生分解性プラスチック

プラスチックは一般に,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)およびポリスチレン(PS)のような石油系ポリマーを原材料としており,低コストで耐久性や汎用性が高いことから,私たちの身の回りの製品にも広く使用されています。
昨今,マイクロプラスチック による環境汚染の問題が顕在化し,プラスチック製品に対する見方がより厳しくなってきています。プラスチックごみを減らすために,環境配慮型素材やプラスチック代替品の開発が進められています。環境配慮型素材としてバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックなどのバイオプラスチックが市場に登場してきました。

生分解性プラスチックは,自然環境下において微生物が関与して低分子化合物に分解されるプラスチックです。分解されるためゴミとして残りにくいという利点がありますが,一般的なプラスチックの分解されにくいという性質とは正反対であるため,使い捨て製品の用途に適しています。通常のプラスチックより高価になる,耐久性や機能性が劣るなどの欠点もあるのが現状です。

経済産業省は2019年,海洋生分解性プラスチックの開発や導入普及を促進するためのロードマップを策定しました。新たな海洋生分解性を持つ樹脂の開発や需要開拓,新たな微生物の発見や海洋生分解性のコントロール機能など革新的な素材の研究開発を後押しする方針を打ち出しています。*1

*1) 引用:https://journal.meti.go.jp/

分解性プラスチックバッグの成分と熱特性解析

酸化型分解性および生分解性素材を原料とするプラスチックバッグに対して,フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて成分分析を,熱特性解析を示差走査熱量計(DSC)および熱重量測定装置(TGA)を用いて熱特性解析を行いました。これらの分析手法は新素材の研究開発にご活用頂けます。

分解性プラスチックバッグの成分と熱特性解析

生分解性プラスチックバッグ(BD-1, BD-2)酸化型分解性プラスチックバッグ(O-BD1,O-BD2, O-BD23)
およびPE製プラスチックバッグ の赤外吸収スペクトル

酸化型分解性(O-BD1,O-BD2, O-BD3) および生分解性(BD-1) のプラスチックバッグの赤外吸収スペクトルは,PE 製プラスチックバッグの赤外吸収スペクトルと非常に類似しています。またプラスチックバッグによっては炭酸カルシウム(CaCO3)に起因するピークも一致しており,これらには充填剤として炭酸カルシウムが含まれていることが推測できます。

上記データは各プラスチックバッグのTGA曲線です。この結果から,各プラスチックバッグが異なる熱特性をもつことが分かります。成分分析と熱特性解析の詳細は下記アプリケーションをご覧ください。

使い捨て生分解性プラスチック製品の成分分析

使い捨て生分解性プラスチック製品の成分分析

使い捨て生分解性プラスチック製品(左)とスプーンとPLA樹脂の赤外吸収スペクトル(右)

写真は英国,ドイツ,オランダで入手した生分解性プラスチック製品です。使い捨て生分解性スプーンをFTIRを用いて成分分析を行った結果,PLA樹脂の赤外吸収スペクトルと高い一致度を示しました。また,一部の吸収ピークは充填剤のタルクに起因していることも分かりました。

海外販社ニュース

(当社関係会社 Shimadzu Europa GmbH のWebにリンクします。)

生分解性プラスチックの分解性評価

生分解性プラスチックの分解過程を理解することは,製品開発だけでなく環境アセスメントの面からも重要な知見となります。分解性評価方法の国際標準化の活動が進められていますが,当社においても全有機体炭素計(TOC)や液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)などの分析技術を活用して分解性評価に貢献できないか調査しています。

関連アプリケーション

Webinar

(ご視聴いただくには、会員制サイト My SHIMADZUへの 会員登録が必要です。)

関連製品

IRSpirit-X

IRSpirit-X シリーズ

A3サイズに収まるコンパクトな設置面積ながら高い拡張性を両立。当社のスタンダードモデルと同じ幅の試料室を有しているため,当社製オプションや市販の他社製オプションをそのまま使用できます。また,複雑なパラメータ設定を必要とせず,分析目的や手法を選択する簡単な操作だけ確認試験や異物分析を実行できるプログラムも標準搭載しています。

示差走査熱量計

DSC-60 Plus シリーズ

DSCは高分子材料・医薬品・食品等の研究開発・品質管理分野において,材料のキャラクタリゼーションに必要不可欠な熱分析装置のひとつです。高性能・高機能な新材料開発のための分析を高い感度と簡単操作で実現します。

全有機体炭素計(TOC)

TOC-L シリーズ

TOC-Lシリーズは,島津が開発し世界に広めた 680℃燃焼触媒酸化方式を採用したTOC計です。
4µg/L~30,000mg/Lの超ワイドレンジでありながら,NDIRとの連携により検出限界4µg/Lという燃焼触媒酸化方式では最高レベルの検出感度を誇ります。
また,燃焼触媒酸化方式では,低分子の易分解性有機物だけでなく,不溶解性や高分子状を含めた難分解性有機物も高効率で酸化することが可能です。

四重極飛行時間 高速液体クロマトグラフ質量分析計

LCMS-9030

LCMS-9030は,LCMS-8000シリーズで培ってきた高速性能(UFTechnologies)と高いイオン収束力に,島津TOFの新技術が融合して誕生した「国産初」の四重極飛行時間型質量分析計です。LCMS-8000シリーズの機能を継承するとともに,精密質量分析という新たな機能が追加されており,定性・定量分析において高いパフォーマンスを発揮します。
LCMSシリーズにLCMS-9030が加わり,島津LCMSの新たな挑戦が始まります。