Q. 天びんの日常点検、定期点検の方法についてポイントを教えて下さい。

A.

1. 日常点検と定期点検
・日常点検は毎日あるいは使用前に行う点検で点検項目は、例えば下記のような項目です。

  • (1) 天びんの皿や周囲が汚れていないか
  • (2) 水平がでているか
  • (3) 表示がばらついているなど異常はないか
  • (4) ひょう量は合っているか

ひょう量の点検は質量の分っている分銅を皿に載せその表示値との差が基準値(使用者が品質要求に対して定めた数値)以内にあることを確認します。基準値を越えた場合の処置も手順書で決めておく必要があり、再調整を行って基準値内になったことを確認するか修理に出すなどの手順を決めておきます。

・定期点検は、日常点検よりも点検項目を増やし、日常点検の項目に

  • (5) 繰り返し性
  • (6) 偏置誤差
  • (7) 器差或いは直線性の点検を加えます

必要に応じて、最小計量値などを追加することもあります。定期点検の周期は使用者が品質要求に対して定めます。
定期点検は、JCSS校正認定事業者である当社サービス会社の(株)島津アクセスで、点検・校正を有償で行うこともできます。

2. JCSS(Japan Calibration Service System)分銅
・天びんを校正する分銅は国家の基準分銅とトレーサビリティが取れていることが求められます。JCSS分銅では測定された値(協定値)とその信頼性区間(不確かさ)が記入された証明書が付きますので、その協定値を分銅の質量として用います。

3. JCSS分銅の有効期限
・JCSS証明書の有効期限はありません。ただ長く使用していますと傷がついたり汚れたりして質量値が変化している可能性がありますので、定期的に校正を行う必要があります。
使用頻度にもよりますが1~2年毎に校正(JCSS校正機関による再校正)を行うことをお奨めします(校正頻度はお客様の品質要求、使用頻度により管理者がきめます)。

Q. 校正分銅内蔵形の天びんはどのようなメカニズムで校正を行なう仕組みになっていますか。また、校正分銅内蔵形の天びんを使用すると、ISO9000やGLP、GMPなどの点検に際して、外部分銅は必要ないですか。

A. 校正分銅内蔵形の天びんはその内部に校正用の分銅(計量法上は「おもり」)をもっており、それをモーター駆動機構などにより内部で載せ降ろしができるしくみになっています。元々はこの「おもり」そのものには質量の値付けがされているわけではなく、この「おもり」を載せたときの荷重値を、標準となる外部分銅を載せたときの荷重値と比較し、外部分銅の質量のどれだけに相当するかという値を記憶させています。こうすることにより、天びん内部の「おもり」に、標準となる外部分銅の代わりをさせることができ、天びんの感度校正が行える仕組みです。

標準となる外部分銅で校正した値と、内蔵分銅による校正値が同じであることが一度確認できれば、通常使用する上でズレが生じてくることは少なく便利ですが、長期間使用する間には様々な要因によるズレが発生するリスクがあります。外部分銅を用いて内蔵分銅(おもり)による校正が正しく行なわれているかの確認や、定期的に標準となる外部分銅を用いた点検が必要です。

Q. 天びんの性能点検する際の基準はどのように定めればよいですか。
具体例を教えて下さい。

A. よくお問合せをいただく質問ですが、性能点検する際の基準は基本的にはお客様側でお決めいただく内容で、この値でなければならないといった数値はありません。仮に型式も全く同じ天びんであったとしても、お客様の使用目的や管理状況その他により、天びんの管理基準はお客様個々により異なります。とはいえ、あまり基準が厳しすぎると、頻繁に校正をしなければならないことになりますし、逆に緩すぎる場合にはせっかくの天びんの基本性能を十分に生かしきっていないということになりますので、これらを考慮し、JIS規格で基準が設けられています。

点検資料はこちら(PDF 18KB)

Q. 天びん・はかりの通常の校正とJCSS校正の違いについて教えて下さい。

A. どちらの点検でも、国家標準とトレーサビリティのある分銅を使用し、繰返し性、偏置(四隅)誤差、器差・直線性などの項目を校正します。通常の校正ではそれぞれの計測ポイントでの測定値を記録するだけですが、JCSS校正の場合ではそれぞれの測定値がどれほど信頼できるか、その程度を示す「不確かさ」の値が表記されます。厳密に計量のトレーサビリティを確保するためには「不確かさ」の算出が必要です。 またJCSS校正を行うためには、NITE(製品評価技術基盤機構)から技量、仕組みなどを認められた校正認定事業者での校正が必要です。

Q. 現在自社ではJCSS分銅を使用し、天びんの校正を行なっているので、外部委託のJCSS校正を実施することまでは必要ないと思っています。
どのような場合にJCSS校正が必要となりますか。

A. 検査結果を公に公開する必要がない自社内のみの品質管理のためであれば、自社での検査のみで特に問題はありません。ところがISO9000シリーズのような品質システムに適合するためにはJCSS校正が必要です。

Q. 計量のトレーサビリティ確保のためには「不確かさ」が必要と聞きましたがこれはどのようなことですか。

A. 不確かさとは「測定値の真の値が存在する範囲を示す推定値」とJIS Z8103で定義されています。従来の「誤差」や「精度」といった概念は技術分野や国によって統一性がなく、計測値の信頼性を統一する方法としてまとめた新しい尺度が「不確かさ」です。例えば100.00000gの分銅があったとします。校正に用いる分銅の質量は比較の連鎖(トレーサビリティ)のもとをたどると国家標準に行き着かねばなりませんが、その分銅の質量100.00000gという値は測定値である限り、必ず誤差を含んでいるはずです。そこで、測定した100.00000gという値の真の値は本当はどの範囲にあるのか統計的に表したものが「不確かさ」です。この100.00000gの不確かさが±0.000015gとすると、この分銅の真の値は99.999985g~100.000015gの間に約95.4%の確立で存在する事になります。(包含係数(拡張係数ともいう)=2として)

なおJCSS校正証明書には必ず「不確かさ」が記載されます。

Q. 天びんの点検を実施した際、設定した基準範囲を超えてしまった(不合格となった)場合はどのような処置が必要ですか。

A. 点検を行う前に、外部分銅または内蔵分銅により調整してください。このあと、再現性、器差、など、点検規格を超える場合は、メーカでの修理が必要となります。なお、不合格状態で使用した可能性のある測定全てに対し、前回の点検合格まで遡り、その有為性を検証し、適切な処置をする必要があります。このようなリスク発生を低減するために、日常点検や定期点検の方法を定めることが重要です。