ジルコニア粉末の硬さ評価

 ジルコニアセラミックは、主原料が酸化ジルコニアで、特性としてその驚くべき強度が注目され、スペースシャトルの耐熱タイル(断熱保護材)部品などに使われています。また、人体に対する安全性(生体親和性)が極めて高く人工関節の材料や歯科治療材料をはじめとする多様な製品に使われるようになってきています。
 各種工業素材の原料など微粒子に対する強度評価としては、圧縮試験による破壊強度評価が一般的ですが、最近は粒子の「硬さ」を求めたいという要望も出てきています。その際、試験方法としては測定対象となる微粒子を樹脂に埋め込み、試験面を研磨した試料を準備して評価することができます。 ここでは、ジルコニア粉末の硬さを測定した例を紹介します。

試料および試験条件

 今回、評価に供したジルコニア粉末は粒子径が異なる2 種類(100µm と30µm)で、それぞれ埋め込み樹脂で固定して表面を研磨しています。(Table 1参照)
 試験条件(試験装置の負荷治具、負荷条件)を、Table2 に示します。 負荷は稜間角115°のダイヤモンド製三角すい状の圧子にて、Fig.2 のようなイメージで行ないました。

Fig.2 負荷イメージ

Fig.2 負荷イメージ

Table 1 試料情報

1)試料名 ジルコニア粉末
2)試料記号 A B
3)粒子径(µm) 100 30
4)試料の大きさ(mm) Φ25×10t(埋め込み樹脂)

Table 2 試験条件

1)試験機 ダイナミック超微小硬度計
DUH-211S(Fig.1 参照)
2)測定圧子 稜間角115° 三角すい圧子
(ダイヤモンド製)
3)試験の種類 負荷—除荷試験
4)試験力(mN) 49
5)負荷速度(mN/sec) 2.685
6)保持時間(sec) 5

試験結果

前項の条件で実施した負荷-除荷試験による硬さ測定結果(A、B各試料とも複数点の測定値を平均したもの)をFig.3に、また代表的な測定点についての試験力-(押込み)深さ曲線をFig.4に示します。
これらの結果から、試料Aは、試料Bに比べてマルテンス硬さ(HMT115)、換算ビッカース硬さ(HV*)とも大きいことが分かります。

硬さ試験結果(平均値)

試験名 試験記号 Fmax[mN] hmax[µm] HMT115[N/mm2] HV*
ジルコニア A 49.37 0.543 5355.1 1155.4
B 49.40 0.742 2914.6 864.5
備考1) 上表中の記号は次のことを示します。
Fmax:最大試験力
hmax:深さ最大値
HMT115:115°三角すい圧子によるマルテンス硬さ
HMT115=Fmax/(26.43×hmax2

HMT115は、装置の剛性等によるマシンコンプライアンス補正(Cf補正)と圧子先端の丸み等の影響である面積関数補正(Ap補正)を含んだ値です。

HV*:換算ビッカース硬さ(参考値)
Fig.3 試験結果

Fig.3 試験結果

Fig.4 試験結果

Fig.4 試験結果

DUH-211/DUH-211S
ダイナミック超微小硬度計

DUH-211/DUH-211Sは、従来のくぼみの対角線長さを測定するのではなく、負荷と押しこみ深さの関係をリアルタイムに計測し表面物性を評価します。押しこみ深さは自動的に測定されますので個人誤差無く、金属材料を始めとして、薄膜、表面処理層、微小電子部品、プラスチック、ゴム、セラミックスなど、あらゆる材料の表面物性評価に威力を発揮します。
また、本装置は押し込み硬度評価のみならず、最近注目されている押し込み試験による表面物性評価への対応を目的として開発しました。これによりISO14577-1(計装化押し込み硬さ試験)におけるマルテンス硬さ、押し込み弾性率、仕事量、クリープ評価に対応した評価が行えます。