同上 ・誘導体化 恒温槽 |
GCMS-QP2020 NX |
| 水溶性有機炭素 (WSOC) |
全有機体炭素計 | 超音波抽出装置 | TOC-L |
| イオン成分(備考1) | イオンクロマトグラフ | 超音波抽出装置 | |
| 無機元素成分(備考2) (蛍光X線法) |
蛍光X線分析装置 | - | EDX-7000/8000 |
備考1)イオン成分
硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン 等
備考2)無機元素成分
ナトリウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ヒ素、セレン、ルビジウム、モリブデン、アンチモン、 セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ハフニウム、タングステン、タンタル、トリウム、鉛 等
目的元素により、原子吸光法あるいはICP-AES法を用いても良いとされています。「環境省暫定マニュアル(平成19年)より」
備考3)試料採取について
サンプラの分粒装置には、50 %分粒径が2.5 µm ±0.2 µmであり、80 %分粒径に対する20 %分粒径の比で規定する傾きが1.5以下の性能を持つ分粒装置を用いることとされています。
分粒装置の例:米国連邦標準法(Federal Reference Method:FRM)に認定されているもの
GCMSでの測定例
多環芳香族炭化水素類(PAH)分析データ

1.Naphthalene, 2.Biphenyl 3.Acenaphthylene 4.Acenaphthene 5.Fluorene 6.Dibenzothiophene 7.Phenanthrene 8.Anthracene 9.4H-Cyclopenta[def]phenanthrene 10.Fluoranthene 11.Pyrene 12.Benzo[ghi]fluoranthene 13.Benzo[c]phenanthrene 14.Benzo[a]anthracene 15.Cyclopenta[cd]pyrene 16,17.Chrysene & Triphenylene 18.Benzo[b]fluoranthene 19.Benzo[k]fluoranthene 20.Benzo[j]fluoranthene 21.Benzo[a]fluoranthene 22.Benzo[e]pyrene 23.Benzo[a]pyrene 24.Perylene 25.Dibenz[a,j]anthracene 26.Dibenz[a,c]anthracene 27.Indeno[1,2,3-cd]pyrene 28.Dibenz[a,h]anthracene 29.Benzo[b]chrysene 30.Picene 31.Benzo[ghi]perylene 32.Anthanthrene 33.Dibenzo[b,k]fluoranthene 34.Dibenzo[a,h]pyrene 35.Coronene 36.Dibenzo[a,e]pyrene
分析条件
| 分析機器 | :GCMS-QP2010 Ultra | 高圧注入 | :150kPa(1.5分) |
| カラム | :Rtx-35(長さ 30 m, 0.32 mm I.D., df=0.25 μm) | インターフェース温度 | :300 ℃ |
| 注入モード | :スプリットレス | イオン源温度 | :230 ℃ |
| 気化室温度 | :300 ℃ | 測定モード | :スキャン |
| カラムオーブン温度 | :90 ℃(2分) →(5 ℃/分) →320 ℃(12分) | 質量範囲 | :m/z 45-450 |
| キャリアガス制御 | :ヘリウム(線速度一定:43.7 cm/秒) | イベント時間 | :0.3秒 |
【参考】前処理方法(暫定マニュアルより)
フィルターの細断 → 超音波抽出 → 上澄液の分取 → 抽出液の分散、10 % ジクロロメタン/N-ヘキサンによる抽出 → 濃縮 → GCMS分析
■ GCMS-QP2020 NXの特長
ガスクロマトグラフ質量分析計
GCMS-QP2020 NX
1.高速スキャン測定での高感度分析を実現
Fast-GC/MSではクロマトグラムの溶出時間が非常に短くなり、ピークがシャープになります。新設計のデータ演算処理プラットフォームとASSP機能により高速性能が向上しました。またScan/SIM同時測定を一層強化しました。
2.Twin line MSシステムによりカラム交換作業を簡略化
2つの異なるカラムの出口側をMSに同時に取り付けることで、MSの真空を停止することなく異なるカラムでのアプリケーションデータ採取が可能です。
(例:PAH分析カラムとレボグルコサン分析カラム)
3.省エネルギー
「エコロジーモード」の搭載で、分析待機時の消費電力を従来比で36 %削減しました。
イオンクロマトグラフでのイオン成分測定例
陰イオン分析

分析条件
| カラム | :Shim-pack IC-A3 |
| ガードカラム | :Shim-pack IC-GA3 |
| 移動相 | :8 mmol/L p-ヒドロキシ安息香酸 3.2 mmol/L Bis-Tris 50 mmol/L ほう酸 |
| 流量 | :1.2 mL/min |
| 温度 | :40 ℃ |
標準試料連続分析再現性(n=6、面積)
| Cl - | NO 3 - | SO4 2- | |
| 再現性 (%RSD) |
0.326 | 0.747 | 0.803 |
陽イオン分析

分析条件
| カラム | :Shim-pack IC-C4 |
| ガードカラム | :Shim-pack IC-GC4 |
| 移動相 | :2.5 mmol/L しゅう酸水溶液 |
| 流量 | :1.0 mL/min |
| 温度 | :40 ℃ |
標準試料連続分析再現性(n=6、面積)
| Na + | NH 4 + | K + | Mg 2+ | Ca 2+ | |
| 再現性 (%RSD) |
0.326 | 0.747 | 0.803 | 0.483 | 1.549 |
【参考】前処理方法(暫定マニュアルより)
フィルタを扇形に切断 → 水を加えた抽出瓶へ → 超音波処理層に浸し、超音波照射 → 抽出 → ろ過 → イオンクロマトグラフ
蛍光X線装置(EDX)での無機元素成分測定例

標準試料PM2.5 NIST SRM2783(11Na~92U)での定性プロファイル
| NIST SRM2783 認証値 (単位: ng/cm2) | |||||
| 11Na | 186.7 | 23V | 4.9 | 29Cu | 40.6 |
| 12Mg | 865.5 | 24Cr | 13.6 | 30Zn | 179.7 |
| 13Al | 2330 | 25Mn | 32.1 | 33As | 1.2 |
| 19K | 530.1 | 26Fe | 2660 | 51Sb | 7.2 |
| 20Ca | 1325 | 27Co | 0.77 | 56Ba | 33.6 |
| 22Ti | 149.6 | 28Ni | 6.8 | 82Pb | 31.8 |
NIST SRM2783 の認証値
EDX-720で得られたNIST SRM2783 (PM2.5の標準試料)とブランクフィルタの重ね合わせプロファイルです。軽元素から重元素まで高感度に検出できています。薄膜FP法を用いれば定量分析も可能です。
■ EDX-720の特長
エネルギー分散型蛍光X線分析装置 EDX-720 は販売を終了し、後継機種EDX-7000/8000となりました。
1.簡便操作で全自動測定がスタート
初めてでも簡単・高精度は測定独自の技術で煩雑な設定作業を自動化、専門知識・経験・技術は必要ありません。
2.フィルタのまま前処理無しで分析可能
エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いれば、エアサンプラを通してフィルタに捕集した微小粒子状物質(PM2.5)を化学的な前処理なしで元素分析可能です。
3.幅広い元素を高感度で分析できます
TOC計(燃焼触媒酸化 / NDIR検出方式)による水溶性有機物測定例
WSOC(水溶性有機炭素)の主成分であるジカルボン酸の代表例としてシュウ酸を分析した結果を示します。試料を調製した純水には不純物としておよそ0.02 mg/LのTOCが含まれているため、各シュウ酸水溶液のTOC値はその分濃度が高くなっていますが、変動係数CV値はいずれも3 %以内で定量できています。

分析条件
| 装置 | :TOC-LCPH |
| 触媒 | :高感度触媒 |
| 注入量 | :500 µL |
| 測定項目 | :TOC(酸性化通気処理によるTOC) |
| 検量線 | :0 - 3 mgC/Lフタル酸水素カリウム水溶液 |
| 試料 | :特級試薬のシュウ酸 2 mgC/L、1 mgC/L および 0.2 mgC/L水溶液 |
シュウ酸水溶液のTOC測定結果
| 試料名 | TOC値 [mgC/L] |
n=3の CV値 |
| 2 mgC/Lシュウ酸水溶液 | 2.013 | 0.95 % |
| 1 mgC/Lシュウ酸水溶液 | 1.017 | 1.11 % |
| 0.2 mgC/Lシュウ酸水溶液 | 0.223 | 2.06 % |
■ TOC-Lの特長
全有機体炭素計
TOC-L
4 µg/L~30,000 mg/Lの超ワイドレンジで超純水から高汚濁水まで適用(CSH/CPHモデル)
680 ℃燃焼触媒酸化方式により全ての有機成分を高効率で測定します。さらに検出限界4 µg/Lという高感度検出能力も備え、幅広い分野の試料に対応します。
省スペース、省エネ設計
当社従来機との比較で消費電力を36 %、装置幅を約20 %削減しました。
豊富なモデル、オプション
- 測定データの処理に便利なPCモデルと簡単操作のスタンドアロンモデルを用意
- オプションの付加で、固体試料からガス試料まで測定可能
- TNユニットを付加するとTN測定も可能に
