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はじめに

ヒト腸内には、およそ100兆個もの腸内細菌が生息し、個体あたり 100 種を超える腸内細菌が共生する複雑な腸内細菌叢を形成しています。近年、これら腸内細菌が宿主の健康維持や増進に寄与していることが明らかになりつつあり、腸内細菌叢に関する研究が注目されています。医学研究では、腸内細菌叢と大腸がん等疾患との関係、薬効や免疫系へ及ぼす影響等、また食品分野では機能性食品に含まれる乳酸菌等の保健効果の検証等が行われています。腸内細菌叢による宿主への影響を解明する手段として、菌の種類やその分布を解析する次世代シーケンサーを用いた菌叢解析とともに、近年、腸内細菌叢が産生する代謝物を網羅的に解析する質量分析計を用いたメタボローム解析に注目が集まっています。これは、腸内細菌叢により産生された代謝物の一部が腸管から吸収され血中に移行し、全身を巡ると考えられているためです。 質量分析計を用いたメタボローム解析では、一般的にガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)や高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を使用し、サンプル中に含まれる代謝物(メタボローム)を網羅的に分析します。また図1のように、分析対象成分や分析目的に応じて、GC-MS、LC-MSを使い分ける必要があります。GC-MS では、アミノ酸、有機酸、糖等の親水性代謝物を分析する場合、誘導体化の処理が必要になりますが、頑健性に優れ、一回の分析で数百成分を網羅的に分析できます。一方、LC-MSは、誘導体化することなく、特定の代謝物(~100成分)を効率的に分析することができ、特定成分のルーティン分析に適した手法です。 本アプリケーションノートでは、GC-MS/MS およびLC-MS/MS により、マウス糞便中の一次代謝物を網羅的に分析しました事例をご紹介します。

2018.06.25