島津HPLCシステム (EmpowerTMソフトウェアコントロール)

エーザイ 株式会社

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    Empower対応 島津LCドライバ

HPLCは医薬品の分析において重要な役割を果たしており,使用頻度が高い装置のひとつです。エーザイ株式会社様の鹿島事業所品質管理部ではネットワークシステム環境下で多数のHPLCが日々稼動しています。今回は原薬・中間体の分析に用いられている,これらの高速液体クロマトグラフProminenceシステムについてご意見・ご要望をお聞きしました。

Customer

高橋 嘉政 様

鹿島事業所 品質管理部
第4グループ 統括課長
高橋 嘉政 様

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

エーザイ 株式会社
URL http://www.eisai.co.jp/index.html

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インタビュー

現在HPLCはどのような分析に使われていますか。

医薬品の原薬,中間体や原料の品質管理に使用しています。含量試験や類縁物質試験が主な使用用途です。

原薬の試験などで,以前と比べて最近変わってきたことはありますか。

弊社に特有かもしれませんが,短波長側の検出が多くなっています。また,1回の分析時間が2~3時間になるケースが増えています。

今回のシステムを選定されるに際して何か重要なファクターはありましたでしょうか。

インタビュー写真1

いくつかの分析条件を他メーカーさんのLCで試したところ,検出波長の影響からかベースラインが安定しないケースや,注入精度が確保できないケースがあり,いずれの条件も分析が困難でした。一方,御社のProminenceを試したところ,安定的に分析することができたことから,選定させていただきました。通常,LCを選定する際に考慮する点は,注入再現性の良さやキャリーオーバーの低さ,検出器の感度などが挙げられます。

医薬品の場合は逆相系の分析条件が多いと思うのですが,いかがですか。

逆相系がメインです。順相系もありますが,多くが逆相系で,最近は先ほどもお話したように,短波長側での検出が増えています。

注入量はどれくらいの量のサンプルを注入されることが多いですか。また再現性というのは,どれくらいの注入量でのお話ですか。多い側での再現性というよりも少ない側でしょうか。

注入量は試験法によって様々ですが,多い場合で100μL,あとは40μL位までが多いですね。注入量の再現性は量に関わらず高いほうが良いのですが,再現性に不安があるため,極力10μL以下では設定しないようにしています。

弊社としては,少量側の1μLとか,極端にいうと0.5μLとか0.1μLとかそういう領域に注力して開発しています。分析の作業効率を考える場合に,製剤もそうでしょうが原薬は希釈が多いですよね。装置として少量での注入再現性が高いと希釈の工程を減らすことも可能です。希釈の工程を減らすことで再現性をより高めることができる,そういう方向性です。

インタビュー写真5

おっしゃる通りですね。高濃度のサンプルを少ない注入量で分析できるのは魅力的ですね。

さらに注入再現性だけではなくてキャリーオーバーがより重要な意味を持ってきますので,それらの両立が必要です。

そうですね。今まではキャリーオーバーが問題となるので高濃度のサンプルを注入するのはなるべく避けるようにしていました。Prominenceはキャリーオーバーが非常に少なく,大変助かっています。

ありがとうございます。
現在はEmpower TM ソフトウェアに弊社のLCドライバを入れてProminenceシステムをお使いいただいていますが,システム全体,あるいはネットワークのシステムとしてどのような利点や課題を感じられますか。

インタビュー写真2

各社の分析装置を1つのシステムで制御することにより,LCやGCのデータとメソッド(装置制御パラメータの設定)を一元管理できる点が大きなメリットとなります。デメリットは,システムと分析装置の接続でトラブルが生じた場合の対応が難しいことです。必然的に両メーカーの協力が必要となります。しかし,そのデメリットを考慮しても,データの一元管理化は,ラボの効率化の観点からメリットが大きいと感じています。というのも,ご存知のように,GMP規制下のラボではシステムのセキュリティー管理や従業員の教育訓練に多くのコストと時間をかけており,複数のシステムを同レベルで管理していくことは弊社のリソースでは難しいと感じていたためです。また,データが一元管理されていると当局等の査察でも説明がしやすいと感じています。

教育訓練ということはつまりオペレーターの方へのメリットも大きいということですか。

大変大きいと思います。分析経験の浅い方に各社のクロマトグラフィーのシステムを全て覚えてもらうことは大きな負担となる上,誤操作の要因となります。弊社の場合はEmpower TM ですが,1種類の教育訓練をすることで全てのLCやGCが使えるというのは大きなメリットと感じています。

居室からLCをリモートコントロールすることはありますか。

インタビュー写真3

事務用のPCからも分析状況を確認できます。印刷されたレポートの他に電子データのレビューを行う必要があるため,レビュアーが居室でレビューできる環境を作っています。LC自体は移動相やサンプルなど本体のセッティングが必要なため,リモートで分析をスタートすることは多くありません。ただし,弊社では高薬理活性物質を取り扱うための隔離された分析室があり,そのような場所に置いてあるLCを居室からリモートコントロールするというケースはあります。

先ほどのお話では,分析条件は短波長が多いということですが,光学分割測定などは増えていますか。

順相系で光学分割カラムを使う分析はあります。順相系の分析は比較的少ないのですが,異性体分離に使うケースがほとんどです。ただ,原薬の試験だけで全ての異性体を抑えるというのは現実的ではなく,原料や中間体の段階で異性体を抑えるという品質戦略をとる場合が多いです。

現在LCの分析は逆相系がほとんどなのですが,Prominenceのポンプを開発していく過程で,従来からの課題として解決していったのが,ヘキサンなどの順相系溶媒をいかに安定して送れるかということでした。ヘキサンの場合にそれ自体が静電気を帯びることでチェック弁が適切に動作しなくなる場合があります。Prominenceでは順相系での送液安定性を狙ってチェックバルブの改良を行ないました。

逆相系でも順相系でも同様の性能が得られるというのは大変助かります。他社製品の場合は,例えば,専用の部品を用意するケースがあるのですが,部品の種類が複数あるとその分管理が煩雑となり,間違いの元となりますので。

あとは脱気ユニットですが,順相系溶媒は溶存酸素量が多いので,昔は特に示差屈折計で見ていると脱気ユニットのon/offでベースラインがうねってしまいました。できる限りそれを抑えるということで真空状態をモニターしながら常時減圧にしているというあたりも,どちらかというと順相系を意識してデザインした箇所のひとつです。

インタビュー写真6

その点も装置の安定している理由の1つなのですね。

はい。でもまだ課題もあると思います。もっとこうなったらいいなとか,ちゃんと動いているけど使いにくいなどの,LCハードに対するご要望はありますでしょうか。

メンテナンスのしやすさですね。Prominenceのオートサンプラーを自分でメンテナンスする気は起こりません(笑)。ここは今後もサービス会社さんにお願いする箇所だと思いますが,ユーザーがメンテナンスを行う必要がある箇所が明確になっていると良いと思います。

オートサンプラーのバルブは昔と比べると耐久性がかなり向上していまして,今推奨していているものは回転数10万回です。長寿命化していくことでメンテナンスの頻度を下げ,あとはサービスマンに任せてくださいということになります。あまりにも寿命が短いとお客様に替えていただかないとダウンタイムの問題が発生してしまいますので。

インタビュー写真7

メンテナンスフリーにしていく方向ですね。確かにその方向の方が良いかもしれません。

逆にニードルシールの耐久性は注入4万回なのですが,そこは替えやすく,針さえ上げてもらえれば手で替えられるようになっています。限られたスペースの中でどのように配置すれば設置面積を減らせるか,それとの兼ね合いで考えています。

明確なコンセプトがあって素晴らしいと思います。

ありがとうございます。Empower TM コントロールに関しては操作性のことや何かコメントはございますか。

今回導入したドライバは,Empower TM に近い操作性となっており,違和感なく使える点が良いと思います。課題は,若干画面のレスポンスが遅い場合やエラー処理がうまくいかないケースがある点です。ただ,これはネットワーク環境が原因の可能性もありますし,大きな問題とは認識していません。

このドライバの設計時に,ハードウェア設計の思想の違いでまったく同じにできないところはありましたが,できる限りウォーターズさんの製品の操作に近くなるように開発しました。グラジエントの設定などがそうです。

非常に柔軟な対応だと感じました。違和感がほとんどありません。

それでも少しはメーカーの違いが出ている部分もあります。例えば装置とLAC/E (取り込みサーバー)のつながり方ですね。島津の場合はProminenceがイーサネット経由でパラレルにつながっていますので,どれでもいつでもオフラインつまりコネクションを切れるというメリットがあります。そういう点はEmpower TM の中にあっても弊社の特長として残そうという部分です。

インタビュー写真8

その点も確かに助かっています。

他社間接続に関する課題や要望はありませんか。ソフトウェアをある程度統一するケースは多いのですが,ハードウェアはメーカーによって良い悪い以外に得手不得手というのがどうしてもあるということで,マルチベンダーコントロールを採用されるお客様が増えています。あるいは取引先の関係で複数のメーカーの製品を持たなければいけない場合もあります。御社の場合はいかがでしょうか。

他社間接続している場合,トラブルが発生した場合の原因の切り分けが難しいため,ある程度ユーザーである我々が勉強する必要があります。メーカー間で明確な責任分担があればトラブルが起こった場合でも対応が容易なのですが,実際は明確な線引きは難しく,初期段階の原因の切り分けは我々ユーザーが手探りで行っていくことが多いです。
要望としては,メーカー間で技術者同士が情報交換して欲しいと思います。特にバージョンアップや新機能に関する情報は,メーカー間でより多くの情報交換が必要と感じています。契約上の制約など,難しい面があるかもしれませんが,ぜひ検討していただきたいと思います。

サービスサポートに関するご要望はございますか。

インタビュー写真9

非常に良く対応いただいているため,特に要望はありません。強いて言えば,ハードウェアとソフトウェアで人材が分かれているようですので,幅広い分野に精通されている方がいらっしゃるとさらに助かるかもしれません。

LCに限らず全般的に何かご意見,ご要望とかはありますか。

インタビュー写真4

ぜひお願いしたいのは御社製のGCのコントロールです。性能の良いGCを違和感のない操作でコントロールできれば弊社にとっては大きなメリットがあると思います。

弊社としても逆に気づいたことなのですが,1社のものというか,ある決まったものしかないとそれが不便だと感じなくなっていることがあります。比較することによって,「なんだ,こっちを使えばこうなんだ」のように思うこともあって,自社の良い面と悪い面がよく見えてきます。ですので,今後は何を改善しなければいけないとか,もっと伸ばしていきたいということが明確になりますね。

インタビュー写真10

では,メーカー側にもメリットがあるということですね。

私たちにとってもメリットがあります。それが最後はお客さんのメリットにつながるように今後も努めて行きます。
本日はどうもありがとうございました。

  • A bridge with our customers!
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開発担当者コメント

prominence

このEmpower TM 2コントロール用のLCドライバは,お客様からの強いご要望を背景に,Waters社とのコラボレーションのもと実現しました。実際の製品開発はWaters社より開示いただいたEmpower TM の装置制御インターフェイス仕様に則って島津LCのコントロールドライバを開発するわけですが,Empower TM の設計思想を理解し,できるだけ他社間接続の構成でも違和感なく使っていただけるように心がけました。 発売後,お客様からも良好なコメントをいただけているので,それなりの手ごたえを感じています。とはいえ,ご要望や改善点のご指摘もいただいておりますので,今後もお客様の声を反映した,よりよい製品を開発していきたいと考えています。
どうもありがとうございました。