粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
12 水銀圧入法で注意すべき項目

水銀圧入法は、原理上の仮定が単純で、かつ広い範囲で細孔分布が得られることから、さまざまな分野で利用されています。しかしながら、以下に挙げる問題点や注意点も理解しておく必要があります。

(1) 細孔形状
円筒細孔をモデルとすることが普通です。しかし、実際の細孔は単純に円筒形であることは殆どありません。細孔形状は時に、ヒステリシス(昇圧と降圧プロセスの履歴)と密接に関連付けられます。このことから逆にヒステリシスから細孔形状を解析しようとする手法も考えられています。

 
(2) 特殊な雰囲気(高圧)
4000気圧以上という高圧になるため、試料・試料セル・水銀・測定室などがいろいろな影響を受けやすくなります。具体的には、高圧による圧縮変形、断熱圧縮による温度上昇(またはこれに伴う体積膨張)、比誘電率の変化などです。これらをどのように補正するかが問題になります。特に水銀侵入量が比較的少ない場合には注意が必要です。

 
(3) 接触角・表面張力
これらの物性値は一定値として扱われるのが普通です。よく使われる値は、接触角が130~140°、表面張力が480~490mN/mです。特に接触角は、130°と140°で、同一圧力による細孔直径が計算上15%以上異なりますので注意が必要です。
 
(4) 空隙の評価
原理上、空隙(試料間の隙間や、試料と試料容器の隙間)と、試料の細孔との区別ができません。これを識別するには、試料の形状や粒度分布などの物性が必要になります。
 
(5) 安全性
水銀の取り扱いには充分な注意が必要になります。弊社の装置では、水銀注入の簡便さ以外に、大型トレイの設置、装置前面の空気吸引機構他の安全対策が施されています。しかし、万一のために、床の選定、換気設備、ドラフトチャンバの設置や届け、作業主任者の任命等は必要条件です。
 
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