味の評価

アミノ酸、有機酸、糖、油脂などの栄養成分はうま味、甘味、苦味、酸味があり、その種類や割合により食品の味を大きく左右します。
また各種ポリフェノールやカテキン類などは苦味、渋味があり味の重要な要素であるだけでなく、
抗酸化作用や代謝促進作用などの機能性成分としても広く知られています。

更に近年では、各成分それぞれを対象とするだけでは無く、アミノ酸、有機酸、糖などの一次代謝物が
複合的に食品の味や香りなどに広くかかわることから、
代謝物を網羅的に解析するフードメタボロミクスの手法を食品開発や品質管理に応用する動きが進んでいます。

用いられる分析機器の一例

高速液体クロマトグラフ

ガスクロマトグラフ

栄養・機能性成分毎の定量測定
  • アミノ酸
  • 有機酸
  • 油脂 など

複数項目の網羅的測定
  • 多成分同時測定
  • フードメタボロミクス解析

用いられる分析機器の一例

各種質量分析計

栄養成分の定量測定

アミノ酸:液体クロマトグラフ

アミノ酸はタンパク質の合成最小単位の成分ですが、うま味成分として知られるグルタミン酸をはじめ、多くのアミノ酸が呈味成分と知られています。また最近は、アミノ酸のもつ各種の生理活性にも注目が集まり、栄養・機能性食品としても摂取されています。
ここでは、液体クロマトグラフのオートサンプラーの自動前処理機能を用いプレカラム誘導体化法アミノ酸分析の例をご紹介します。
プレカラム誘導体化作業を自動化・省力化するとともに、高い精度の測定が可能になります。

Nexera
(プレカラムアミノ酸分析)

Nexeraポストカラム
アミノ酸分析システム

HPLC-蛍光検出器による自動前処理機能を用いた
プレカラム誘導体化アミノ酸の定量

有機酸

食品に含まれる有機酸は、酸味やうま味などおいしさを構成する重要な成分であり、また、最近では消化促進、抗菌効果などでも話題となっています。HPLC による有機酸分析は分離モードだけでなく、検出法も複数の選択肢があります。
ここではイオン排除カラム Shim-pack Fast-OA とポストカラム pH 緩衝化電気伝導度検出法を用いることで、迅速かつ選択性の良い分析例を紹介します。

Nexera
有機酸分析システム

有機酸高速分析カラムShim-pack Fast-OA
による発酵モニタリング

糖尿病や肥満、アレルギー、認知症などを引き起こす要因に糖質が関係することが明らかになっています。これらの予防、治療に糖質制限が有効とされています。糖質制限で見落としがちなものに調味料があります。実際、調味料の中には多くの糖質が含まれているものがあります。測定対象や目的により、様々な糖の測定手法があります。ここでは、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で糖15成分を分離し、ELSD-LT Ⅲで検出した例をご紹介します。

蒸発光散乱検出器
ELSD-LT Ⅲ

Nexera
還元糖分析システム

調味料中の塩分による定量妨害を受けない
単糖、二糖およびオリゴ糖15成分の一斉分析

油脂

肉や魚は、味覚成分に加え、元来化学的な味は存在しない脂肪組織の成分である油脂がまろやかな口あたりによっておいしさを引き立てています。また油脂は、食物にサクッとした食感を与えたり、空気を細かい気泡として抱き込んでクリーミーな食感を生んだり、食品の物理的構造に重要な働きをしています。ここでは、ガスクロマトグラフを用いた魚油中の脂肪酸メチルエステルの分析例をご紹介します。脂肪酸は、おいしさを引き立てる以外にも、魚に含まれるEPA やDHA などは、機能性成分としても知られています。

ガスクロマトグラフ
Nexis GC-2030

魚油中の脂肪酸分析

硫黄成分

ビール中の揮発性硫黄化合物は製造工程、製造後の保存方法等により生成され、ビールの風味に影響を及ぼします。また、品質を悪化させるオフフレーバの原因成分となることもあります。しかし硫黄化合物は非常に閾値が低く低濃度でも品質に影響を与えるため、濃縮等の前処理や高感度分析が必要となります。 ここではでは、硫黄化合物の選択的検出器である化学発光硫黄検出器(SCD)およびヘッドスペースサンプラを用いて、市販の 3 種類のビール中の揮発性硫黄化合物の分析を行いました。 SCDは硫黄成分を測定するGC検出器の中で最も高感度な検出器ですが、制御が必要なユニットが多く分析可能な状態にするまで複雑な手順が必要でした。Nexis SCD-2030は充実した自動化機能を備えており、分析までの準備をワンタッチで行うことが可能です。

Nexis SCD-2030+HS-20

3種類のビールのクロマトグラム

多成分の複合的な評価

味に寄与する成分の探索/フードメタボロミクス解析

食品の味に寄与する成分は非常に多く、またどのような成分が含まれているか、ということだけでなく各成分の割合も味に大きな影響を与えます。高選択性、高感度な質量分析計を用いることで食品分析において重要であるアミノ酸、有機酸、糖、脂質等、複数項目の多成分一斉分析が可能です。対象成分や分析の目的に応じた各種質量分析計の測定条件やデータベースを用いた測定例をご紹介します。

GC-MS/MSによるビール分析例

LC-MS/MSによるビール分析例

【 GC-MS(/MS) 】

  • 数百成分の網羅的測定が可能
  • 高分離、豊富なデータベースから定性が可能
  • 揮発性、低分子化合物を中心に香気成分・代謝成分の測定が可能

【 LC-MS(/MS) 】

  • 数百成分の網羅的測定が可能
  • GC-MS(/MS)では難しい高分子化合物、親水性化合物、
    不揮発性代謝物などの測定も可能

【フードメタボロミクスとは?】

近年、生体中の代謝物を網羅的に解析するメタボロミクスという技術に注目が集まっています。メタボロミクスとは、細胞の活動によって生じるアミノ酸や有機酸などの低分子代謝物を網羅的に解析し複数の試料群における差異を明らかにする学術分野です。このメタボロミクスの技術を食品に応用したものを「フードメタボロミクス」と言い、食品の品質鑑定や品質予測、製造・保管工程の改善、機能性の評価など様々な目的に利用されています。メタボロミクスで取り扱うデータは、「多次元×多次元」のデータで、複雑すぎるため人間では解析が困難です。そこで大量のデータの中から有効な情報を取り出す統計的な手法、多変量解析が重要な情報を得るため威力を発揮します。

Metabolites Method Package Suite

2000以上にのぼる代謝物の網羅的分析における測定条件と膨大な質量分析データを自動で代謝マップに表示し、さまざまな解析を行える代謝工学向けのマルチオミクス解析パッケージが含まれており、この製品一つで幅広い物性の代謝物を網羅的に解析することができます。

2000以上の代謝物を網羅的に分析できる各種測定条件

さまざまな解析を行うことができるマスチオミクス解析パッケージ

【ビールの分析例】

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