UV溶出試験システム
溶出試験用HPLCシステム/UVシステム
全星薬品工業 株式会社
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INDUSTRY
低分子医薬品, バイオ医薬品
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キーワード
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紹介する製品・サービス
UV溶出試験システム, i-Series
溶出試験は生物学的同等性を示すための試験として広く実施され,その分析法にはUV法とLC法が用いられています。今回はオンライン/オフラインサンプリングで数多くの溶出試験を実施されている全星薬品工業様に,LC法を中心とした分析法全般に関するお話を伺いました。連載第10回記念ということで,LCtalkなどでおなじみのLC博士も参加してくれました。
Customer
インタビュー
実施されている溶出試験全般についてお話いただけますか。
当社では経口製剤を製造しており,即放性製剤や徐放性製剤,腸溶性製剤と呼ばれている錠剤や散剤,カプセル剤があり,これらの溶出試験を行っています。装置はパドル法です。溶出時間は短いもので15分,長いものになると24時間の溶出時間になります。
検出法(分析法)はUVとHPLCの両方ですね。島津のオンラインサンプリングシステムをお使いいただいていますね。
はい,オンラインLC検出を4システム,オンラインUV検出も4システムあります。それらとオフラインの溶出試験器+HPLCで計11システムが稼動しています。オフラインのシステムはサンプリングのみ自動で行います。オンライン用のLCはProminence,UVはUV-1700とUV-1800を使用しており,オフライン用のLCはLC-2010を使っています。
24時間の試験などもあるとなると使用頻度は高そうですね。装置は常に稼動しているのですか。
溶出試験器11台が毎日,常に稼動しています。月に合計150~170サンプルぐらいの試験を行っていると思います。
LC検出でのオンラインシステムでは DT-Assistソフトウェアをお使いいただいていますが,オフラインシステムでのデータの処理はどのようにされていますか。
LCsolutionで分析,解析したあとサマリーレポートを出力し,別のPCのExcelに値を入れて計算をしています。他社のLC用ソフトウェアを使用する場合も結果は別のPCに移してExcelで計算します。含量試験や純度試験などのLC分析でも同様に他社ソフトウェアの場合もすべてExcelで定量を行っています。
ちなみに弊社のCLASS-AgentとCLASS-Agent Reportというソフトウェアを利用すると,現在お使いのExcelの溶出試験レポートフォーマットをそのまま利用して溶出率の計算や溶出プロファイルのレポートができます。また複数のPCからの情報をサーバー上でデータを一元管理して,有効活用することもできます。オフラインで溶出試験を実施されているお客様にはそのようなシステムをお使いいただいて,オンラインの場合には DT-Assistソフトウェアをお使いいただいます。ケース バイ ケースでオンラインとオフラインのどちらが適するのか決まってくると考えています。ぜひ次回ご紹介させてください。
DT-Assistソフトウェアの良いところ,改善が必要と思われるところはどのような部分でしょうか。
すべてが自動でできるので良いと思います。錠剤を投入して,サンプリング時にろ過してバイアルへ移行,分析もそのまま自動ということで手間がかからず,かつ分析が終わればレポートを自動的に出してもらえるので,非常に便利です。
自動化は良いと思うのですが,使い勝手や画面構成などはいかがですか。
操作が簡単で使いやすいのですが,新規の作成やちょっと違うものを作ろうと思ったときの操作性が若干悪いような気がします。もう少しこうなったらいいなという部分はありますけれども,全般にソフト自体は使いやすいですね。
例えば溶出試験システムをまったく触ったことがないオペレータの方が溶出試験をするような場合はどうでしょうか。準備してボタンをぽんと押せば実行できるのですが,それをソフトウェア側からあるいはハードウェア側から見たときにどういう感じですか。初めて使われる方でもすぐに使えるでしょうか。
溶出試験システムを初めて使う場合や慣れるまではとても緊張します。錠剤を投入後にソフトフェア上の設定ミスに気が付くとなるとベッセルを全部洗って,試験液を入れ替えて,すべて一からやり直しになるのでとても慎重になります。ボタン1つ押すのも,上から順番に並んでいますが,それでも本当にいいのかという確認をどうしても行います。 もちろん慣れれば問題ありません。
LCsolutionソフトウェアへのご要望は何かありますか。
LCsolutionはとても使いやすいのですが,バッチの表への数字を組み込むときに入れにくいというオペレータの方がいます。単純なExcelのような表であればいいのですが,右端のほうを押すと矢印マークが出てきたりするところなどが,残念だなと思うところです。あとは試料数がとても多い時に,標準試料を挟み込みたい場合,ウィザードで組むのも手入力も大変だと感じます。試料情報の入力やデータに名前をつける時に,その辺りが直感的にわかるといいですね。
ソフトウェアというのは慣れてしまうと苦ではないのですが,最初に覚えるまでの時間が短ければ短いほど,使い勝手のよいソフトウェアであるとお客様に感じていただけると考えています。そのへんのソフトウェアの習得に関する壁をできるだけなくしていけるよう,バッチやメソッドの作り方など,ソフトウェア全般に関して改善していきたいと思います。他には何かございますか。
他社の装置で,LC本体だけで起動しパラメータを変更したい場合も,パソコンも立ち上げなければいけないものがありまして,使いにくいと感じています。私自分が島津製作所製を標準として受けいれているところがありまして,島津製作所製と比べて使い勝手が悪いというか。島津製作所製ではできて当然の部分というのがあります。
それではハードウェアのほうでProminenceとLC-2010についてご意見・ご要望はございますか。
Prominenceのいちばんの特長は,注入スピードが速いという部分がすごくありがたいですね。10分の分析のあと,また次の10分の分析。単純に考えたら20分かかる。ところが実際は注入ラグというのが結構あります。他社の装置は意外と気になります。
ありがとうございます。他社で気になるのは結局サイクルタイムが長くなっているということですよね。
そうです。あとバイアル数がどれだけ入るかというのも重要です。
バイアル数ではLC-2010のほうがたくさん入ります。オフラインのLC溶出試験でサンプル数が多い場合を考えるとProminenceよりもLC-2010が適するかもしれませんね。溶出試験ではPDA検出器まではあまり使われませんし,UV検出器一体型でコンパクトに使い勝手の良いLC-2010が溶出試験用に数多く使われています。
逆に何かお困りのことはありませんか。
オンラインシステムでサンプリングをするスピードがもう少しだけ速いといいですね。装置構成としては富山産業株式会社の溶出試験器とフィルターステーションとの組み合わせはシンプルで良くできているのですけれども,サンプリングスピードについては少し残念な部分だと思います。
条件によっては1回のサンプリング時間に5分くらいかかってしまうことがありますので,今後改善が必要ですね。
溶出率の曲線をプロファイルするときに5分,10分,15分と短い間隔でサンプリングすることがあります。できることならこれをオンラインシステムで使いたいと考えています。日々の製品試験であれば,溶出時間が短いものは手動でのサンプリングや,自動でのサンプリングだけで問題ないのですが,溶出プロファイルの際は5分,10分,15分,30分,さらに後ろにまだサンプリングポイントが長く続きます。できればこれはオンラインシステムを使用して自動化できればよいと思っています。また徐放性製剤の溶出プロファイルでは最大13ポイントのサンプリングというのがあるのですが,これは全部で78サンプルになるのでバイアル数が60本セットだと足りないことになります。そこに対応できればこのオンラインシステムは,他の製薬会社からもこういった溶出プロファイルのデータ収集でのニーズも出てくるのではと思います。
クーラー付きモデルの場合は,バイアルを60本セットできるラックなのですが,おっしゃるとおり,13ポイントのサンプリングに対応する際には,それでは数が少ないですね。クーラーなしのモデルの場合は,バイアルを100本セットできるラックなのですが,標準試料用に10本分確保していますので,最大90本までセットできます。だからソフトウェア上では15ポイントまで対応しています。
フィルターを通した後は成分が析出することもありませんので,そういった意味では冷却機能はなくても大丈夫とは思うのですが,すべてのサンプルを一定温度で温調しておきたいと考えていますので,冷却機能はあったほうがいいですね。
ではオフラインのときは,LC-2010にセットする前に全部フィルターに通してクーラーで冷やしておくのですね。
そうです。これが13ポイントサンプリングで78本分。人がやるとなると大変なので,ぜひここは改良していただければと思います。
そこは今後の課題とさせてください。
ちなみにサンプリングされたサンプルのLCでの分析時間はおおよそどれぐらいですか。
だいたい10分前後の分析時間というのが多いですね。
多成分を含有する製剤というのはあまりないのですか。分析時間が律速になるような試験では高速LCを利用したシステムに取り組むお客様もいらっしゃいますが。
多成分系で分析時間が20分,30分ぐらいというものもありますが,当社の製剤はほとんどの場合単一成分です。 私自身は,高速化は製品試験には向かないのかなと考えています。研究開発部門や先ほどの溶出プロファイルのデータ収集には使えますが,品質管理部門になると局方に沿った分析条件で実施されています。社内用の担保的なデータであれば高速化でかなり助かる部分というのもあると思います。 しかし,逆に溶出時間が6時間など長い試験では,その日にフィルターを通してバイアルに入れれば,あとはLCが終夜稼動で分析しますので,そこが短く高速化されても結局,結果は翌朝になってしまいます。単純にLC分析時間が短くなれば溶媒削減にはつながると思いますが。
局方がUV法であってもHPLCデータも取るラボが多いので,そのようなサポート的データには良いのかもしれませんね。
そうですね。当社では逆にLC法が最終的な評価方法であっても,工程試験などでは簡便法としてUV法でも測る場合もあります。
全体的に島津の製品についてご意見・ご希望があればお話ください。
やはり使いやすくてわりとすぐ受け入れやすいと思います。ソフトにしてもそうですし,取扱説明書にしても丁寧ですし,見やすいと思います。外資系メーカーさんの中には取扱説明書の英語をそのまま直訳したような感じで,わかりにくいものがあります。取扱説明書を調べても,結局,解決できない場合もあります。パソコン上のヘルプ機能なども使いますが,全く検索できない場合があります。島津製作所製品の取扱説明書はよくできていると思います。いざというときに使えますし,ヘルプ機能でもわりと容易に調べたい言葉が見つかります。
ありがとうございます。ヘルプに頼らないで使えるともっといいのですけれども。
そうですね。結局どこかにある機能,どこかに絶対あるはずだという部分がいざというときにすぐに結びつかないときがあります。直感的な操作を容易にできればもっとよりよいと思います。ハードウェアはすごくよくできていると思うので。
弊社の装置のメンテナンスはしやすいですか。
そうですね。取扱説明書にも詳しくメンテナンス方法が記載されており,容易に部品交換ができると思います。また御社は教育やメンテナンス講習会なども開催されていますので,実際に装置に触れて作業を学べて役立っています。
メンテナンスサービスの対応はどうでしょうか。
対応は迅速で丁寧ですね。電話でもすぐ答えていただけますし,すぐ来てほしい場合もスケジュールさえ合えばすぐに来ていただけていますので,十分満足しています。もっと欲を言うと,自分たちの手で多くの事象に対処が可能であれば,今すぐに分析したいという場合でもよいと思います。できるだけ自分たちで交換しようと思って部品をある程度揃えてはいますが。メーカーさんとしては素人に触らせたくない部分があるのでしょうね。
そういう場合もあるかもしれないのですが,お客様の状況にもよります。装置の箇所によって,消耗品を簡単に交換できるようにしたり,お客様での取り扱いが難しい部分は耐久性を高めてメンテナンスの頻度を下げるようにといった工夫もしています。
では最後にHPLCユーザーの方々へのメッセージをお願いします。
私自身は島津製作所の製品が好きですし,ハード面でもソフト面でも扱いやすいと思っています。もしも,今から他社を受け入れる,他社のものに変わっていくとなると不安に感じる部分が多くあります。価格の面では,外資系メーカーの同じような性能の装置でもわりと価格が高く,インタビュー写真8島津製作所の製品はそれに比べると安く,コストパフォーマンスに優れていると思います。ただ,国内メーカーには価格だけの比較では同等の装置はありますし,今後もハード面やソフト面だけではなく価格の面でももっと頑張っていただければと思います。あとはソフトウェアが,できれば分析機器業界全体で,同じように使いやすい共通した形になったらいいと思います。
ひとつのワークステーションに,いろいろなメーカーの装置をつなげるという,マルチベンダー化の流れがあります。 その背景には,トレーニングのコストを減らしたいことや,実際に装置を買われるときに手持ちのワークステーションに接続できれば,導入コストを抑えることができること などがあると思います。そういったマルチベンダー化というのはたしかに重要だと思います。他のお客様からも同じようなご意見をいただいています。
今日はいろいろとご意見をどうもありがとうございました。
開発者のコメント
島津オンラインLC溶出試験の特長は,試験の開始から結果のレポート出力まで完全自動化が図れるところです。サンプリングした溶出液のろ過やLCバイアルへの移行等の煩雑な作業を省力化でき,オンラインLC溶出試験また初めて溶出試験を行われるオペレータの方でも短いトレーニング期間で簡単に作業できるというメリットがあります。今回のインタビューでいただいたご意見を今後の製品開発に生かし,お客様がより使い易いと感じて頂けるシステムやソフトウェアを提案していきたいと思います。