マイクロプラスチックの解析に向けた熱分解GC/MS による樹脂混合試料の分析

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はじめに

大きさ数 µm~5 mm 程度の微細なプラスチックはマイクロプラスチック(MPs)と呼ばれ、海洋環境の汚染や生態系に及ぼす影響が懸念されています。微細な MPs に海洋中の有害物質が吸着し、それを海洋生物が摂取することで、生物濃縮が起きる可能性も指摘されており、MPs の実態調査や有害性評価が行われています。 分析装置として、比較的大きな MPs の定性分析にはフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、FT-IR の全反射測定法(ATR法)で分析出来ないような微小な MPs に対しては、赤外顕微鏡を用いた顕微 FT-IR が主に使用されています。顕微 FTIR は粒子単位であれば 10 µm 程度の微小な MPs も高感度で分析が可能です。しかしながら、複数種類の微小な粒子が混在し MPs の分別が困難であるような場合には、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(Py-GC/MS)法が有用な手法として報告されています。 Py-GC/MS 法は各樹脂に特有の熱分解生成物を高感度に検出することで、混在した微量の樹脂それぞれを個別に定性することが可能です。本稿では、MPs を模した複数の樹脂を混在させた試料を準備し、Py-GC/MS 法を用いて各樹脂の定性解析を行った結果を報告します。

2020.06.11