オートグラフ AGX-V2 シリーズ
ビデオ式非接触式伸び幅計を用いた𝒓値の測定 (参考規格 JIS Z2254:2021)
ユーザーベネフィット
- JIS Z2254:2021、ISO 10113:2020に準拠した𝑟値の測定が可能です。 - ビデオ式非接触伸び幅計を使用することで、他の力学的特性値を同時に取得可能な試験方法3を手軽に実施できます。 - Al-Mg合金などで顕著にみられる塑性領域の不均一挙動に対応した𝑟値算出方法である、試験方法3:「回帰による方法」も適用可能です。
はじめに
自動車などの輸送機器産業では、燃費改善の一策として高張力鋼材などの薄い材料を用いた車体設計が注目されています。しかし、高張力鋼材はプレス成形後の形状不良が起きやすく、プレス金型の製作時に、多大な時間とコストを要するという課題がありました。近年、CAE(Computer Aided Engineering)解析技術の進歩やPCの計算速度の向上により、高張力鋼材の高精度なプレス成形のシミュレーションが行えるようになりました。これによりプレス成形品の理想形状を予測することができ、プレス金型の開発時間の短縮と大幅なコスト低減が達成できます。 高精度なプレス成形シミュレーションを実現するためには、板金のプレス成形性を表す指標の一つであるランクフォード値(𝑟値)を正確に与える必要があります。𝑟値は材料の厚み方向の伸びやすさを定量的に表す指標であり、プレス成形性に大きく寄与する材料の絞り性に大きく関与します。2021年JISZ2254が改定され新たに3種類の𝑟値測定方法(試験方法1、2、3)が規格化されました。このうち、試験方法3は伸び計、幅計を使用する方法であり、JISZ2241に準拠した標準的な金属引張試験終了後に、任意の塑性ひずみに対して𝑟値を算出することが可能です。したがって、他の引張特性値(引張強さ等)を併せて求める際に非常に有効です。試験方法1、2、3の詳細および接触式伸び幅計を用いて𝑟値を評価した例は、前報のアプリケーション1をご参照ください。 接触式伸び幅計における測定では、試験ごとに伸び計、幅計をそれぞれ試験片に取り付け、取り外す必要があります。一方、ビデオ式非接触伸び幅計TRViewXは、撮影した画像上で標線距離、幅を設定し認識させることができるため、手軽に試験を行うことができます。本稿では、精密試験機オートグラフAGX-V2およびビデオ式非接触伸び幅計TRViewXを使用し、新たな規格の試験方法3に準拠した𝑟値評価を実施した事例を紹介します。
2024.02.20