加熱劣化プラスチックライブラリを活用したマイクロプラスチックの測定

環境実態調査におけるマイクロプラスチックの定性には、分析操作が簡単なFTIRが用いられます。ただし、環境中のマイクロプラスチックの多くは紫外線により劣化しており、FTIRの標準的なライブラリを用いた解析では完全に一致しないことがあります。このような場合に、加熱劣化プラスチックライブラリが活用できます。 

加熱劣化プラスチックライブラリとは

13種類のプラスチックを、それぞれ加熱しないものと200℃~400℃で加熱劣化させたものを用意し、それに対して取得した赤外スペクトルを収録したライブラリです。プラスチックの劣化は、熱や光のエネルギーにより起こりえますが、紫外線劣化と熱劣化は劣化の進行を左右する因子はほぼ同じあり、赤外スペクトルに現れる変化も同様であることが多いです。そのため、紫外線劣化したマイクロプラスチックの定性には加熱劣化プラスチックライブラリが使用できる場合も少なくありません。

図1に紫外線を照射したアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂の赤外スペクトルを、図2に加熱したABS樹脂の赤外スペクトルを示します。ABS樹脂の場合には、いずれの場合も、OH基やC=O基の伸縮振動に帰属されるピークが現れており、紫外線と熱によって同様の酸化劣化が起きていることが分かります。

図1:紫外線を照射したABS樹脂の赤外スペクトル

図2:加熱したABS樹脂の赤外スペクトル

海岸で採取したマイクロプラスチックの分析


 図3:海岸で採取した試料       図4:ATRプリズム  

加熱劣化プラスチックライブラリを活用して、環境中の劣化したマイクロプラスチックを迅速に定性した事例をご紹介します。
試料には、海岸で採取したマイクロプラスチック(図3)を使用しました。

測定は、FTIRのATR法(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))で行いました。ATRプリズム上に試料を設置し(図4)、試料表面で全反射する光を測定することで、試料表面の吸収スペクトルを得ることができます。

測定結果と加熱劣化プラスチックライブラリでの検索結果を以下に示します。
図5より白色マイクロプラスチックに対しては、加熱劣化プラスチックライブラリから200℃で4時間加熱したポリプロピレン(PP)が、図6より赤色マイクロプラスチックには、200℃で2時間加熱したポリエチレン(PE)がヒットしました。いずれのマイクロプラスチックも紫外線により酸化劣化していることが推測できます。

図5:白色マイクロプラスチックの測定結果と
ライブラリの検索結果

図6:赤色マイクロプラスチックの測定結果と
ライブラリの検索結果

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