MDGC/GCMS-2010シリーズ - アプリケーション
マルチディメンジョナルGC/GCMSシステム
分析アプリケーションデータ
G253 マルチディメンジョナルGC システムのご紹介(PDF,97kB)
<内容紹介>
石油精製品,香料,環境試料など,組成の複雑な試料中に含まれる微量成分を精度良く分析することは,簡単ではありません。 目的成分と夾雑成分との完全な分離が難しいためです。 従来は,試料前処理の検討,分離カラムの検討,選択的検出器の検討などを行い,時間をかけて解決策を探してきました。 しかし,最近では比較的簡便に高分離を実現できる,マルチディメンジョナルGC(Multidimensional GC:MDGC)システムを用いることで,前述のような試料に含まれる微量な成分でも,高精度に分析できるようになってきました。 MDGCシステムは2種類のカラムを組み合わせ,1段目のカラムで分離できなかったフラクションをハートカットし,性質の異なる2段目のカラムに導入してさらに詳しく分離を行うシステムです。 本アプリケーションニュースでは,MDGCシステムについてご紹介します。
MDGC/GCMS-2010シリーズでの測定例をご紹介します。
石油分析 -ガソリン中含酸素成分の一斉分析-
ガソリンは多くの炭化水素のピークが溶出するため,近年添加されるようになったアルコールなどの含酸素化合物をGC-FIDで完全分離するのは困難です。 MDGC分析により分離を改善することで従来はFIDでは分離定量が困難であった成分の分析が可能になります。
ASTM D 4815-99*に記載される13成分を対象とした分析例
1stGCのクロマトグラム
赤字で示した成分の分離が不十分
黒
レギュラーガソリン+含酸素成分
ピンク
レギュラーガソリンのみ
(含酸素成分なし)
2ndGCのクロマトグラム
分離が大幅に改善
黒
レギュラーガソリン+含酸素成分
ピンク
レギュラーガソリンのみ
(含酸素成分なし)
* Standard Test Method for Determination of MTBE,ETBE,TAME,DIPE, tertialy-Amyl Alchhol and C1 to C4 Alcohols in Gasoline by Gas Chromatography
香料分析 -精油中の光学的異性体-
精油(エッセンシャルオイル)は,植物から採取される強い匂いの揮発性油で,香水やアロマセラピーなどに用いられます。精油中には,多くの光学的異性体*を含んでおり,光学的異性体は匂いに関する性質が異なる場合が多いといわれています。
ここでは,マルチディメンジョナルGCシステムによる柑橘系精油であるベルガモットオイル中の光学的異性体の分離分析例をご紹介します。
1stカラムによる分離
2ndカラムによる分離
この分析例では,1stカラムに微極性キャピラリカラム,2ndカラムに光学的異性体の分離可能なキャピラリカラムを用いています。 Fig.1は1stカラムのみで分析したクロマトグラム(ハートカット無し)で,8種類の光学的異性体が確認されています。 Fig.2は,更に8種類の光学的異性体をハートカットし,2ndカラムに導入したクロマトグラムです。 Pinene(ピネン)以外の7種類の光学的異性体が2ndカラムで良好に分離できていることが判ります。 一般的には,ピーク7の(+)-limonene(d-リモネン)は,柑橘系特有の匂いに関連する成分として知られています。
また,各光学的異性体のピーク面積より,各光学的異性体の比率を知ることができ,天然物に近い匂いを他の合成法で再現する時の参考情報となります。
* 光学的異性体
同じ化学式を持つが構造が異なり,その立体的な配置が対掌関係(手のひらの右と左の関係)化合物をいいます。 光学的性質,匂いなどに違いがあります。
本アプリケーションデータは,Mondello先生(Messina大学,Chromareleont S.r.l.)のグループにより取得したものです。
Application data by Universita degli Studio di Messina
Prof. Luigi Mondello
Alessandro Casilli
Peter Quinto Tranchida