排水中のPFAS多成分一斉分析

PFASは便利な機能を有するため、様々な部品のコーティング剤などにも使用されています。製造ラインの過程にPFASが使用されている場合、工場から排出される水を管理せずに環境中に放出すると環境汚染の原因になるため、工場排水中にPFASが排出されていないか管理することが推奨されます。
国外における規制では、水道水や飲料水の他、工場排水などの非飲料水を対象とした試験法が開発されています。

工場排水に含まれるPFASの分析
EPA Method 1633

米国環境保護庁(EPA; Environmental Protection Agency) では、トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計 (LC-MS/MS)を用いた環境サンプル中のPFASの測定に関して、標準メソッドを提供しています。EPA Method 1633は、水中、固体中、汚泥中、生体組織中のPFASを定量するものです。ここではEPA Method 1633を参照したLCMS-8050による工場排水中のPFAS分析についてご紹介します。
EPA Method 1633で規定されている測定対象化合物は、Native化合物40種類、抽出内部標準物質 (Extracted Internal Standards; EIS) 23種類、非抽出内部標準物質 (Non-extracted Internal Standards; NIS)7種類であり、多成分の一斉分析が必要です。
環境試料中のPFASにおいて、LCMS-8050を用いることで、十分な品質管理、妥当性確認項目、および機器パフォーマンスを満たすことを確認しました。

検量線最下点濃度におけるMRMクロマトグラム

EPA Method 1633で指定されている検量線範囲の最低濃度において、良好なピーク形状と分離が達成できました。

検量線最下点濃度におけるMRMクロマトグラム

工場排水への添加回収試験

EPA Method 1633でも採用されている固相抽出法により、精製水サンプルと排水サンプルを測定しました。精製水サンプルでは、D5-NEtFOSA を除くすべての化合物で回収率は50 – 150%となりました。排水におけるEISの回収率は全ての化合物で精製水と比べるとやや低い結果となりましたが、両サンプルにおけるEISの回収率は、EPA Method 1633で報告されている許容範囲内となりました。
また、検量線最小濃度での添加濃度にも関わらず、3:3 FTCA を除くすべての化合物で、精製水・排水サンプルともに回収率と再現性 (%RSD) は、環境試料で許容できるとされる値を満たしていました。

工場排水への添加回収試験

アプリケーションニュース「Analysis of Per-and Polyfluoroalkyl Substances(PFAS) using the LCMS-8050 Triple Quadrupole Mass Spectrometer According to EPA Draft Method 1633(英語)」は
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