2. 質量分析装置を用いたアミノ酸配列分析との違い

アミノ酸配列分析には、エドマン分解を利用した分析装置のプロテインシーケンサを用いる方法と、質量分析装置と検索エンジンを用いる方法があります。それぞれの分析フローは、下記のようになります。

分析フロー

エドマン分解によるアミノ酸配列決定法の特長

  • タンパク質のN末端アミノ酸からの逐次同定および均一性の確認に適しています。
  • タンパク質をそのまま分析に供すことができ、長鎖の配列決定も可能です。
  • 質量が同一のアミノ酸(ロイシンとイソロイシン)や近いアミノ酸(リジンとグルタミン)も容易に区別・同定できます。
  • データベースに登録されていない未知タンパク質からも同定可能です。

 

質量分析計によるアミノ酸配列分析の特長

  • スループットが高いです。
  • 微量のサンプルから結果が得られます。

 

  • 質量分析によるアミノ酸配列解析での不足点を、エドマン分解が解決します。
  • 質量分析とエドマン分解の組み合わせにより、より高精度かつ豊富な配列情報が得られます。

2.1 PMF (Peptide mass fingerprint) 法

  •  

    Peptide mass fingerprint(PMF)について説明します。
    精製した単一のタンパク質の酵素消化を行い、1本のポリペプチド鎖から複数のペプチド(酵素消化物)の混合物を生成します。その混合物を質量分析装置(例えば マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計など)でそれぞれの酵素消化物の質量を測定します。得られたそれぞれの質量をデータベース検索を行い、データベースにあるタンパク質に帰属させ、そのタンパク質の1次構造を推測します。

  • PMF法

 

2.2 ISD (In-Source Decay) 法

この分析手法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計を用いて、単離・精製したタンパク質を、フラグメンテーションを促進するマトリックスを用いて分析を行います。その結果、イオン源内フラグメンテーション(ISD:In-Source Decay)により生成したイオンを検出できます。これにより、トリプシン消化を行うことなく、インタクトなタンパク質の配列解析を行うことが可能です。

ここでは、BSAをISD法で分析した例を示します。本手法では、分子量測定後にレーザー照射パワーを高くするだけで、純度の高いタンパク質やペプチドについて簡便な内部配列解析を行うことができます。

ISD法

2.3 MS/MSイオンサーチ

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    本手法では、先に説明したPMF法とは異なり、単一のタンパク質ではなく、タンパク質混合物を酵素消化することで、複数の酵素消化ペプチドからなる混合物を生成します。得られた酵素消化物(混合物)は、まずHPLC(高速液体クロマトグラフィ)によって分離し、それぞれの分離ピークを質量分析装置(例えば 四重極飛行時間型質量分析計など)で測定します。この際、各酵素消化物の質量に加え、ガス分子との衝突により分解されたフラグメントの質量(MS/MSに相当)を測定します。得られたこれらの質量情報を用いてデータベース検索を行い、データベース上のタンパク質に帰属させることで、該当するタンパク質を同定します。

  • イオンサーチ