ICP質量分析計による元素の一斉分析例解説と関連情報

ミネラルは,タンパク質,炭水化物(糖質),脂質,ビタミンと並ぶ5大栄養素の一つと数えられ,体内で作ることはできないため,食事から摂る必要があります。ミネラルは体液量や酸・アルカリ度の調整,筋肉や神経の働きの調整にも欠かせず,その他にもビタミンと同様に,炭水化物やタンパク質,脂質などにも深く関わっています。ミネラルの過剰摂取は人体に悪影響を及ぼしますが,現代社会の食生活ではミネラルが不足する傾向があり,サプリメントも普及しています。ミネラルの分析には,原子吸光分光光度計,ICP発光分光分析装置,ICP質量分析計などが用いられています。

ICP質量分析計による元素の一斉分析例

ICPMS-2040/2050

粉ミルクには乳幼児の成長に必要なミネラル分がバランス良く配合されています。健康増進法に基づき,特別用途食品(乳児用調整粉乳)として,カルシウムや鉄,銅などの必須ミネラル分の配合が定められており,さらに表示が義務付けられています。ここでは,ICP-MS を用いたミルク粉末(NMIJ 認証標準物質)中の元素の一斉分析例を紹介します。

ミルク粉末認証標準物質(NMIJ CRM 7512-a)の分析結果

  単位 分析値 (粉末中) NMIJ 認証値 拡張不確かさ 添加回収率 %
Ca g/kg 8.5 8.65 0.38 -
Fe 0.102 0.104 0.007 -
K 8.3 8.41 0.33 -
Mg 0.82 0.819 0.024 -
Na 1.81 1.87 0.09 -
P 5.4 5.62 0.23 -
Mn mg/kg 0.91 0.931 0.032 -
Mo 0.230 0.223 0.012 -
Sr 5.7 5.88 0.20 -
Zn 41 41.3 1.4 -
Cd <0.005 - - 100
Cr <0.06 - - 101
Pb <0.03 - - 100
As <0.03 - - 108

添加回収率(%)=(添加回収試験試料分析値ー分析値)/添加濃度×100