アステラス製薬 株式会社

アステラス製薬 株式会社

  • 分野

    低分子医薬品, バイオ医薬品

  • キーワード

  • 紹介する製品・サービス

    Open Solution, LCMS-2020

今回はアステラス製薬株式会社 本渡様に島津 分析・分取LC/MSシステムについてお話を伺いました。本渡様は結果の信頼性を重視しつつ効率的な分取・精製作業に取り組まれています。またさらなる改良を目指してメーカーである私共に様々なご提案をしていただいています。

Customer

本渡 猛様

研究本部 化学研究所
リード化学研究室
本渡 猛様

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

アステラス製薬 株式会社
URL http://www.astellas.com/jp/

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インタビュー

本システムをお使いいただいている目的や使用状況についてお聞かせいただけますか?

インタビュー写真1

コンビナトリアルケミストリの一環で多検体の連続精製に使用しています。精製されたサンプルはアッセイにかけるのが前提です。分取条件にもよりますがだいたい1サンプルを15分程度で処理していて,全体的な稼働率は高いと思います。フラクションごとの純度確認はしていませんが,提出する直前に純度確認をして,ある程度の条件をクリアしたものをライブラリとして登録・保管しています。

この製品を選定された理由をお聞かせください。

技術ベースやパフォーマンスとしては各メーカーともそれほど差異はないと思っているのですが,今回は分析と分取のリンクを考えていたので,分取システムとは別に分析用のインジェクタとポンプが独立している点,すなわち分析結果の信頼度を重視しました。そこが他社機器との差別化点です。

将来への拡張も考えて,技術的にそういうものが構築できたという感じですか?

インタビュー写真2

そうですね。将来的には分析と分取を組合わせ,分析結果を利用した効率的な精製条件の決定も行っていきたいと思っています。現在はその土台ができたというところです。

LCMSの分取システムの前はUVで分取されていたのですか?

インタビュー写真3

UV分取は使っていません。MS分取が可能になってから有用性が格段に向上し,LC分取での精製が現実的になりました。以前はコンビナトリアル合成を行う場合,未反応原料が残らないまたは容易に除去できる反応の選択,条件模索の必要がありましたが,MS分取を精製ツールとして使うようになってからコンビナトリアル合成の反応の幅が広がりました。複雑な反応混合物からも純度の高いものを得る手段として非常に役に立っています。弊社ではかつてコンビサンプルは純度に懸念があるというイメージだったのですが,近年では分取精製できることが当たり前になり,純度の高いものが求められる時代になってきています。

現在はMS分取とUV分取を両方お使いですか?

基本的にMSですが,扱う化合物にだいたいUV吸収がありますので,UVは目的物の純度の換算や目的ピーク以外に不純物はないかといった確認のために使います。分取精製の際には目的に応じて,ダブルトリガーなども可能なので,分取はMSトリガーだけで充分対応できていると思います。

主な分取条件を教えていただけますか?

カラムサイズは19x100mm,粒径5μmがいちばん多くて,流速は25mL/分ぐらい,注入量は1000μLくらいです。サンプル保持を強めるためにインジェクタの前にLC-20ADを入れたシステムになっています。脂溶性の高い溶媒に溶かしたサンプルをこのカラムに1000μL注入するのは結構負荷だと思うので,保持に関するの懸念を抑えるためにメタノールなどを入れています。これは自動で毎回使っています。イオン化はESI,ポジネガでフルスキャンしています。

ソフトウェアなどは特に研究者の方から直接お話を伺って,お客様が何をしたいのか理解し,ワークフローに沿って使っていただけるようにするのがいちばん大事だと思います。弊社のソフト開発技術者も積極的に取組みたいと言っていますのでぜひこれからもよろしくお願いいたします。ところで,分画の後処理はどのようにされていますか?

インタビュー写真4

コレクターの試験管を遠心エバポで減圧・加熱しています。濃縮には半日くらいかかってしまいますので,夜の時間帯を利用するなど工夫しています。濃縮は課題の一つですね。それと前処理にも時間がかかっています。前処理として必要なろ過作業のオンラインシステムもあったら便利だと思いますが,いくつか課題があるので難しいかもしれないですね。後処理のところは島津さんが開発中とのことなので,完成したら試してみたいですね。

オンゴーイングですが先になりそうですのでまた改めてご相談させていただきます。
分取とオープンアクセス分析を行うためのPsiPortソフトウェアはどのようにお使いですか?
PsiPortの特徴のひとつはウェブで使えることなのですが,まだお使いではないと伺っています。将来的にとか,人が増えたらとか使ってみたいと思われますか?

ウェブで使えることはPsiPortの良いところだと思っているのですが,社内ITシステムとの兼ね合いもあり,現状では行っておりません。そういう意味ではPsiPortのポテンシャルを引き出せていないのですが,現状は分取のエントリーとブラウザのところでの主役です。ジョブを投げるのも平易で,ここを押して次はこれを押してという感じで,使用者が装置に詳しくなくても簡単にエントリーが可能です。何よりもブラウザの画面がとても見やすく,視覚的にもとてもわかりやすい点が気に入っている部分の一つです。具体的にはこのプレート位置のサンプルは,ここにMSが出て,UVが出ている,といういちばん見たいところが一画面で見えるのが便利でニーズに合っていると思います。

ありがとうございます。逆に改善を希望されるのはどのようなことですか?例えばお客様によってはPsiPortの分取メソッドを例えばグラジエント勾配をちょっとだけ変えたいので変えられようにしてほしいというご要望もあるのですが。

インタビュー写真1

条件を変えたい場合にはLCMSsolutionPsiPortに読み込むメソッドファイルを書き換えて対応しているのでそこまでは必要を感じません。それよりもジョブを投げるところで画面の切り替えが多い点を,1つの画面上でできるようにしていただきたいです。またLCMSsolutionでは,測定中,ターゲットMSはMSクロマトグラムでUVと時間軸もあわせてフォローしているので,「あっ,ここを取ったんだ」というのが分かりやすいのですが,LCMSsolutionの再解析画面で一画面表示できないのがちょっと不満ですね。再解析画面ではUVとMSの画面切り替えが必要で,MSのピーク,UVのピーク,純度はまた別タブや別メニューを開くというようになっているので作業が必要になってしまいます。

今回発売を開始したLCMSsolutionバージョン5ではMS同士のデータの比較とかMSとUVの比較とか従来に比べ強化されており,そのあたりもデータブラウザでひとつの画面で見れるようになっています。ハードウェアに関するご要望はございますか?

普通に使えるので不満には思っていないのですが,敢えて言うなら分取の時のインジェクションのスピードがちょっと遅いかなと思っています。島津さんの分析用LCのインジェクションはびっくりするくらい速いので,そのギャップを感じています。分取のインジェクションもスピードアップを図って欲しいと思います。

そうですか,LCの開発側に最善を尽くすよう伝えます。弊社のサービスに対するご要望はございますか?

相談や修理依頼など,早いときはその日に対応していただいていますし,今のところメンテナンスの満足度は高いです。遅くても数日以内には対応いただいています。ありがたいことに近くに拠点があるので,部品とか消耗品もすぐに調達できるなど,小回りがきくというイメージを持っています。今後もこのような関係を続けていければいいなと思っています。

分析機器業界に対してご意見やご要望はございますか?

インタビュー写真7

メーカーさんからは製品に関する情報をいただき,我々ユーザーはニーズを伝える必要があって,その機会をもっと持っていただきたいです。新しい製品,使える製品というのは,メーカーさんのできることとユーザー側の主張との双方で作っていって使いやすいシステムを構築していかなければいけないと思っています。

メーカーとしてもぜひお願いしたいところです。わりと今までは日本のユーザー様は国民性というか,あまり活発に発言されないようなイメージがあったのですが,そういう場を持ちたいと言っていただいたのはありがたいことだと思います。あとは他に何か新しく作ったら楽しいなと思われるようなものはありますか?

いきなりは出てきませんが,島津さんはやはりLCとかGCとかいうイメージがあって,国内メーカーということで,より頼りにするところもあります。現在お願いしているソフトウェアの開発もそうですが,海外メーカーと比較すると,自由度が高い印象を持っています。「これはできません。ここまではできます。使ってみてください」みたいな部分は全く感じません。新しい分野に挑戦したとしてもそのあたりを訴求すれば入っていけるのではないでしょうか。

いろいろといただいたコメントにはとても力づけられました。どうもありがとうございました。

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開発担当者コメント

分析/分取/PsiPortシステム

アステラス製薬株式会社様に納入した分析/分取PsiPortシステムには,グラジエント最適化のソフトウェアが含まれています。これは,LCとMSのピークの重なり具合から移動相の濃度グラジエントを自動調整するもので,島津サービス会社がお客様のもとに通い,ご要望を伺いながら作成しました。
サービス会社にも開発部門を持ち,当社開発部隊がバックアップし,より細かくお客様のニーズに沿い,カスタマイズしたシステムを提供できるのも,開発部隊が日本にある島津の強みの1つであると思います。