白いんげん豆の品種判定

白いんげん豆の品種判定

国内では植物の新しい品種を創作,登録した育種者に対して育種法により育種者権が認められています。いんげん豆は世界中で栽培され,多くの品種が流通しています。なかでも白いんげん豆(手亡豆)の国内品種は,主に白餡(あん)の材料として用いられていますが,国内品種の海外における不許可栽培,逆輸入品の違法流通など育種者権侵害の問題が発生しています。

農林水産省,種苗管理センターは白いんげん豆など農産物の品種判別方法をマニュアル化し公表しています。このマニュアルでは,RAPD-STS(Random Amplified Polymorphic DNA-Sequence Tagged Sites)法(詳細説明)が用いられています。マニュアルに従い,白いんげん豆3種の品種判別を行いました。

白いんげん豆から抽出したDNAを鋳型としてSP01,SP02,SP03のSTS化プライマーによりPCRを行い,それぞれのPCR産物をMultiNAで分析しました(Fig.1)。得られた出現パターンを判別用パターン(Table1)と照合しました。分析により得られた出現パターンは判別用パターンと一致しました。

Fig.1 MultiNAによる白いんげん豆のRAPD-STSパターン

Table 1 白いんげん豆の判別用パターン

RAPD-STS(Random Amplified Polymorphic DNA-Sequence Tagged Sites)とは

RAPD-STS法ではSTS化されたプライマー(STS化プライマー)でPCRを行い,PCR 産物の解析を実施します。RAPD法は,通常より短めのプライマーを利用して全DNAの多数の部分をPCRで増幅し,DNA断片の長さの変異を比較します。多くのPCR産物が得られるため,しばしば解析が困難になります。この欠点を克服するために,RAPD-STS法では品種間に共通のPCR産物の増幅を抑制し,品種判別に有効なPCR産物のみが増幅するようにプライマーを選別しています。このプライマーの選別はプライマーのSTS化と呼ばれ,RAPD法で得られたPCR産物の塩基配列情報を利用します。


詳細データや,DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置,MultiNAを使った関連データはアプリケーションニュースでご紹介しています。

アプリケーションノートでも、関連アプリケーションとして以下ご紹介しています。

No.4 食品中のアレルゲン物質検査- MultiNAの活用 -
No.15 遺伝子組換え食品の検査,分析-MultiNAの活用-
No.25 AFLP 法を用いた太平洋クロマグロ雄に特徴的なDNA 断片のスクリーニング- MultiNAの活用 -

DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置

DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置

マイクロチップを用いた電気泳動法により,DNAやRNAのサンプルを大きさによって分離し,DNAやRNAの核酸サンプルのサイズ(大きさ)確認やおおまかな定量を行います。マイクロチップを用いることによって電気泳動分離を高速に,蛍光検出により高感度に,しかも全自動で分析することができる電気泳動装置です。