帝人ファーマ 株式会社

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    低分子医薬品, バイオ医薬品

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    LCMS-2020, Open Solution

帝人ファーマ株式会社 竹内様に島津LCMSシステムに関するお話を伺いました。竹内様は島津製品を始め複数の分析機器をお使いになり,日々より効率的で質の高い分析結果を追求されています。

Customer

竹内 隆博様

生物医学総合研究所
骨・関節研究所 創薬化学研究部
分析グループ チームリーダー
竹内 隆博様

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

帝人ファーマ 株式会社
URL http://www.teijin-pharma.co.jp/

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インタビュー

島津LC/MS(LCMS-2020/LCMS-2010EV)の用途や主な分析条件についてお話いただけますか?

インタビュー写真1

創薬のための定性分析,化合物確認とその純度検定を目的として,合成研究者約40名と分析グループの6名が使っています。(島津の装置では)月に純度及び化合物分析で約1000化合物,その何倍かの化合物確認のための反応チェックを行っています。ルーチンの化合物確認では4.6mm i.d.x30mm,3μmのカラムを用いて約4.5分の測定をデュアルカラム方式で,また分離を重視した純度検定では4.6mm i.d.x100mmのカラムで約15分の測定をしています。

現在検討されているLCMS-2020による超高速分析メソッドはどのようなものですか?

数多く市販されているサブ2μmのカラムのうち,サイズが2.1mm i.d.x50mmのもので0.4mL/分の流速を用いて検討しています。ほとんどの対象化合物はポジティブのスキャンモードで測定可能です。約15分の分離を重視した純度検定用メソッドを分離の質を保持しながらルーチン分析程度の時間(4.5分)に短縮するための検討をしています。低分子化合物なので測定質量範囲は160-950,スキャン速度は1スキャン0.2-0.3秒です。

これまでも島津LCMS-2010EVをお使いいただいていますが,新製品のLCMS-2020をお使いいただくときに期待されていたことは何ですか?また結果はいかがでしたでしょうか?

速いスキャン速度と,プローブの形状の違いによるイオン化効率の向上,つまりは高感度化を期待しています。またUFLCによる高速化を目指して検討しています。プローブの形状が変更になり,イオン化の状態が違うので,以前M+1で検出できなかった化合物も検出できていて,感度は確実に上がっていると思います。高速化は実際に短くできることは検証できていますが,カラムによって分離が違うので,まずは最適なカラムの選択をするため御社にお願いして,さらにデッドボリューム等を小さくしていただいた効果を検証しています。この対策で更に分離効率が上がっていけばと思っています。

その他LCMS-2010EVに比べて良くなった点,優れた点はありますか?

インタビュー写真2

ソフトウエア(LCMSsolution)は確実に以前より使い勝手が良くなっています。データブラウザの機能が強化されていて,LCMS-2010EVでPDA解析の
機能にあった手動波形処理を2020ではMS解析にも追加してありました。また,ピークに対してグラフィックでこういう処理をしたいという機能が選択でき,結果もちゃんとその場で反映して画面上で見えるので使い勝手が良いと思います。さらに,プローブの位置調整がLCMS-2010EVとは明らかに変わっていて使い易くなりました。以前は2点調整だったので上下と左右のずれが生じてうまく合わないときがあったのですが,今は1点なのでどちらかに動かせば必ず合うという形になっていて,それはプローブ構造が改善されたのと合わせて良くなった点だと思います。また目盛りがついているので位置調整の目安がわかり易いです。

ありがとうございます。では逆に開発や改善を期待されることをお話いただけますか?

インタビュー写真3

もう少しMSをコンパクトにしていただけると良いと思います。世の中として現在は,あのサイズだと思うのですが,更に台数を増やすとなると今のサイズでも大きいですね。機能を絞るなり何なりしてもっと小さくなるとありがたいです。例えば我々の部署ではネガティブはほとんど取りませんし,APCIでないと取れないというものもそんなに無いので,完全にESIポジティブだけにしてターボポンプも小型化するとか。LC部分もノートパソコンサイズ程度になるとか,そこまでいったら良いですね。ソフトウエアに関しては追加された機能で良いと思うのですが,現在の画面表示だと便利になった反面,1画面上にたくさんの機能表示があるので,良く使う機能が前面に出てくる,たとえばPDAのメソッドを組むメニューにある詳細と簡易型のページが切り替えられる,もしくは自分でカスタマイズできるとより見やすくなります。それからメソッドをダウンロードしただけでPDAやMSの通信状態がリアルタイムでモニター用にプロットできると良いですね。LCMS-2020ではLCMSsolutionnからLCポンプやPDAやカラムオーブンの制御が個別にできるようになったのですが,PsiPortからでもこの機能が使えると良いですね。それから連続分析のときに,メソッドではなくて簡単に1分とか最初の平衡化が入れられると便利です。例えばバッチを組むときにその項目が出てきて,平衡化を入れる場合は1を選ぶ,入れない場合は0を選ぶとか。

ソフトウエアの開発担当者に伝えます。そのように具体的に言っていただけると彼らもイメージが湧きやすくなるので助かります。ではProminenceUFLCの優れた点やベネフィットがあればお伺いできますか?

高速化が可能であることと,ラインナップがいくつかあるので自分の目的に合ったものを選べるということです。高速化にはデッドボリュームを減らすことが大事ですが,通常モードでも使いたいという要望もあるので,Prominenceでは中間的仕様もあり,高速仕様もありと,選べるところが非常に良いと思います。連続分析では,ProminenceUFLCはインジェクション時間がとても短いですから他社と比べても速くて良いと思っています。実際に分離を重視した超高速の5分分析であれば10サンプル連続分析するのに50数分で分析が終了するので,他社よりもトータルで10分くらい時間短縮できます。

ありがとうございます。では逆に改善を期待するところ,更に向上させたいところはありますか?

終夜で100本とかたくさんのサンプルを測るときにはラックチェンジャを使うのですが,ラックチェンジャを使わない状態に切り替えるときにダミーが入っているのでそれを抜く作業が入ります。1分くらいかかるのと,それに伴う切り替え設定作業がちょっと使い勝手が悪いところです*)。それと製品としてはあるというお話なので試してみたいと思っているのですが,デュアルカラム方式を超高速で使いたいと思っています。さらに消耗品関係を強化していただけるといいです。

*) 2009年1月にオートサンプラSIL-20Aシリーズのファームウェアバージョンアップにより,LC,LCMSsolutionより制御いただいている場合には,ラックチェンジャでの分析後に速やかに通常のラックによる分析を行っていただける機能を追加しました。 なお,本ファームウェアは無償提供していますので,弊社担当営業までご連絡ください。

LCの開発担当者に伝えます。ところでMS以外の検出器も同時にお使いになることはありますか?またあったらいいなという技術や製品はありますか?

インタビュー写真4

UV吸収の無い化合物ではコロナCAD検出器を使います。以前LCMS-2010EVを使って検証したことがあり,良い結果が出ています。最近では更に感度が高いというエアロゾルベース検出器があるらしいのでそのあたりを検証してみたいと思っています。それから最近創薬でも光学分割をすることが多くなってきているので,測定しただけで光学比率がわかる装置の,小さいユニットのものがあれば良いと思います。

小さくてオンラインモニターのようなイメージ,面白いですね。ところで,GC,GC/MS,LCをお使いの方でも,LC/MSをまだお使いになってらっしゃらない方もいらっしゃいます。GC/MSと比べてLC/MSの有用性というのをどのようにお考えになりますか?

LC/MSはイオン化するものであればほとんど出てしまうのでGC/MSほど条件に厳しくなく,逆にマイルドな測定方法としてGC/MSより使い勝手が良いのではないかと思っています。ただ分子量が180以下というのはLC/MSの弱い部分であると思うので,その範囲の化合物やイオン化しない化合物を取りたい場合はGC/MSを使われればいいと思います。フラグメントを知りたければGC/MSだと思いますがLC/MSでも電圧を上げていくことで強制的にフラグメントを検出できます。その点ではLCMS-2010EVよりもLCMS-2020のほうが条件を変えたときに結果に違いがはっきりと現れるので,その辺もLCMS-2020がより良くなっている点かなと思います。

こちらでは生体中のアミノ酸などは分析されないと思うのですが,最近はCE/MSの代わりに,誘導体化は必要だけれど測定が安定・簡単ということでアミノ酸や有機酸など内因性低分子をGC/MSで測る方がいらっしゃいます。GC/MSの歴史はLC/MSより古いのですが,製薬関係の方には逆にGC/MSが新たな発見モードみたいな感じですが,このあたりはいかがですか?

インタビュー写真5

自社でも,合成品の修飾,官能基としてつける低分子の測定を行なうということがあります。このような低分子の測定は,LC/MSと完全に使い分けてGC/MSで測っています。LC/MSの弱いところをGC/MSで補っているという使い分けをしています。

メンテナンスはどの程度の内容を実施されていますか?

インタビュー写真6

保守契約に入っていますので,MSの感度が落ちてきたときに,自分達でプローブ交換やMS入り口付近の洗浄をするくらいです。LCMS-2020では,そのあたりの操作性も簡単になりました。プローブ交換等は他社と比べて一番簡単ではないでしょうか。

シングルMSは,ユーザーにとってツールであるというのを感じておりましたので,LCMS-2020ではお客様に行っていただく交換作業をなるべく簡単にしようと工夫しました。保守作業をさせていただいている,島津のサービスに対するご意見・ご要望がありましたらお聞かせください。

年間サポートに入っているので非常に早く来ていただき対応してもらっていますが,LC/MSは良いのですがIT-TOFの場合はもう少しサービスの方の人数を増やしていただけるとありがたいです。それと,たくさん出ている装置ではないせいか,部品等の手配で時間がかかってしまうことがあります*)。シングルMSの場合には当日か翌日にはなんらかのレスポンスをいただけるので非常に助かっています。

*) 万が一の故障時にもお客様のご負担を軽減できるよう,保守サービスの向上に取り組んでいます。

装置によって差が大きいですね。必ずお伝えして善処させていただきます。最後に,分析機器業界全体に対してのご意見やご要望はございますか?

インタビュー写真7

ユーザーとしては,新製品をご紹介いただくときに,持ち味など良いところはわかるのですが,同じような機能を持っている他のものと比べてどうなのかというような情報をもっといただけると助かります。ハードですとなかなか難しいと思いますのでカラムや消耗品などでも比較検討されたデータがあると導入するときに判断基準のひとつとなります。公開できない場合はその場で見せていただくだけでも良いです。理屈だけではわからないような違いや,各々の優れた部分を知りたいと思います。その上でなぜなのだろうという疑問に答えていただけるとありがたい。ぜひお願いします。

わかりました。今日はメーカーとして持ち帰るべき内容がたくさんありました。貴重なご意見どうもありがとうございました。

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液体クロマトグラフ質量分析計 開発秘話

LCMS-2020 超高速正負極性切替

LCMS-2020

超高速LCにベストマッチのMS検出器とするため,超高速正負極性切替が,LCMS-2020性能のポイントのひとつであり,また15msecでの極性切替の実現は開発者が最も苦労した点のひとつでもあります。このような超高速切替には,半導体リレーでの実績がありますが,LC/MSがユーザ様にとり「Work Horse」「毎日24時間毎週7日稼動させるツール」になっていることを考慮し,半導体リレーよりも長期安定なリレーを開発しました。