飲料ボトル缶の飲み口の塗膜と形状 /OLS・SFT -透明膜対応 レーザー顕微鏡の活用例-

飲料ボトルの飲み口のねじ溝には,開封後も確実に栓ができるように,高分子材料が皮膜されています。この膜は透明なため,従来のレーザー顕微鏡(LSM)や光学顕微鏡による観察は困難でした。 今回,3D測定レーザー顕微鏡 OLS4100により,飲料ボトル缶の飲み口のねじ溝に施された透明な塗膜の観察と膜厚計測を行ないました。

Fig.1 マルチレイヤー機能の原理図

Fig.1 マルチレイヤー機能の原理図

マルチレイヤー機能

Fig.1にマルチレイヤー機能の原理図を示します。マルチレイヤー機能では複数の界面からの反射光のそれぞれのピークを認識して各界面の焦点位置を捉えます。これにより透明膜に覆われた試料の下地の界面の3D観察が可能です。さらに,面膜厚測定により膜厚の面分布を知ることが可能です。

Fig.2 アルミボトル缶の飲み口の写真とねじ溝の模式図

Fig.2 アルミボトル缶の飲み口の写真とねじ溝の模式図

飲料ボトル缶の飲み口部

市販の飲料アルミボトル缶の飲み口部の写真とねじ溝の模式図をFig.2に示します。ねじ溝には密封性を高めるための透明な高分子膜(透明膜)が施されています。

ねじ溝の透明膜の膜厚計測とマルチレイヤー機能による透明膜の表面観察を行ないました。

Fig.3  LSMによるねじ溝の膜の断面観察

Fig.3  LSMによるねじ溝の膜の断面観察

ねじ溝の断面観察

Fig.3に,ねじ溝のLSM断面観察像を示します。
(a)ねじ溝の山部,(b)ねじ溝の谷部のいずれも2層の反射層が認められます。この2つの反射層で挟まれた部分が透明膜です。この2つの反射層間の距離を計測することで膜厚の計測が可能です。透明膜の屈折率を1.5とした場合の膜厚は,ねじ溝の山部(a)では 5.0μm,ねじ溝の谷部(b)では 6.9μmです。ねじ溝の山部と谷部を比較した場合にねじ溝の谷部の高分子膜の厚みが大きいことがわかります。

Fig.4 ねじ溝の透明膜表面の3D-LSM観察像

Fig.4 ねじ溝の透明膜表面の3D-LSM観察像

ねじ溝の透明膜表面の観察

ねじ溝のマルチレイヤー機能による透明膜表面の三次元LSM観察像(3D-LSM像)をFig.4に示します。ねじ溝の山部の3D-LSM像はFig.4(a)です。ねじ溝の谷部の3D-LSM像はFig.4(b)です。 従来のLSMでは,湾曲した下地の上に覆われた透明膜の観察は困難でしたが,マルチレイヤー機能により湾曲したねじ溝に施された薄い透明膜の最表面のみの観察ができています。

 

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飲料ボトル缶の飲み口の塗膜と形状
-透明膜対応レーザ顕微鏡の活用例 その3-
Shape and Transparent Coating of Drinking Spout of Beverage Bottle Can -Practical Examples of the Use of Laser Scanning Microscope Corresponding to the Transparent Film: Part 3-


3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。