粉博士のやさしい粉講座:実践コース

 

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実践コース:測り方疑問解決編
比表面積/細孔分布測定装置
6 細孔分布の表現法
細孔分布は、細孔の大きさとその体積の関係を示すものです。測定方式としては、マイクロポア~メソポアの領域ではガス吸着法が、メソポア~マクロポアの領域では水銀圧入法が、それぞれよく使用されます。いずれの方式であっても、細孔分布の表現方法は同じです。
  今、細孔は全て円筒形、細孔径は直径Dで表現するものと仮定します。
  表現方法の種類には、積算細孔容積分布、差分細孔容積分布、dV/dD (=微分)、dV/d(logD) (=Log微分)のいずれかです。細孔容積から細孔比表面積を求めて、同様に積算、差分、dA/dD、dA/d(logD)などの表現も可能です。以下に、これらの細孔分布の表現法について解説します。
 
1. 積算細孔容積分布
 積算細孔容積分布は、横軸に細孔径、縦軸に細孔容積ΣVをプロットします。(Fig.1)
  測定データの情報に最も近い形の細孔分布ということができます。言い換えれば仮定が最も少ない形といえます。前処理条件を含めた測定そのものの良否や、異なる試料間の微妙な差異についても、まず積算細孔容積分布から見るのが正しいアプローチです。
 Fig.1 積算細孔容積分布
Fig.1 積算細孔容積分布
2. 差分細孔容積分布、dV
 測定ポイント間の細孔容積の増加分を縦軸に取ったものが差分細孔容積分布です。
細孔容積の増加分は、後述する微分計算に不可欠ですし、区間ごとの表面積増加分の計算にも非常に重要です。ただ、測定ポイント間の差分値を単に縦軸に取っただけでは、Fig.2に示すように、傾向をつかみにくいグラフになります。
  これは測定ポイント間が等間隔でないことが影響しています。このため差分細孔容積のグラフはそれ単独で使用されることは稀です。 
 Fig.2 差分細孔容積分布
Fig.2 差分細孔容積分布 
3. Log微分細孔容積分布、dV/d(logD)
 広い範囲の細孔分布を表現するのに、最もよく利用されているのが、Log微分細孔容積分布、dV/d(logD)です。これは、差分細孔容積dVを、細孔径の対数扱いの差分値d(logD)で割った値を求め、これを各区間の平均細孔径に対してプロットしたものです。Fig.3に、積算細孔容積分布とdV/d(logD)を重ねて描いたものを示します。dV/d(logD)グラフは、細孔径2μm付近と0.02μm付近での積算細孔容積の変化を忠実に反映しています。
  言い換えれば、dV/d(logD)は、図上微分に最も近い形ということができます。
Fig.3 積算+dV/d(logD) 細孔容積分布
Fig.3 積算+dV/d(logD) 細孔容積分布
4. 微分細孔容積分布、dV/dD
  では、一般的に区間微分を表すdV/dDはどう扱うのでしょうか?Fig.3のデータで、dV/d(logD)をdV/dDに書き換えたものをFig.4に示します。
Fig.4 積算+dV/dD 細孔容積分布
Fig.4 積算+dV/dD 細孔容積分布
 dV/dDのグラフでは、2μm付近のピークが縮小され、逆に言うと0.02μm付近あるいはそれより小さい細孔径の領域が強調されています。
  計算式を見るとその理由は明らかです。以下にそれぞれの微分値の計算式を示します。
dV/dD=(V2-V1)/|D2-D1| (1)
dV/d(logD)=(V2-V1)/|(logD2-logD1)|=(V2-V1)/|(log(D2/D1)| (2)

例えば、細孔区間0.01~0.02μmと1~2μmを考えます。細孔径を対数目盛りで取っているグラフでは、この2つの区間はグラフ上で同じ長さになります。
(1) D2-D1=0.02-0.01=0.01μm、 D2-D1=2-1=1μm
(2) logD2-logD1=log(D2/D1)=log(0.02/0.01)=log2、log(2/1)=log2
ところが、(1)式、すなわちdV/dDでは分母に100倍の差が出ています。細孔径が小さい値になればなるほど、dV/dDの値が飛躍的に大きくなる傾向がわかります。
5. dV/d(logD)とdV/dDの使い分け
水銀圧入法のように、細孔測定範囲が広い測定法の場合、横軸を対数目盛りで、積算細孔容積分布とdV/d(logD)を用いるのが普通です。但し、ガス吸着法の場合などで、特に狭い範囲の細孔分布を見る場合には、横軸を線形目盛りで、積算細孔容積分布とdV/dDを用いると、見やすい分布の形になります。また後述する、比表面積を重視する場合、対数目盛りであっても意図的にdV/dDを使用することがあります。
6. 細孔比表面積分布
  円筒細孔の場合、細孔直径D、細孔の長さをLとすると、その体積V=πD2L/4、側面積A=πDLですからD=4V/A、もしくは A=4V/Dと表すことができます。
  2項で記載した差分細孔容積を考えます。ある測定区間(細孔径区間)での体積増加dVが、あるひとつの平均細孔径を有する円筒細孔によるものと仮定すれば、その区間で増加した比表面積は dA=4dV/Dav (Davは平均細孔径)と求めることができます。区間ごとの細孔表面積の差分値dAが求まれば、積算比表面積ΣAも計算でき、細孔容積と同様に細孔比表面積分布を得ることができます。


 ここで注意したいことは、(上記の導出過程で明らかですが、)細孔表面積分布は、細孔容積分布に比べて、細孔形状のファクタが非常に大きいということです。

7.dV/d(logD)とdV/dD、dA/d(logD)とdA/dDの関係と次元
  d(logD)/dD=1/Dですから
  dV/d(logD)=(dV/dD)*(dD/d(logD))=D*dV/dD
の関係があります。
  前項より、V=πD2L/4、側面積A=πDLとすると、
dV/dD=d(πD2L/4)/dD=πDL/2 面積の次元になります。(面積分布)
dV/d(logD)=D*dV/dD=πD2L/2 体積の次元になります。(体積分布)
dA/dD=d(πDL)/dD=πL 長さの次元になります。(長さ分布)
dA/d(logD)=D*dA/dD=πDL 面積の次元になります。(面積分布)
すなわち、dV/dDとdA/d(logD)が同じ面積の次元をもちます。実際に計算すればわかりますが、この2つのグラフは(縦軸のスケールを除き)殆ど同じ形になります。
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