固体高分子燃料用電解質膜の耐久試験
固体高分子燃料用電解質膜の耐久試験
燃料電池に不可欠な電解質膜(固体高分子燃料電池用電解質膜)は,含水率,透水性,化学的安定性などの機能性を向上させる技術開発が活発に行われています。
また,機能性を高める一方で電解液の圧力や温度変化によって生じる外力の影響を考慮した機械的特性の評価も重要視されるようになってきました。
小型疲労試験機を使用して電解質膜に対する引張り繰り返し負荷試験による耐久性の評価事例を紹介します。
電解質膜の耐久性評価方法の一つとして,受動的な繰り返し外力による機械的特性変化の把握が注目されています。これは例えば車載用燃料電池内の電解膜が電解液中で圧力変動や温度変化による熱膨張を受けるような場合を想定した物性評価です。
今回の耐久試験では前述の静的引張り試験で得られた引張り強度の95%, 90%, 85% 応力を未使用サンプルに対して繰り返しで与え(5Hz正弦波),グリップ間変位が初期値に対して50%増加した時点の繰り返しサイクル数を疲労寿命として評価しました。

図1:試料と試験グリップ

図2:電解質膜のS-N線図
図2は電解質膜の疲労試験におけるS-N線図です。縦軸はサンプルに与えた繰り返し応力の最大値、また横軸は、サンプルグリップ間の変形が初期の150%(10mm伸びた状態)に到達した時点の繰り返しサイクル数です。
この実験結果から電解質膜の50%変形に対する疲労寿命を明確に推定することはできませんが、負荷水準と各負荷水準におけるサンプル数を増すことにより、電解膜の熱膨張や力学的外力に起因する使用限界(耐久性)の推定が可能であることがわかります。