FAQ

主にサンプルおよびサンプルの前処理に関することについてまとめました。

Q.採取後、長期間保存している血液を鋳型にして、PCRはできますか?

A.
採取後、5年程度経過した冷蔵・冷凍保存血やろ紙血(乾燥血)を鋳型にして、PCRができることを確認しています。
長期間安定して血液を保存する必要がある場合は、ワットマン社のFTAカード(核酸保存用カード)が適しています。
血液(全血)のPCR阻害については、採取直後の血液(新鮮血)ほどPCRの阻害が強い傾向にあります。また、これまでの経験から、乾燥血をPCRの鋳型にする場合、一般的なろ紙より、FTAカードに保存した血液の方が、PCRの結果がかなり安定しますので、FTAカード保存血からのPCRを推奨します。

Q.糞便から抽出したDNAを鋳型にして、PCRで細菌を検出したいのですが可能ですか?糞便抽出DNAはPCR阻害がかかるため、DNAを希釈したものを反応に用いています。

A.
糞便サンプルから簡便にPCRを行う実施例をアプリケーション「リアルタイムPCR法による高感度ベロ毒素検出実施例」にご紹介しています。 10%糞便懸濁液を熱処理(95℃、5分)した後、その遠心上清をPCRの鋳型に用います。この方法により、多くの糞便サンプルから安定したPCRが行えることを確認しています。

Q.AmpdirectはRT-PCRへの応用は可能ですか? 糞便中に存在するRNAウイルスを検出するために使用できますか?

A.
糞便サンプルから簡便にRNAウイルスを検出する実施例をアプリケーション「糞便中のRNAウイルス検出」にご紹介しています。糞便懸濁液の遠心上清をワットマン社のFTAカード(核酸保存用カード)に塗布し、乾燥後、パンチしたカード1枚(φ1.25mm)をそのまま鋳型に使用します。Ampdirect Plusは逆転写反応の反応液としても機能します。このアプリケーションでは、逆転写酵素にインビトロジェン社のM-MLV Reverse Transcriptase(Cat No. 28025-013)を使用しています。

Q.サンプルの溶解処理の最後に95℃、5分間の熱処理がありますが、この熱処理は必須でしょうか?

A.
溶解液のProteinase Kを失活するための熱処理ですので必須です。 この熱処理を行わずProteinase Kが活性を持っている場合、PCR反応液に溶解液を入れるとProteinase KがPCR酵素(Taq DNA Polymerase)を消化するため、安定したPCRを行うことができません。実際、目的のPCR産物がまったく得られなかったケースを多数経験しています。よって、溶解処理の最後に95℃、5分間の熱処理は必ず行ってください。

Q.マウステイルを溶解液でおよそ1時間溶解しましたが、完全に溶解しませんでした。PCRの鋳型に用いて大丈夫でしょうか?

A.
溶解液100μLにマウステイル1~5mmを入れて、55℃で1時間程度溶解すると、マウステイルが完全に溶解せず、溶け残る場合がありますが、その後のProteinase K の失活処理(95℃、5分)を行うことにより、PCRの鋳型に十分なDNA量(コピー数)が溶解液中に出てきますので、多くの場合PCRに問題ありません。 これとは対照的に、大きくカットしたマウステイル(5mm以上)をover nightで完全に溶解処理した場合など、溶解液がドロドロして粘度が高い状態になる場合があります。このような場合は過剰なDNAにより、逆にPCRを阻害する原因になりますので、蒸留水やTEで10倍程度希釈してください。マウステイルは溶かし過ぎにも注意する必要があります。br /> また、溶解処理した溶解液は、遠心することなく、その上清をそのままPCRの鋳型に使用できます。 これまでの経験では、溶解処理した溶解液は、冷蔵保存で2~3年はPCRの鋳型として使用できます。

Q.植物の葉から抽出したDNAを鋳型にPCRを行いましたが、目的のPCR産物が得られませんでした。植物に含まれる糖類によるPCR阻害と考えられますが、Ampdirectを使用することで改善するでしょうか?

A.
これまでに多くのお客様からご提供いただいた実験植物、穀物、野菜、果樹の葉からAmpdirectによるPCRを行い、良好な結果を得ております。 植物によりPCRの阻害の程度が違いますので、例えば、アプリケーション「植物からの簡便PCR実施例」の溶解液による前処理でPCRを実施していただき、PCR阻害により目的のPCR産物が得られていないと考えられる場合は、溶解処理液を5~10倍希釈することで、改善する場合が多くあります。

Q.唾液を前処理せずに直接PCRの鋳型に用いることは可能でしょうか?アプリケーション「口腔粘膜からのPCR」では口腔粘膜細胞を溶解液で溶解処理していますが、唾液の場合でも溶解液で溶解処理する必要がありますか?

A.
これまでに唾液中の微生物を検出する目的で、前処理をせず、唾液を直接PCRの鋳型にするお客様は複数おられます。鋳型としてPCR反応液に持ち込む唾液中(数μL)に微生物数が多い場合は、良好なPCR産物が得られると考えますが、微生物数が少ない場合は、唾液中のタンパクなどによるPCR阻害の程度の違いで安定したPCR産物が得られない可能性があります。よって、安定したPCR産物を得るためには、唾液を溶解液で溶解処理したものをPCRの鋳型に用いることを推奨します。唾液を溶解処理することにより、(1)「微生物DNAの抽出」、および(2)「唾液のPCR阻害の低減(唾液中タンパクの分解)」の2つの効果により、PCRの結果が安定します。

Q.血漿・血清サンプル中の微生物をPCRで検出するにはどうしたらよいでしょうか?

A.
血漿・血清は全血よりもPCRの阻害がかなり強いため、全血のように直接PCRの鋳型にすることはできません。
そのため、アプリケーション「血清中のウイルス検出」のように、血漿・血清を溶解液で溶解処理し、血漿・血清中のタンパクを分解してPCR阻害を低減する必要があります。
本法は、DNAウイルス、細菌検出には適用できますが、RNAウイルスには適用できませんので、ご注意ください。RNAウイルスの場合は、溶解処理の段階で、血漿・血清中に存在するRNA分解酵素によって、ウイルスの殻から出てきたウイルスRNAが分解されるためです。

Q.FTAカードおよびろ紙を鋳型に多検体PCRする場合、パンチする治具を介してコンタミしてしまいます。コンタミ防止の対策はありませんか?

A.
血液の場合については、ある検体をパンチした後、次の検体をパンチする前に、FTAカードおよびろ紙の検体をアプライしていない部分で3回空打ちしますと、前の検体の鋳型(血液の場合は白血球DNA)を持ち越さないことを確認しています。お客様からは、「検体をパンチする毎に、治具の円筒部分をアルコールをしみこませたキムワイプで拭く方法は、かえってコンタミを誘発する」とのご報告をいただいていますので、空打ちする方法を推奨します。 ただし、コピー数の多いプラスミドDNAやミトコンドリアDNAなどを検出する場合には、本法ではコンタミを防止することはできません。