粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
15 BET理論、吸着パラメータCの意味
中級コースでご紹介したBET式、つまりBET理論についてもう少し詳しく解説します。 BET式は、相対圧P/P0をx、そのときの吸着量をVa、単分子層吸着量Vmとすると以下のように書くことができます。
数式1
実際の吸着等温線からxとVaと得て、横軸にx、縦軸にx/Va(1-x)としてプロットすれば、勾配が(C-1)/VmC、切片が1/VmCの直線を得ることができ、ここからをVmとCを決定できます。このグラフの事をBETプロットと呼びます。Vmがわかれば、分子占有断面積(窒素吸着で0.162nm2)を用いて比表面積Sを計算できます。
数式2
図
BETプロットと解析結果 (ここでは、VmQmVaQと表現しています)
 
BET式における吸着パラメータはCは非常に重要な数値です。Cは、吸着第1層と第2層以降の吸着熱の差を示すパラメータになります。C>2であれば等温線はII型もしくはIV型を示し、そうでなければIII型もしくはV型を示します。Cが大きければ大きいほど低圧部の曲線部分と中圧部の直線部分の境目が明確になります。この点はB点とも呼ばれ、単分子層吸着と多分子層吸着の変わり目を示しています。

窒素ガスを液体窒素温度で吸着させる場合、Cは50~300程度の値を取ることが多く、BETプロットにおける切片1/VmCは小さい値をとります。測定をより簡便にするために、この切片を0に近似する方法があります。切片が0ですから、一組の(相対圧x、吸着量Va)データのみで原点を通る直線を決定することができます。これがBET1点法と呼ばれる方法です。C>>1ゆえに、1/VmC≒0、C-1≒Cとすると、

数式3
となります。ここで求められるVmは、多点法で得られるものよりも原理上小さめです。
比表面積が500m2/g以上、Cが300以上もしくは負の値をとる時は、マイクロポアの存在が考えられます。このような場合、BET法による比表面積は真値を示しているとは言えなくなります。というのは、マイクロポアでの吸着現象と、BET法の多層吸着理論の仮定とは矛盾する点が多いからです。とはいえ、ガス吸着法によりマイクロポアの比表面積を正確に計算する手法は今のところ無いため、BET法による比表面積値が一般的には使用されています。
粉博士イラスト
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