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はじめに

ガラクト脂質は、高等植物の葉緑体膜脂質の約 8 割(モル比)を占める自然界に豊富な糖脂質の一種です。植物および他の光合成独立栄養生物は、リン脂質の代わりにリンを含まないガラクト脂質を葉緑体のチラコイド膜の主要成分として利用します。 これまでの数十年に亘る研究により明らかになったガラクト脂質の重要な生物活性を以下に示します。 1. チラコイド生合成過程への直接的関与 2. 光合成電子輸送反応に不可欠 3. リン飢餓時、リン脂質を部分置換 4. 花の発生における役割 5. 薬草の抗炎症および抗腫瘍活性への貢献 ガラクト脂質は、グリセロール骨格の sn-3 位にエーテル結合したガラクトース部分と sn-1 および sn-2 位にエステル結合した二本の脂肪酸によって構成されます。ガラクトースのヒドロキシル基により、ガラクト脂質は両親媒性を示します。 ガラクト脂質は糖の種類により分類され、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)とスルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)などが含まれます。図1に主要なガラクト脂質である MGDG と DGDG の化学構造を示します。MGDG と DGDG の含有量の比率及びそれぞれの脂肪酸組成分布は葉緑体形成の研究等において重要な指標となります。 ミドリムシとして知られる単細胞真核藻類ユーグレナの一種ユーグレナグラシリス(Euglena gracilis)は、葉緑体を有し、光独立栄養的にも従属栄養的にも増殖することができます。近年、低酸素条件下で生産するワックスエステルがバイオ燃料の原料として優れていることからも注目を集めています。 ここではユーグレナグラシリスの含有脂質を解析する一環として、高速液体クロマトグラフとトリプル四重極型質量分析計システム(Shimadzu LCMSTM-8060)を用いたユーグレナグラシリス粉末中のガラクト脂質分析例をご紹介します。

2021.03.28

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