インキの付加価値向上に,IRTracer-100のラピッドスキャン(20回/秒)が活躍

近年のオフセット印刷では,多種類・小ロットでかつ短納期の要望が高くなっています。ところが短納期対応は,版作成,インキの乾燥時間など時間を要するという課題があります。たとえば両面印刷では,裏移りが生ずるので,片面印刷したら数時間から一晩置いて,十分乾燥させなければ反対面を印刷できません。このようにインキの乾燥時間の短縮化(速乾印刷技術)が,短納期に対応するための重要なファクターです。
速乾インキとして,最近ではUVインキ(紫外線硬化型インキ)が使用されることが増えています。UVインキは瞬時に硬化が起こる特長を有していますが,色(顔料)による硬化速度の違いや粘土や粘着性の温度依存性が課題とされています。
IRTracer-100は,UVインキの硬化過程やインキに含まれる溶剤の乾燥プロセスを赤外スペクトルとして測定し,その速乾性を簡便かつ高精度に評価できます。

マジックのインキをサンプルとして速乾性を評価しました。測定には1回反射型ATR測定装置を用い,ラピッドスキャンによる高速モニタリングを行いました。マジックをATRプリズムに塗りつけた直後,溶剤のピークは立ち上がり,その後蒸発とともにピークが小さくなっていきます。溶剤の蒸発は一瞬で完了するため,ラピッドスキャンによる測定が有効です。

使用装置 :IRTracer-100
付属装置 :1回反射型ATR測定装置
      (MIRacle 10 /ダイヤモンドプリズム)

ラピッドスキャンによる測定
 分解  :8cm-1
 積算   :2
 検出器 :MCT検出器

メーカーの異なる3種の青色マジックを用いて,溶剤成分のスペクトル変化を比較しました。下の結果ではマジックA,B,Cの順に溶剤が乾燥するまでの時間が長くなっていることがわかります。
ラピッドスキャンを用いれば最大20回/秒(0.05秒間隔)の測定が可能となります。

赤外分光光度計(FTIR)

主に有機化合物の構造推定(定性)を行う分析装置です。
赤外線を分子に照射すると,分子を構成している原子間の振動エネルギーに相当する赤外線を吸収します。この吸収度合いを調べることによって化合物の構造推定や定量を行います。