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    KRATOS ULTRA2 (英国名AXIS Supra+) - 特長

    イメージングX線光電子分析装置

    ラージエリア高感度XPS

    光電子捕集効率の高い電子光学系により、格段に優れたラージエリア分析性能を実現しました。ラージエリア測定時の感度とエネルギー分解能の高さは、他に類を見ません。通常のエネルギースキャン測定に加え、128チャンネルディレイライン検出器(DLD)による高速なアンスキャンスナップショットモードを使用すると、1秒以下でスペクトルを測定することが可能です。

    • 軽元素の検出が容易
    • 微量元素でも高いS/N比
    • 高速データ測定
    • 2つの測定モード:エネルギースキャンとスナップショット

    高いエネルギー分解能

    Si 2pスペクトル

    Si 2pスペクトル
    高エネルギー分解能ラージエリア測定
    Si 基板上の自然酸化物

    XPS装置に求められる重要で基本的な性能は、高いエネルギー分解能です。高いエネルギー分解能は、ごくわずかなケミカルシフトを精確に測定するために必須の条件です。
    それには、光電子ピークの幅を可能な限り狭く保つことができる高性能なシステムが必要とされます。
    KRATOS ULTRA2は、500 mm のローランド径を持つモノクロAl KαX 線源と、最適化された電子光学系を有し、高い化学状態分析能力を有します。

     

    高エネルギー分解能がもたらす利点

    • ケミカルシフトの解析における曖昧さの回避
    • 絶縁体試料および導電体試料のエネルギー分解能が保証される

    スモールエリア分析

    微小部測定位置は、インプットレンズによって試料上に形成されたバーチャルプローブを使用して定義されます。分析エリアサイズは、静電レンズカラムに組み込まれた自動アパーチャーと自動アイリスによりコントロールされます。微小部測定スペクトルは、モノクロX線源とアクロマティックX線源のいずれでも測定することが可能です。

    27μmエリアサーベイ微小部分析の位置決めに使用したXPSイメージ

    27 µmエリアサーベイ微小部分析の位置決めに使用したXPSイメージ

    高速パラレルイメージング

    • XPS イメージングを使うことで、物質表面の元素ないしは化学状態の2 次元分布を知ることが可能です。
      KRATOS ULTRA2はパラレルイメージング方式を採用し、短時間で空間分解能の高い光電子イメージを得ることができる装置です。
      パラレルイメージングは非走査投影型イメージングであり、ビームラスター方式に比べて大幅に高速です。さらに、非常に高い空間分解能を有します。
      また、パラレルイメージングを試料ステージ移動と組み合わせることにより、"イメージスティッチング" を行うことができます。
      これにより、数マイクロメートルの空間分解能を持つ数ミリメートルサイズのイメージを測定することが可能となります。

       

      パラレルイメージングの特長

      • 最高空間分解能1 µm
      • 高いエネルギー分解能を利用した化学状態イメージング
      • 定量イメージング:
        独自の球面鏡アナライザーとディレイラインディテクターによる、定量性の高い化学状態イメージ
      • スペクトロマイクロスコピー:
        イメージの各画素からスペクトルを抽出
    • 定量イメージ

      定量イメージ:
      カラースケールは表面に存在する元素の
      相対濃度を示しています。

    ESCApe ソフトウェア

    ESCApe ソフトウェア

     

    測定からデータ処理までを一つのソフトウェアでコントロールします。可能な限りシンプルに設計したユーザーインターフェースを採用し、ハードウェアが持つオートメーション機能の性能を最大限に引き出します。

     

    機能の一例:グループアレイ分析

    この機能は、微小部のイメージングではなく、比較的広い範囲の組成分布を調べるのに有効です。ユーザーは、測定したい範囲を光学像の上でドラッグして指定し、ソフトウェアにビルトインされた分析条件を選択して測定を開始するだけです。
    自動ピーク定性・自動定量機能により、検出された元素の組成分布が簡単に生成されます。
    光学像上に各元素の組成分布をカラーイメージで重ね描きすることで、元素の偏析を定量的にヴィジュアライズすることが可能です。

    機能の一例:グループアレイ分析

     

     

    グラファイト基板上の銅ナノ粒子の不均一分布をグループアレイ分析したもの

    グラファイト基板上の銅ナノ粒子の不均一分布をグループアレイ分析したもの。
    カラースケールは元素の相対濃度を示す。

    レンズ・アナライザー・ディテクター

    レンズ・アナライザー

     

    • 球面鏡アナライザーと静電半球アナライザー
      イメージングとスペクトロスコピーそれぞれに専用のアナライザーを備えています。高速で空間分解能の高いパラレルイメージングと、マクロ分析でも高いエネルギー分解能を実現するシステムです。イメージング空間分解能は、1マイクロメートルに達しました。
    • ディレイラインディテクター
      100以上のチャンネルを備える高感度2次元検出器により、精細なXPSイメージングに加え、高速なスナップショットスペクトル測定が可能です。
       
    • 磁場レンズ
      光電子捕集効率の高い磁場レンズは、微小部領域の測定感度向上に貢献します。
       
    • 帯電中和機構
      磁場を利用した効率の高い帯電補正機構により、絶縁物測定も容易です。
       
    • マルチテクニック対応
      AES、ISS、SIMS その他様々な分析手法に対応する柔軟性を備えています。さらに、豊富な試料調整機構オプションにより、あらゆる実験ニーズにマッチします。
       

     

    帯電中和機構 - 高効率・低ダメージ

    • 磁場を利用した効率の高い帯電中和機構

      中和のための電子を効率よく測定領域へ運ぶシステムです。
      低エネルギー電子のみを使用するため、試料へのダメージを極限まで抑えることが可能です。

      PET試料のC1sピーク
    • 磁場を利用した効率の高い帯電中和機構

    大型モノクロメーター

    大型モノクロメーター

     

     
    Ag 3d5/2 スペクトル

     

    • マクロ分析における高エネルギー分解能測定
      Rowland円直径500 mmの大型モノクロメーターを採用したX線源です。マクロ領域測定の感度とエネルギー分解能を最大限に高め、さらにマイクロ分析時の性能もアップしました。
       
    • フラックス密度を抑えた照射方式
      X線による分析試料へのダメージを低減する照射方式です。
       
    • フルコンピューターコントロール
      X 線銃から回折結晶まで、すべての駆動軸はコンピューター制御です。
      ブロードスポットからスモールスポットまで、用途に合わせてワンクリックでスポットサイズを選択することができます。オプションのAg/Alデュアルアノードモノクロメーターもアノード切り替えは自動です。実験室で簡単に高エネルギーXPS分析を行うことが可能です。
      リモートメンテナンスによる保守やチューニングにも対応します。

    拡張性

    スパッタイオン源

    KRATOS ULTRA2+ は、Minibeam 4 高性能Ar+ 単原子イオン源もしくはMinibeam 6(Arn+)ガスクラスターイオン源(GCIS)を搭載します。どちらのイオン源もESCApeソフトウェアに完全に統合され、スパッタクリーニングおよびデプスプロファイリングを全自動で行うことが可能です。ガス導入・排気制御システムもソフトウェアから制御されます。
    Minibeam 6 はマルチモードイオン源であり、必要に応じてArn+クラスターモードとAr+/He+ 単原子イオンモードを切り替えることが可能です。ガスクラスターイオン源は、化学的情報に大きなダメージを与えることなくスパッタリングを行うことができるため、有機物のデプスプロファイリングに新たな可能性を開きました。

    今では、有機LED やフレキシブル電子デバイスなどの複合多層物質のデプスプロファイリングが、Arn+クラスターイオンを用いて広く行われています。
    また、Minibeam 6 は20 keV のArn+クラスターイオンを生成することができるため、酸化チタンなどの無機材料に対しても、与えるダメージを極力抑えながら実用的なスパッタリングレートでのエッチングを可能とします。クラスターイオンデプスプロファイリングが不要な場合は、Minibeam 4 イオン源が搭載されます。
    このイオン源は、ビームエネルギーが500 eV から4 keV の間で連続可変であり、低エネルギーでのイオンフラックスが高く、高いスパッタリングレートと深さ分解能を両立します。

    * 単原子イオン源とガスクラスターイオン源の2 つの選択肢
    * ガス導入および圧力調整は全自動制御
    * どちらのイオン源もISS(イオン散乱分光:オプション)モード用He+ イオンに対応

     

    sample

    20 keV Ar500+イオンによるPZT/Pt/TiO2/SiO2/Si 多層膜試料の深さ方向分析。
    スパッタデプスプロファイルサーベイスペクトル(左)およびエッチング時間に対する元素濃度(右)

    マルチテクニック

    XPS 用励起源として、Al/MgアクロマティックX 線源および高エネルギーAg LαモノクロX 線源を追加することが可能です。また、紫外光電子分光(UPS)用のヘリウムUV光源も搭載可能です。
    さらに、フィールドエミッション電子銃を追加することで、オージェ電子分光(AES)、スキャニングオージェ電子顕微鏡法(SAM)および2 次電子顕微鏡法(SEM)に対応します。これらのすべてのオプション分光手法は、XPS の性能を損なうことなく追加可能であり、加えて、いずれもXPSと同じ位置で分析を行うた
    め、試料の多角的な解析を実現します。

    試料前処理および試料表面加工のためのオプションは、Flexi-lockと呼ばれる試料導入室に搭載することが可能です。試料加熱冷却機構、エアセンシティブサンプルトランスポーター、ブロードスポットイオン源、結晶へき開装置、グローブボックスなどを用意しています。さらに、必要に応じて、表面科学実験のための第3のUHVチャンバーを追加することも可能です。このチャンバーには、マニュアルステージや、低エネルギー電子線回折(LEED)、逆光電子分光(IPES)および四重極2次イオン質量分析(SIMS)などのオプション分析手法を搭載することが可能です。

    sample

    多層薄膜試料(提供:IMEC)から得られたSi 2pスペクトル。
    (A)モノクロAl Kα励起、(B)モノクロAg Lα励起。
    Ag Lα励起のSi 2pスペクトルは情報深さが大きいためSi 基材からの信号の寄与が大きい。

    sample