キャリアガスをヘリウムから窒素や水素に変更する場合の注意点などをまとめました。

分析条件を検討する

キャリアガスをヘリウムから窒素や水素に変更する場合、ガス性質の違いからカラム内を流れるガスの最適な平均線速度が異なり、変更前後で同等の結果を得るには分析条件の検討が必要です。特に窒素の場合、平均線速度によってはカラム効率が大きく変化するので注意が必要です。(下図のHETPはカラム効率を表すパラメータで、小さいほどカラム効率がよいことを意味します。)

ガスセレクタ

分析条件の検討にはガスセレクタの使用をお勧めします。ガスセレクタは2種類のガスを接続することでGCに供給するガスを自動的に切り替えることができます。これまでガス種の異なる分析を行う場合、配管のつなぎ替え作業が必要でしたが、ガスセレクタはLabSolutionsからの制御に対応しており、分析毎に自動的に切り替えて連続運転することができます。

 
 
 

EZGC Method Translator

EZGC Method Translator (Restek)は、ヘリウムでのメソッドを水素や窒素キャリア用のメソッドに簡単に変換することができます。

EZGC Method Translator

EZGC™ Method Translator

70成分の農薬における水素およびヘリウムキャリアガスでの保持時間の相関

70成分の農薬における水素および
ヘリウムキャリアガスでの保持時間の相関
EZGC™ Method Translatorを用いて
水素キャリアガスの分析条件に変換

キャリアガスを窒素に変更する

キャリアガスを窒素に変更される場合は,条件検討を充分に行った上での実施をお勧めします。
窒素ガス(N2)は,安価で安全なガスです。一方でキャピラリGCで使用される場合,ヘリウムと同条件で分析すると,分離能力が低下する場合があります。近接するピークがない場合,ヘリウムと同条件でキャリアガスを窒素へ変更することが可能ですが,近接する成分が多く,ある程度の分離が必要な場合は,窒素ガスでの条件検討が必要です。
窒素ガスで分離能力を向上させるためには,キャリアガス線速度の検討,温度条件検討が必要になり,分析時間が長くなると予想されます。また,気化の状態,検出器感度も若干変化することが予想され,ピーク面積百分率はヘリウムガス使用時と異なる可能性があります。

ヘリウムガスと窒素ガスでの分離の一例

ヘリウムガスと窒素ガスにて線速度を変化させた場合の分離の一例を示します。
ヘリウムガスでは,線速度20~47cm/sの広範囲で分離はほとんど変わりませんが,窒素ガスでは線速度47cm/sの場合,分離が悪化しています。これは,窒素の分離最適線速度がヘリウムより低く,最適線速度範囲がヘリウムより狭いことに起因しています。なお、昇温分析の場合はガス制御モードによっては昇温時に線速度が変化してしまいますが、島津GCの場合は定線速度制御を使用することで、窒素ガスを用いても最適な分離を得ることができます。

キャリアガスを水素に変更する

GC分析に用いられるキャリアガスとして,水素ガスを検討されるケースが増えています。水素ガス(H2)は,ヘリウムガスと比較して入手しやすく,安価で,線速度に対する分離性能も高いといった特徴をもち,安全面に留意して使用すればランニングコストも大幅に削減することができます。一方で,水素ガスは爆発しやすい危険なガスです。水素ガスを安全に使用していただくために,想定される危険や留意点などをご紹介します。

 

【ご注意】

  • 水素ガスは各機器の安全使用に関するマニュアルに従って、正しく安全に使用していただくようお願いします。ガスクロマトグラフの取扱説明書にも水素ガスについての注意事項が記載されていますので,併せてお読みください。
  • キャリアガスの種類を変更する場合は、分析条件の検討が必要になることがあります。
  • GCの前処理装置にはキャリアガス以外のガスも使用されており,装置の種類によっては,キャリアガスに水素が使用できない場合もあります。
     
 
一般強制 電子フローコントローラー APC・AFCでガスの供給圧が正常であるにもかかわらずリークエラーが発生するときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。
一般強制 「手動で水素ガス流量を設定する」タイプのガスクロマトグラフで,流量や圧力が通常に比べて極端に大きく(または小さく)なってしまうときには,圧力調整弁部も含めてガス漏れチェックをしてください。
漏れが見つからない,漏れが止まらない,または漏れを止めても正常に戻らないときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。