MALDI-8030とeMSTAT Solutionを用いた 機械学習によるトリアシルグリセロールプ ロファイリング

ユーザーベネフィット

- 労働集約的な手順および過剰な溶媒使用を必要としない最小限の試料調製が可能です。 - 卓上型リニアモード専用MALDI-TOFMSの正イオンモードを用いた高速自動試料分析が可能です。 - eMSTAT SolutionソフトウェアによるPCA解析と機械学習により未知試料の容易な分類ができます。

はじめに

エキストラバージンオリーブオイル (EVOO) は、低温条件下での機械的圧搾のみによってオリーブ果実を破砕して化学バランスと特性を保持する、そのユニークな生産プロセスによるオリーブ油の最高グレードです。また、EVOOは飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、およびポリフェノール、トコフェロール、ステロールなどの微量成分の最適なバランスにより、栄養的および健康的な恩恵をもたらすため、栄養治療薬としても認識されています。このような健康上の利点があるため高い生産コストが価格に反映されてもなお、価値ある製品となります。このような理由のために、 EVOOは、生産者や貿易業者が低品質の混ぜ物処理油（偽和油）を本物のより高価なEVOO製品として不正に販売しようとする試みにおいて、代替の安価な植物油の追加による偽和処理の脆弱なターゲットです。偽和処理されたEVOOに見られる典型的な植物油は、ヤシ、カノーラ、ヘーゼルナッツ、ポマース、ヒマワリ、トウモロコシ、ダイズ、落花生などです。経済的被害に加えて、ヘーゼルナッツ油に含まれる潜在的に危険なアレルゲンへの曝露のため、ヒトが消費する非純正EVOsの安全性にも懸念があります。 エキストラバージンオリーブオイル詐欺と戦い、このユニークな製品のアイデンティティを保護するために、厳格で効率的な品質管理アッセイが確立されました。EC規制2568/91では、欧州連合 (EU) がオリーブオイルの品質と真正性を評価するための分析方法を規定しています。これらの中で、トリアシルグリセロール (高速液体クロマトグラフィーによる) および脂肪酸とステロール (ガスクロマトグラフィーによる) プロファイルに基づくものは、非常に一般的です。しかしながら、これらの方法は、多くの場合時間のかかる抽出、多量の溶媒および長い分析時間を必要とするという欠点を有します。したがって、データの品質と堅牢性を維持しながら、解析方法を単純化し、高速化することが必要なステップと考えられます。 トリアシルグリセロール (TAG) は食用油の化学成分の90%以上を占めています。脂肪酸の発現が植物特異的であるため、TAG組成物は、油の種類ごとに固有です。したがって、TAGの 「フィンガープリント」 は、TAGの発現および比率が脂肪酸の存在量を反映しているため、油の型別に極めて有用です。ここでは、 EVOO偽装の問題に取り組むための簡単で強力な分析方法を提案しました。ヒマワリ油を混入物の例として用いました。分析ワークフローの3つの重要なステップは以下の通りです。 １）最小限の試料処理 ２）卓上型リニアモード専用機 MALDI-TOFMS(MALDI8030) を用いた正イオンモードによるTAGプロファイルの高速自動LDI (マトリックスフリー) 分析 ３）eMSTAT Solutionデータ解析ソフトウェアによる未知データの分類のための多変量解析と機械学習 EVOOへの5, 10及び20%量のひまわり油のスパイクによってEVOOの混入物処理をシミュレーションしました。

2022.02.17