MALDI-TOF MSを用いたO抗原糖鎖測定による大腸菌のO抗原型別

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はじめに

微生物の型別は、感染症診断における最も基本的な技術の1つです。大腸菌では、菌体表層にあるリポ多糖(Lipopolysaccharide: LPS)の構成要素の1つであるO抗原糖鎖の構造に基づく型別法(O抗原型別)が主要な手法です。従来のO抗原型別法としては、このO抗原糖鎖に対する抗血清を用いた抗原抗体反応(O血清型別)が実施されています。しかし、180種類以上も報告されているO血清型を決定するためには、型別試薬も同じ数だけ用意する必要があり、また、180種類を超えるすべての型別には大変な労力が必要です。本稿では、単一の試薬と一度の試験での型別を可能にした、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS)を用いた大腸菌のO抗原型別例を紹介します。

2025.09.10