飲料缶の塗膜の観察/OLS・SFT -透明膜対応 レーザー顕微鏡の活用例-

飲料容器の外面には,高度な印刷技術により,きれいな塗膜が施されます。塗膜には透明なものが多く,これまでのレーザー顕微鏡(LSM)や光学顕微鏡では,光が透明膜を透過するために観察が困難でした。 3D測定レーザー顕微鏡 OLS4100のマルチレイヤー機能と透明膜測定フィルターは,この問題を解決します。
今回, ボトル缶の外面に印刷された透明塗膜の観察と形状計測をOLS4100を用いて行なった事例を紹介します。

Fig.1 マルチレイヤー機能の原理図

Fig.1 マルチレイヤー機能の原理図

マルチレイヤー機能

Fig.1にマルチレイヤー機能の原理図を示します。マルチレイヤー機能では複数の界面からの反射光のそれぞれのピークを認識して各界面の焦点位置を捉えます。これにより透明膜に覆われた試料の下地の界面の3D観察が可能です。さらに,面膜厚測定により膜厚の面分布を知ることが可能です。

透明膜測定フィルター

 反射率が高い材料を下地とした透明膜の観察の場合,下地からの強い反射(正反射)は透明膜表面の観察の障害となります。 OLS4100では光路中に専用の透明膜測定フィルターを挿入することで散乱光を支配的に検出することが可能です。この透明膜測定フィルターにより,下地からの正反射を抑え,透明膜表面からの散乱光による最表面の観察が容易になります。透明膜測定フィルターはマルチレイヤー機能との併用も可能です。

Fig.2 飲料缶の下地ラメのカラー観察像(観察視野 640μm□)

Fig.2 飲料缶の下地ラメのカラー観察像(観察視野 640μm□)

飲料缶の印刷塗膜の観察

おなじ飲料缶の外面に施され透明塗膜(以下,塗膜)において,金属色に艶がある部分と赤色の艶消し部分における最表面の観察と内部下地の顔料ラメ面の観察を行ないました。ラメ顔料は,きらきら感を出すためのものと考えられます。
 金属色の艶あり部分と赤色の艶消し部分のカラー観察像をFig.2に示します。これらのカラー観察像は最表層に施されている塗膜の下にある塗料のラメ顔料を捉えています。

Fig.3 飲料缶の塗膜の最表面のLSM像(観察視野 640μm□)

Fig.3 飲料缶の塗膜の最表面のLSM像(観察視野 640μm□)

下地ラメの上の塗膜表面の観察

艶あり部分と艶消し部分の塗膜の最表面のLSM像をFig.3に示します。ラメ顔料は反射が強く,多くの場合に透明膜の観察を困難にしますが,Fig.3に示した観察では,このラメからの反射を分離して塗膜の最表面のみの観察が行なえています。

塗膜表面の三次元性状パラメータ

三次元形状と三次元表面性状パラメータをFig.4に示します。 三次元形状から艶あり部分と艶消し部分の最表面の三次元形状が異なっていることがわかります。艶あり部分では平滑な面の比率が大きく,一方,艶消し部分では面全体に凹凸が形成されています。このような三次元形状の違いを数値化する方法として三次元表面性状パラメータ(国際規格 ISO 25178)があります。算出した三次元表面性状パラメータから,艶あり部分の面の平均粗さ(Sa)が 0.08μm,面の最大高さ(Sz)が 3.44μmであり,艶消し部分のSaが 0.16μm,Szが 5.77μm とわかりました。ひとつの飲料缶でも最表面の粗さを部位ごとに違えていることがわかります。

Fig.4 飲料缶の塗膜の最表面の三次元形状像と三次元表面性状パラメータ

Fig.4 飲料缶の塗膜の最表面の三次元形状像と三次元表面性状パラメータ

 

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飲料缶の塗膜の観察
-透明膜対応 レーザー顕微鏡の活用例 その2-
Observation of the Outer surface Coating of the Beverage -Practical Examples of the Use of Laser Scanning Microscope Corresponding to the Transparent Film: Part 2-


3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡OLS5000の外観を示します。この装置は波長405 nmのレーザー光と白色LED光を使用することにより高分解能なレーザー観察像とカラー像が得られます。さらに三次元形状(3D)計測や粗さ測定を非接触で行うことができます。