純度分析

組み換えタンパク質の合成およびトランスロケーションを制御する細胞プロセスは複雑であり,タンパク質を分泌する効率性は個々の細胞株により大きく依存します。そのため,バイオ医薬品開発の初期段階において最適な細胞株の選択が重要です。
この過程では安全性と有効性の観点から,インタクトプロテインを分析し,いくつかの重要な品質特性を評価します。これらの特性は開発過程のワークフロー全体を通じて継続的にモニタリングされることから,堅牢なシステムとデータインテグリティが求められます。

質量分析

発現したタンパク質のアミノ酸配列および翻訳後修飾(PTM)の確認には,精密な質量分析の結果が必要となります。高分解能かつ高感度な質量分析の結果から,同一試料中に存在するタンパク質の相対存在量やPTMの相対量を得ることができます。

製品紹介

LCMS-9030

LCMS-9030

四重極飛行時間型高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-9030は,高分解能かつ精密な質量分析をルーチンで実施できる最適な製品です。長時間,再校正をすることなく,質量精度を保つことが可能です。

 

MALDI MS

リニアモードMALDI-TOF質量分析計は品質管理(QC)や プロファイリングの用途に用いられています。MALDI-8020もその例外ではなく,ペプチド,タンパク質,ポリマーやオリゴ核酸などのQCやプロファイリング用途の測定において,求められる性能を発揮します。また,研究室における利用においても,MALDI-8020による迅速かつ簡便なサンプル測定は,大きなメリットがあります。

凝集体と断片の分析

タンパク質の凝集体は,投与されると強い免疫応答を引き起こす可能性があることが知られています。バイオ医薬品のプロセス開発やその改良において,各ステップにて凝集体をモニタリングすることは,重要な品質特性解析のひとつです。たとえば,凝集体や分解物を産生する傾向が高い細胞株は,仮に高いタンパク質分泌量を示したとしても,開発初期段階で除外されます。

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は,タンパク質の単量体と,その凝集体や分解物とを分離するために適した方法です。当社は分析スループット向上に有効な幅広いSECカラムを提供しています。

 

mAb サイズ排除クロマトグラフィー


カラム : Shim-pack Bio Diol-300
移動相 : 0.1 mol/L KH2PO4-K2HPO4
      (pH7.0) with 0.2 mol/L NaCl
検 出 : UV 280 nm
温 度 : 室温
流 量 : 0.2 mL/min
試 料 : ヒト化モノクローナルIgG1


 

このクロマトグラムは,流量を一定にした状態でサイズの異なるShim-pack Bio Diol-300カラムを用いて得たモノクローナル抗体(mAb)のSEC分離プロファイルを比較したものです。粒径が5 μmから2 μmへとより小さいものを用いることでピーク分離度が向上し,またより短いカラムを用いることで分析時間を30分から15分へ短縮することが可能です。

製品紹介

チャージバリアント分析

タンパク質は構成されるアミノ酸残基の修飾,異性化,あるいはタンパク質自体の断片化などの理由により,タンパク質全体の電荷が変化します。その結果,構造,結合親和性あるいは安定性が影響を受けます。
チャージに由来する不均一性は,抗体医薬品などタンパク質の重要な品質特性です。チャージバリアントのプロファイルはイオン交換クロマトグラフィー(IEX)により評価され,開発ワークフロー全体を通じて繰り返しモニタリングされます。
溶出プロファイルの再現性は,高い塩濃度の条件下で精度と正確度を維持できるHPLCシステムの堅牢性に依存します。ここでは抗体を10回連続で陽イオン交換クロマトグラフィーにより分離した場合の再現性を評価しました。0.2 mol/L NaClの存在下でベースラインと溶出プロファイルが正確に維持されていることが実証されました。

 

mAb 陽イオン交換クロマトグラフィー


HPLCシステム : Prominence-i
移動相 : 0.02 mol/Lリン酸ナトリウム
      0.2 mol/L NaCl
流 量 : 1.0 mL/min
試 料 : mAb(トラスツズマブ)


製品紹介

(上)代表的な分離プロファイル
   ピーク面積の割合と%CVを示す。
(下)10回連続分析して得られたクロマトグラム
   (ベースラインを少しずつずらして表示)
   保持時間の高い再現性を示す。