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マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみは陸から川などを経由して海へ流れていると言われていますが、我が国の河川におけるプラスチックによる汚染実態は明らかになっていません。マイクロプラスチックの判別に、2016年より当社のFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を、さらに2019年からは極微小サイズの解析にFT-IRと赤外顕微鏡などもご活用いただきながら、日本でも数少ない河川のマイクロプラスチックを調査・研究されている東京理科大学 土木工学科 水理研究室の片岡智哉先生にお話を伺いました。

Customer

片岡智哉 先生

片岡智哉 先生

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

東京理科大学 理工学部 土木工学科 水理研究室
URL https://www.tus.ac.jp/

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インタビュー

研究内容についてお聞かせください。

2015年8月から現在までに、日本国内の70河川、90地点での調査を実施したところ、平均で河川水1㎥あたり4.3個のマイクロプラスチックがあることがわかりました。さらに、市街地などにおける人間の活動とも相関関係があり、さらに河川が汚れている場所では濃度が高いことも明らかになりました。


採取されたマイクロプラスチックの一例

マイクロプラスチックの多くは、陸に放置されたプラスチックが、太陽光からの紫外線や地面からの熱にさらされ、外力がかかることによって細かく砕かれることで発生すると言われています。それらは、風や降雨により河川へ、そして海へ流れ出てしまうことになるのです。一旦海に流れ出てしまうと、そのサイズや重さなどから取り除くことは困難であり、丈夫で壊れにくいというプラスチックの製品として利点が仇となり、その数は増加の一途をたどります。発生源に近い河川でマイクロプラスチック汚染状況を調べることは、マイクロプラスチックが河川や海に出るのを防ぐための第一歩であり、この結果を活用することでマイクロプラスチックの発生源を特定することにつながります。

 

河川ではどのようにマイクロプラスチックを集めているのですか?

橋梁から河川の表層部にネットを垂らして、5-10分間静置します。引上げたネットに溜まったサンプルを採取して研究室に持ち帰り、分析をおこないます。

研究室では6つの分析フローによりマイクロプラスチックの判別を行います。マイクロプラスチック候補物として抽出されたものは、計量・サイズ測定を経て、最終工程でFT-IRを使用してようやくマイクロプラスチックと判別できます。

当社装置を選んでいただいたポイントは何ですか?

以前は他社製品を使用していましたが、現在は島津製作所のFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計:IRAffinity-1S)を使用しています。購入を検討していた際に、スペクトル分解能の高さや、「加熱劣化プラスチックライブラリ」が判別に有効だと感じたことが、購入における最大のポイントとなりました。 

FT-IR+赤外顕微鏡

IRスペクトル(左)とサンプルの計測写真(右) 

最近の研究について教えてください。


マイクロプラスチックの鉛直分布観測の概要

2017年度からはさらに研究を進めて、河川断面の水深別で浮遊しているマイクロプラスチックの分布状況の調査にも取り組んでいます。これまでの表層部だけではなく、河川の底層部に向かって8箇所調査を行ったところ、流れの状態によりますが、表層部よりも底層部ほうがマイクロプラスチックの数が多いという結果も出ています。そのため、洪水時には底層部に沈殿しているマイクロプラスチックが、川の流れによって巻き上げられている可能性があることもわかってきました。各河川の表面の個数比較ではなく、深さ、土地利用、人口密度、季節変化など、さまざまな要因との因果関係もわかってきました。今後さらに研究を進めることによって、日本の河川からのマイクロプラスチックの発生量を明らかにしたいと考えています。

当社に期待いただくことを教えてください。

FT-IRでマイクロプラスチックを判別する際には、サンプルに圧をかける必要があることから、サンプルが変形・粉砕してしまうことがあります。これが候補物の材質同定を最終工程にしている理由です。そのため、事前にすべてのサンプルのサイズや重さを測っておく必要があります。もしプラスチックであると判別できたもののみのサイズや重さを計測できれば、もっと効率的に研究を進めることができます。サンプルを潰さずにプラスチックと判別した上で、サイズや重さの測定が出来る装置やシステムの開発をぜひお願いしたいですね。

当社製品および加熱劣化プラスチックライブラリが研究のお役に立てていることを嬉しく思います。さらなる貢献ができるよう今後も製品開発を進めてまいります。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

片岡先生の研究内容については,こちらもご参照ください。

 

Webinar FTIRと赤外顕微鏡を用いたマイクロプラスチックの分析

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