自動前処理装置MAP-100とFTIRを用いた環境水中のマイクロプラスチック分析
マイクロプラスチック自動前処理装置MAP-100とFTIRを用いて、環境水中のマイクロプラスチックを分析した例を紹介します。
河川にて採取された試料をMAP-100を用いて前処理を行いました。今回は、環境省のガイドラインをもとに、酸化分解処理を3日間、比重分離を3時間行いました。処理前後、および酸化分解処理中(処理開始1日後)の試料の様子を図1に示します。図1cから環境夾雑物がきれいに処理できたことがわかります。
図1 処理前後および酸化分解処理中の試料の様子
a:処理前、b:分解処理中(処理開始1日後)、c:処理後
MAP-100を用いた前処理により得られたマイクロプラスチックについて、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて材質解析を行いました。今回は、劣化したマイクロプラスチック分析に効果的なプラスチック分析システムPlastic Analyzerを使用しました。
測定した2個のマイクロプラスチックの外観を図2、取得した赤外スペクトルの測定結果と島津オリジナルデータベースである紫外線劣化プラスチックライブラリを用いた検索結果を図3、4に示します。
図2 マイクロプラスチック(a),(b)の外観
図3よりマイクロプラスチック(a)に対しては紫外線を25時間照射したポリプロピレン(PP)が、図4よりマイクロプラスチック(b)は紫外線を550時間照射したポリエチレン(PE)がヒットしましたが、それぞれヒット率は1000点満点中(a)が876点、 (b)は904点と非常に高いスコアを示しました。これは、自動前処理装置によって環境夾雑物を除去したことで、プラスチック単体の赤外スペクトルが取得できたためであると考えられます。
図3 マイクロプラスチック(a)の赤外スペクトルと検索結果
図4 マイクロプラスチック(b)の赤外スペクトルと検索結果
関連アプリケーション
MAP-100(マイクロプラスチック自動前処理装置)
環境表層水からサンプリングした試料に含まれるマイクロプラスチックを正しく評価するためには、混在する環境夾雑物を除外する適切な前処理が必要です。環境表層水の試料からマイクロプラスチックを抽出するための代表的な前処理法を自動化し、“省力化”、“再現性”、“安全性”を実現する自動前処理装置です。
赤外分光光度計(FTIR)
マイクロプラスチックなどの海洋ごみの分析には,検体数が多いケースもあり,簡便で迅速な測定が求められます。FTIRは,有機物と一部の無機物の定性が可能であるため,迅速に主成分を判断できます。