脳機能イメージング

機能的近赤外分光分析法(fNIRS : functional Near-Infrared Spectroscopy)計測事例

基礎・医学研究分野

工学分野

教育・心理学分野


fNIRSの特長

人類の長い歴史の中で、ヒトの脳が、どのような働きをしているかは、いまだに最大の謎のひとつです。
近年、急速に発展してきた脳の機能を可視化する技術の中でもfNIRSは自然に近い環境下で脳の活動状態を測定できるため、脳科学を支える新たな手法として注目されており、医療分野をはじめ、心理学や教育学、工学分野などの幅広い研究で用いられています。

fNIRS 計測原理

- 近赤外分光法とは
 

体の中は、光を透過させる性質と、光を吸収・散乱させる性質があります。この吸収・散乱の程度は光の波長と生体を構成している成分により異なります。特に血液成分のヘモグロビンによって、近赤外光が吸収されますが、そこに酸素がついていると、その吸収の度合いが変化します。fNIRSは近赤外線によりその度合いを測定し、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の変化量を測定する方法です。

- 近赤外光を使う理由

酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの、光を吸収する強さ(スペクトル)は下図のとおりです。可視光(400~700nm)はヘモグロビンやその他の生体構成物質での吸収率が大きく、光の強度が1/10に減衰するまでに進むことのできる距離が1mm以下です。また、近赤外光よりも長い波長域の光は水での吸収率が大きいため、生体内をほとんど進むことができません。一方、近赤外光は生体内での吸収率が少なく約10倍の距離を進むことができます。このため、より深い所の情報を得ることができる近赤外光を使います。

 

 

 


 

 

 

- fNIRSでわかること
 

fNIRSで用いる波長領域(700~900nm付近)では酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)のスペクトルが大きく違います。この違いから、組織中の酸素化ヘモグロビン(oxyHb)および脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb) の変化量が計算できます。この2つの項目より、総ヘモグロビン(totalHb)を計算し、同時に表示できます。

- 計測の方法
 

近赤外光は光ファイバを用いて入射します。光ファイバは、被検者に被せた専用のファイバホルダに、頭皮に密着させるように差し込みます。入射された近赤外光は大脳皮質を通り、散乱、吸収されながら、一部が頭皮上に戻ります。これを受光部の光ファイバで検出します。検出した光は、光電子増倍管 で電気信号に変換しModified Lambert Beer則 に則って酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンの変化量を算出します。

ファイバホルダ装着の様子

大脳皮質で反射された近赤外線を検出

入射・受光間隔を30mmにした場合、光は頭皮から15~20mm程度の大脳皮質まで到達します。
- Modified Lambert Beer則(変形ランバート・ベール)
 

近赤外線が生体の影響により散乱するのを通常のLambert Beer則に加味したのがModified Lambert Beer則です。透明溶液に入射した光が長さdを経て出力されたとき、その比の対数はdや吸光度に比例するが、溶液に散乱体が混じっていると、そのような簡単な式ではなくなり、Modified Lambert Beer則となります。散乱のある媒体中ですと、実際に光の通ってきた距離はdよりも長くなるため、d’で表しています。このd’の値は分かりませんので、Modified Lambert Beer則で計算できるのは「初期値からの濃度変化×光の通ってきた距離(d’)」となります。

 
- 酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、および総ヘモグロビンの濃度変化の画像化
 

近赤外光脳機能イメージング装置は脳の活動状態を2次元的にカラーマッピング表示する装置です。このため計測時には光ファイバを目的部位に合わせ配置(差し込み)します。右図に配置の一例を示します。赤(送光点)と青(受光点)の中間点は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化が計測された位置と仮定され、測定チャンネルと呼ばれます。

 

計測された酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、および総ヘモグロビンの濃度変化は、下図のように、チャンネル毎にリアルタイムに時系列データとして表示されます。これら全チャンネルのデータをカラー表示し、さらに補間処理をすることにより、ヘモグロビンの濃度変化分布が2次元マッピング画像としてモニタに動画表示されます。計測から画像表示までは約0.1秒でリアルタイムに観察できます。

 

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