VOC排出量をオンライン監視し、中国の環境大気汚染防止に貢献

今回のCustomer

向井 英之(むかい ひでゆき)様

上海吉田拉链有限公司(上海YKKジッパー社)

※掲載内容(所属団体,役職名等)は取材時のものです。

インタビュー

環境問題は、国や地域ごとに特有の課題があり多様化しています。中国では2015年に、環境保護法をはじめとする環境関連法制度が改正され、環境規制が厳格化されています。2020年が最終年となる、中国の第十三次五カ年計画では、主要な環境汚染物質の排出総量削減目標が定められており、企業にもその対応が厳しく求められています。

特に揮発性有機化合物(VOC)は、工場などの製造工程で使用される溶剤・塗料や石油取扱施設などから発生します。VOCは、大気中で化学反応を起こし、人体に健康被害を引き起こすPM2.5(微小粒子状物質)や光化学オキシダントの発生要因の1つとなっています。中国では第十三次五カ年計画において、VOCの削減目標が定められ、排出規制強化のための法律も整備されています。VOC規制対象企業については、VOCの処理設備(活性炭、燃焼、触媒など)でVOC排出量を低減した後、オンラインVOC計で規制値の範囲内であることを常時監視しています。このデータは、地域の行政へリアルタイムで伝送され、監視されています。今回は、中国国内において、排出規制対象企業となっているYKKグループの上海吉田拉链有限公司で、環境管理に携われている向井さんにお話を伺いました。

中国の環境規制の状況や、御社がオンラインVOC計を導入された経緯をお聞かせください。
 
 

閔行工場のVOC

中国では、大気をきれいにしようとする「青空を守る戦いに勝つための三年行動計画」により、対象となる重点業界における揮発性有機化合物(VOC)などの管理が強化されています。弊社の工場でもVOCを排出しているため、中国当局からオンラインVOC計を用いて排出ガスをモニタリングするよう指導されています。「臨港工場」は4年前に、「閔行(みんはん)工場」は1年半前にオンラインVOC計を設置しました。いずれも、重点汚染物質排出企業として規制対象となったことがきっかけです。

 

オンラインVOC計とは

VOCとは、Volatile Organic Compoundsの略で,揮発性有機化合物のことです。WHOでは,大気中に気体で存在する有機化合物のうち沸点が50℃~260℃の物質の総称と定義されており、塗料や、接着剤、洗浄剤などに含まれる、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが代表的な物質です。これらは、光化学オキシダントが発生する主要な原因物質の1つとされています。 当社のオンラインVOC計は、FID検出器を搭載したガスクロマトグラフを用いて、中国の国家標準で要求されているVOC成分を常時監視する装置です。この装置は、中国での規制対応のために製造・販売しています。 また当社では、装置納入時に自社の質量分析計を用いて各成分を定量し、オンラインVOC計によるデータの信頼性・正確性が妥当であるかを含めたソリューションの提供を展開しています。

オンラインVOC計の表示画面

 

 
当社のVOC計を実際に導入されて、良かった点などをお聞かせください。
 
 

導入前の目標は、目に見えないVOCの排出量をリアルタイムで数値化し把握することでした。これまでは、外部の分析受託会社に年4回測定を依頼して、中国当局へ報告書を提出していましたが、今ではオンラインVOC計で常時監視・報告を行っています。排出量をリアルタイムで把握できることは、規制値違反による操業停止などのリスク回避につながります。  
予想外のメリットは、コスト削減につながったことです。生産工程で発生したVOCを含んだガスは、活性炭で処理した後に排出します。オンラインVOC計の設置による排出量の見える化は、VOCの処理工程で使用している活性炭の正確な交換時期の把握につながり、これまで年2回実施していた活性炭の定期交換が年1回となり、大きな無駄とコスト削減につながりました。また、ほとんどの監視業務が自動で行えるため、作業の手間がかからなくなったことも良かった点です。さらに、工場見学や行政からの視察時には、オンラインVOC計をご覧いただくことでモニタリングの状況が一目で把握いただけるようになりました。可能であれば、オンラインVOC計でモニタリングする(成分名など)専門用語も中国語表記になっていると嬉しいですね。


臨港工場のVOC計

 
中国に新たに進出される他の企業様へのアドバイスがあればお願いします。
 

日本と中国では、法律などが全く違うということへの認識が重要です。とりわけ、環境規制に関しては日本よりも厳しいと感じており、環境に対する設備投資も必要です。規制の更新が頻繁であり、当局からの指摘頻度も多く、行政により規制値が変わることもあるなど、日本と異なることが多いため、常に情報をキャッチする仕組み作りも大切です。

今後、弊社に期待することをお聞かせください。
 

原子吸光分光光度計など分析計測機器を日常的に使っています。スクリーニング用に簡単、手軽でその場でチェックできるような装置の検討をお願いしたいと思います。分析を行い、定量的に把握することはとても大切だと感じており、現場で簡単に分析ができる装置の開発を期待しています。

上海吉田拉链有限公司では、オンラインVOC計VOC-3000Fを2つの工場で合計9台ご活用いただいています。今後、さらなる環境規制への対応もスムーズにできるよう、引き続き製品開発を進めてまいります。本日は,大変貴重なお話をありがとうございました。
 

 
 
 
中国VOCs規制

中国VOCs規制

中国では、塗料、接着剤、インク、洗浄剤に含まれる有害物質の制限量に関する国家標準(GB)が公布されています。中国VOCs規制のページをご覧ください。

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