消毒剤中有効成分の分析
消毒剤中有効成分の分析
新型コロナウイルスやインフルエンザの流行などにより,こまめに手指の消毒を行うことが習慣化しています。こうした手指消毒剤の多くはエタノールが主成分ですが,中には殺菌作用を有する成分を配合しているものもあります。また,すり傷や切り傷を負ったときに手軽に用いることができる市販の殺菌・消毒剤にも,殺菌作用を有する成分が配合されています。
ここでは,こうした市販消毒剤に含まれる有効成分のうち,クロルヘキシジン,ベンゼトニウム,ベンザルコニウムの3種類について,HPLCにより分析した例をご紹介します。
クロルヘキシジン,ベンゼトニウムの分析

Fig.1 二酢酸クロルヘキシジン(40 mg/L),塩化ベンゼトニウム(100 mg/L)混合標準溶液のクロマトグラム
クロルヘキシジンはグルコン酸塩や塩酸塩などとして,またベンゼトニウムは塩化物塩(塩化ベンゼトニウム)として広く用いられています。ここでは『衛生試験法・注解2005』に掲載されている逆相イオンペアクロマトグラフィーによるグルコン酸クロルヘキシジンの分析手法を参考にして,塩化ベンゼトニウムとの同時分析を試みました。
Fig.1に二酢酸クロルヘキシジンおよび塩化ベンゼトニウム標準混合液のクロマトグラムを示します。これら2成分は極大吸収波長が異なるため,クロマトグラムの途中で波長切り換えを行いました。

Fig.2 市販消毒剤のクロマトグラム
市販消毒剤のクロマトグラム
Fig.2に3種類の市販消毒剤(A~C)の分析例を示します。消毒剤Aは1/20,BとCは1/10に溶離液で希釈した後,10 μLを注入しました。
ベンザルコニウムの分析

Fig.3 陽イオン交換モードによる塩化ベンザルコニウム(C14,100 mg/L)標準溶液および市販消毒剤のクロマトグラム
ベンザルコニウムは塩化物塩(塩化ベンザルコニウム)として用いられ,構造式内のアルキル基はC8からC18(主にC12とC14)と言われています。ここでは陽イオン交換クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーで分析を行いました。
Fig.3に陽イオン交換モードによるクロマトグラムを示します。試料として用いた市販消毒剤(D,E)はいずれも精製水で1/100に希釈後,10 μLを注入しました。陽イオン交換モードではアルキル鎖長の長い方からピークが溶出します。

Fig.4 逆相モードによる塩化ベンザルコニウム (C14,100 mg/L)標準溶液および市販消毒剤のクロマトグラム
Fig.4に逆相モードによるクロマトグラムを示します。試料として用いた市販消毒剤(D,E)はいずれも精製水で1/1000に希釈後,10 μLを注入しました。逆相モードではアルキル鎖長の短い方からピークが溶出します。
参考文献 : 日本薬学会編『衛生試験法・注解2005』(金原出版)
関連アプリケーション
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高速液体クロマトグラフ(HPLC)
試料中の各成分の含有量を測定する機器です。分析機器の流路に液体を流しておき,試料を入れるとカラムと呼ばれる分離管の中で試料成分が分離され,検出器でその量を測定します。