水素燃料・燃料電池

水素は天然ガスの精製や水の電気分解など、様々な工業プロセスで発生する元素です。使用時の副産物は水のみなので、クリーンなエネルギー源として近年注目されています。こうした背景により、水素は燃料電池や、燃料、風力や太陽光といった断続的なエネルギー源の貯蔵媒体としての利用を検討されています。
ここでは、水素の品質管理、電気分解のための触媒や水の分析、燃料電池やその部品の評価に使用される分析例をご紹介します。

水素の品質管理

水素の品質管理

 

燃料電池に使用される水素燃料に一酸化炭素などの不純物が含まれていると、電池内部の触媒が被毒し、触媒性能が低下します。そのため、高純度の水素燃料が必要とされ、純度管理が重要となります。2023年に発行された燃料電池自動車用水素燃料の国際規格ISO14687-2023では、一酸化炭素の最大濃度を0.2 ppmとしているほか、酸素や二酸化炭素、炭化水素類についても最大濃度を規定しています。
水素中に含まれる一酸化炭素や炭化水素などの不純物の高感度測定には、専用にカスタマイズされたシステムが最適です。

水素キャリア

水素キャリア

 

水素キャリアとは、気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体や水素化合物にして、効率的に貯蔵・運搬する方法です。水素を液化もしくは圧縮し水素密度を高める方法や、水素密度が大きく取扱いが容易な別の物質(有機ハイドライド、アンモニア、ギ酸)に変換し、その物質から水素を取り出して利用する方法があります。
なお、水素を取り出して利用するだけでなく、例えばアンモニアのようにそのまま燃焼させて水素エネルギーを利用することを含める場合もあります。

水素脆性

水素脆性

 

水素脆性は水素原子が金属に吸蔵されることで生じる現象で、金属の靭性が低下して強度が下がります。液体水素や水素ガスの運搬や貯蔵に使われるパイプ、タンク等の材料の強度試験や、X線CTによる腐食の進行度合いの確認、水素脆性が生じやすいと言われているめっき工程における分析等に島津の分析機器がお役に立ちます。

触媒分析

触媒分析

 

水素製造には水蒸気改質や水の電気分解など様々な方法がありますが、どの方法でも効率の向上や低コスト化には触媒が重要な役割を果たします。そのため、触媒の性能評価や劣化度合の確認は重要です。水素製造に関連する触媒は白金やパラジウムなどの金属が多く、これらの分析に島津の様々な装置が活躍します。性能評価はポータブルガス濃度測定装置で、劣化度合の確認や劣化原因の分析は電子線マイクロアナライザやイメージングX線光電子分析装置で行うことができます。

水素タンク

水素タンク

 

FCVでは水素タンクが搭載されています。車載用に使われる高圧水素タンクは、水素の貯蔵圧・圧縮圧を高めると、より多くの水素を貯蔵できるため、FCV車両の航続距離を延ばすことができます。FCV用水素タンクには気密性、耐熱性、耐圧性、軽量・コンパクト化、低コスト化が重要とされています。現在、作られている水素タンクは、上記条件を満たすために、樹脂ライナー、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス強化プラスチックなどが素材として使われています。各素材の特性を知るには、万能試験機や熱機械分析装置などが有効です。また、水素タンク中の亀裂や空隙を観察するには、X線CTや超音波光探傷装置などが役に立ちます。

燃料電池

燃料電池

 

燃料電池は、水素と酸素の反応により発電する装置で、水しか排出しないため非常にクリーンなエネルギー源です。 高効率で排出物が水のみ、と有害なものが無く、エネルギー、環境両面の解決に大きく貢献する可能性があるものとして注目を集めています。特に近年、自動車分野、住宅分野、携帯機器分野での本格的な普及が見込まれています。